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異世界で魔法少女始めました!  作者: あいまり
第6章 ダンジョン編
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第120話 ダンジョンのヌシVS魔法少女+銀龍②

 巨大馬の突破口が分からないまま、戦いは続く。

 強力な瞬発力と攻撃力から繰り出される攻撃を必死に躱しながら、明日香が叫ぶ。


「このままじゃ埒が明かないよ! どうする!?」

「どうするって言われても……!」


 困った様子で言いながら、蜜柑が攻撃を躱す。

 地面は巨大馬の攻撃でクレーターだらけだ。

 足場がデコボコしていて、動きにくい。

 オマケに、集中して攻撃を躱さなければいけないため、反撃の方法を考える暇が無い。


「……蜜柑! なんとか足止めしてください!」


 その時、沙織の指示が響き渡った。


「え!? が、頑張ってみる!」

「葉月は、蜜柑が足止めをしている間に、技を!」

「でも、あの防御力には……!」

「動きを止めるだけで良いので! お願いします!」


 沙織の言葉に、私は薙刀を構える。

 力を込め、いつでも技を使える準備をする。

 その間に、蜜柑が大槌を振り上げ、巨大馬の元へと駆ける。


「でりゃあああああッ!」


 叫び、巨大馬の横腹に大槌をぶつける。

 金属音を響かせ、巨大馬の体が吹き飛ぶ。

 そのまま壁にぶつかり、ズルズルと落下していく。


 今だ……!

 私は薙刀に力を込め、巨大馬の攻撃により表面が脆くなった岩に薙刀を突き刺す。

 手を地中に生やし、巨大馬に向かって突き進む。

 ……ここだ……!

 さらに力を込め、巨大馬を拘束する。

 植物の蔦に掴まれ、巨大馬は若干狼狽えた様子の反応をした。

 しかし、そのままトドメを刺そうと試みるも、強固な体のせいで出来ない。

 せいぜい、拘束を強くする程度だ。


「クッ……! 沙織……!」

「明日香!」

「うん!」


 沙織の合図に、すぐに明日香が駆け寄る。

 そして、二人の合体技の構えを取る。

 早く……! もう、魔力が……!

 心の中で急かしていた次の瞬間、沙織の弓矢が、一丁の銃に変わる。

 銃口を巨大馬に向け、引き金を引いた。

 赤い閃光が炸裂し、巨大馬を襲う。

 炎の竜巻が巻き起こり、巨大馬の体を焼き払う。


「やったか……?」


 明日香が小さく呟くのを聴きながら、私は前のめりに倒れた。

 すると、ギンが私の体を抱き止めた。

 やはり前のドラゴンに比べれば楽勝か……なんて、考えたのは一瞬だった。


「ママ……」

「……何……?」

「明日香と沙織が使ったのって、一番強い、必殺技だよね?」


 不安そうに尋ねるギンに、嫌な予感が脳内を駆け巡る。

 私はギンの服を掴み、なんとか顔を上げた。

 そして、ゾッとした。


「嘘……でしょ……」


 明日香の声がしたので、私は顔を向けた。

 そこでは、蜜柑がなんとか二人を支えていた。

 支えられながら、明日香が引きつった笑みで巨大馬を見ている。


「……これでは本当に……万策尽きましたね……」


 暗く言う沙織に、私はソッと巨大馬を見た。

 まぁ簡単に言えば、巨大馬は生きていたのだ。

 燃え盛る炎の中、四本の足で地面を踏みしめ、立っている。

 とはいえ、全くの無傷では無い。

 毛皮の所々が禿げて、肉が剥き出しになっている。

 その肉は焼け焦げ、焦げたニオイがこちらまで漂ってくる。


 しかし絶望的なのが、その火傷が、かなりの速度で回復しているのだ。

 火傷が治り、その肉に毛皮が覆う。


「ギン」

「何? ママ」

「すぐに……回復魔法を……」

「え、でも、詠唱知らない……」

「教えるから!」


 私はすぐに、ギンに詠唱を教えた。

 ギンがぎこちなく詠唱を唱えると、魔力が回復する。

 なんとか体勢を立て直し、私はギンを連れて三人の元に行く。

 蜜柑が沙織に回復魔法を使っていたので、私は明日香に回復魔法を施す。

 私達が回復している間に、巨大馬も完全に復活した。

 炎が消え、完全に振り出しに戻る。


 ……違う。

 振り出しなんかじゃない。


 だって、私達は完全に……万策が尽きたのだ。

 この中で一番強い二人の技ですら、巨大馬の致命傷にもならなかった。

 もう私達には、奴を倒す手段など無い。


「ヒヒィィィィィンッ!」


 大きく嘶き、巨大馬が強く踏ん張った。

 完全に怒った……!

 よく考えれば、奴の防御力は強力だから、今までまともな怪我をしたことなど無かったのだろう。

 攻撃を受けても微動だにしない辺り、自分の防御力にかなりの自信を持っていたハズだ。


 しかし、先ほど、傷を付けられた。

 すぐに治ったとはいえ、負傷したことに変わりはない。

 その事実が、巨大馬の闘争本能に火をつけた。


「ヒヒンッ!」


 叫び、先ほどより速い突進を受ける。

 それを咄嗟に躱そうとした時、巨大馬の攻撃で出来たクレーターに躓いた。

 バランスを崩し、体が揺らぐ。


「しま……!」

「葉月ちゃん!」


 巨大馬の攻撃を諸に受けそうになった次の瞬間、体が強く突き飛ばされた。

 クレーターの縁に足が引っ掛かり、私は何度も地面を跳ねた。

 地面に出来た凹凸に体がぶつかり、鈍い痛みが走る。

 しかし、それどころではない。

 慌てて顔を起こした私が見たのは、私の代わりに攻撃を受け、巨大馬の前足を諸に横腹に喰らう蜜柑の姿だった。


「蜜柑!」

「カハッ……!」


 苦しげに吐息を漏らす蜜柑。

 今はまだ、魔法少女の力と彼女の魔力で、苦しいだけで済んでいる。

 しかし、このまま踏み続けられ、魔力が途切れたら……?


「蜜柑ッ!」


 そう思った瞬間、私は一気に駆け出した。

 しかし、走りながらも、考える。


 私が駆けつけたところで、何が出来る?

 奴の強さを相手に、何とか出来るか?

 凡人の私に?


 しかし、考えながらも、私の足は止まらなかった。

 ボコボコした地面を蹴り、巨大馬の元に近付く。


「蜜柑に……酷いことするなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」


 その時、ギンが叫んだ。

 直後、大きな風が巻き起こり、私の体が前のめりに倒れる。

 叫びにブレス攻撃を連動させているのか、かなり強い風だ。

 私の体は浮き、巨大馬と共に飛ばされる。

 とはいえ、巨大馬への攻撃に巻き込まれた程度なので、地面を何度か跳ねて、歪な壁に当たって止まる。


「ちょ、ちょっとギン!」

「ご、ごめんなさい!」


 慌てた様子で謝りつつ、ギンは蜜柑に駆け寄って介抱をする。

 とにかく、蜜柑のことはギンに任せよう。

 今は巨大馬の解決策を練らなければならない。

 そう思って立ち上がろうと壁に手を当てた時、バチッ! と音を立てて弾かれた。

 ……へ?

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