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異世界で魔法少女始めました!  作者: あいまり
第7章 生誕祭編
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第130話 巨大羊VS魔法少女

 召喚されたのは、私を含めた魔法少女四人。ギンはいない。

 まぁ、あの子は一応召喚獣であって魔法少女には含まれないからね。

 今は召喚者から何メートル離れたらダメ、的な制限も外してるし。


「敵の来るタイミングおかしいでしょ……」


 現状を把握しようとしていると、明日香がそう言って指をパキパキと鳴らす。

 確かに、生誕祭の最中に来るとは思わなかった。

 早速変身しようとした時、私は明日香のことを思い出し、彼女の方に視線を向けた。


「あ、明日香……!」

「ん? 葉月? どしたの?」


 キョトンとした顔で聞いてくる明日香に、私は一瞬、言葉を詰まらせる。

 しかし、すぐに気を取り直し、明日香のアリマンビジュを指さす。


「それ……光が溜まったら、何が起こるか分からないし……今回は、戦うのはやめておいた方が……」

「来ます!」


 沙織の言葉に、私は顔を上げた。

 直後、木を薙ぎ倒し、巨大な羊が現れた。

 ……なんで羊やねん。


「ま、大丈夫だって。僕も覚悟はしているからさ」

「で、でも……!」

「大丈夫、大丈夫」


 明日香はそう言って私の頭を軽く撫で、前に出る。

 ……もう、止められない……か……。

 本人が覚悟をしているというのに、私が怖気づいてどうする。

 一度深呼吸をして腹を括り、私もアリマンビジュをネックレス状にして構える。

 変身し、私達は武器を構えた。


「メェェェェェェッ!」


 巨大羊は強く鳴き、私達の方に突進してきた。

 ちょ、羊ってこんなに足速いの!?

 想定外の出来事に驚きつつ、私は咄嗟に薙刀を構えた。

 なんとか受け止めて、攻撃に転じようと思っていた。

 しかし、巨大羊の突進力は中々強く、奴の体がぶつかってきた瞬間体勢が崩れた。


「グッ……!?」


 慌てて体勢を立て直そうと試みるが、それより先に、巨大羊の突進が続く。

 私は咄嗟に地面を蹴り、横に跳んでそれを躱す。

 しかし、体勢が崩れたままだったので、そのまま地面に倒れ込む。


「葉月ちゃん、大丈夫!?」


 蜜柑が不安そうに尋ねながら、手を差し出してくる。

 私はそれに「ありがとう」と答えつつ、彼女の手を取り立ち上がった。

 それから服に付いた土を払い、息をつく。


「はぁ……油断した」

「草食動物だからって、羊を侮ってはいけませんよ」


 私の言葉に、沙織はそう言いながら弓矢を構える。

 すると、巨大羊はこちらを睨み、一気に突進してくる。

 沙織は巨大羊の動きを見極めて突進を躱し、目を細めた。


「羊にとって、危険に対する防御行動は単純に、危険から逃げ出すことです。その次に、追い詰められた羊が突撃したり、蹄を踏み鳴らして威嚇することもあります」

「はぁ……」

「羊だって攻撃もしますし、攻撃能力は充分高いです。動物を見た目だけで推測するのはダメですよ」


 ……なんで羊に関してそこまで詳しいんだよ。

 内心そうツッコミを入れつつ、私は巨大羊を見る。

 とはいえ、攻撃手段はやはり突進しか無いのだろう。

 それさえ見極めれば、容易に倒せそうだ。


「ま、攻撃に警戒して殴れば良いってことでしょ?」

「えぇ、要約するとそうなりますね」


 沙織の言葉に、明日香は「よっしゃ」と言い、胸の前で拳をぶつけ合う。

 その時、羊がまたもや突進してくる。

 確かに突進力は中々なものだが、前に戦った巨大イノシシに比べれば可愛いものだ。

 明日香は慎重にその突進を見極め、ギリギリで躱す。


「はぁッ!」


 そして、羊の体に向かって拳を放つ。

 次の瞬間、羊毛に明日香の拳は吸い込まれ、付け根まで腕が入った。


「クッ……!?」


 明日香は慌てて腕を引き抜こうとするが、腕に羊毛が引っ掛かっているのか、上手くいかないみたいだ。

 その間も巨大羊は突進しているので、それに引っ張られ引きずられていく。


「明日香ッ!」


 私は薙刀を構え、慌てて明日香を追う。

 とにかく巨大羊の動きを止めないと!

 そう思っていると、蜜柑が巨大羊の前に躍り出た。


「蜜柑!」

「はぁッ!」


 蜜柑は掛け声を放ち、巨大羊の頭に大槌を振り下ろそうとした。

 しかし、危険を察知した巨大羊は急カーブをして、蜜柑を躱した。


「な……!」

「グッ……こうなったら……!」


 明日香は小さくそう言うと、地面に強く踏ん張った。

 すると、ズザザザザザッ! と音を立てて、地面を抉りながら急ブレーキをかける。

 巨大羊は徐々に減速し、やがて、明日香に引っ張られる形で止まる。


「おー!」

「メッ……ェェェェェェェェッ!」


 巨大羊は大きく嘶き、一気に強く踏ん張った。

 すると、明日香の腕に絡みついていた羊毛が引き千切れ、ようやく彼女が解放される。

 明日香の腕には大量の羊毛が絡みついており、綿飴みたいだった。

 これだけ抜けたら禿げているのでは、と視線を向けてみるが、見た目にそこまで差異は無かった。

 どんだけ濃密な羊毛だよ……。


「明日香、大丈夫?」


 ひとまず、明日香が心配だったので、そう聞いてみる。

 すると、明日香は腕に絡まった羊毛を千切り取りながら、小さく頷いた。


「あぁ、大丈夫」

「しかし、あの羊の毛……攻撃を受け止めるほどの量、ですか……」

「私の攻撃、通じるかな……ていうか、技が通用するか……」


 沙織の言葉に続けるように、蜜柑が不安そうに呟いた。

 それに明日香は、少し目を伏せた。

 暗い目で、巨大羊を見つめていた。

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