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異世界で魔法少女始めました!  作者: あいまり
第6章 ダンジョン編
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第118話 最下層にて再会

 私達の見つけた階段は、それはそれは長いものだった。

 壁の色は、気付いたら緑色になり、青色になった。

 何度か休憩を挟みながら、私達は階段を下り切った。

 下りた先がまた薄い壁になっていたので、明日香に破壊してもらう。

 階段から出ると、青い石に囲われた洞穴だった。


「ここは?」

「……少し歩いてみましょうか」


 石の板を見ながら言う沙織に頷き、私達は歩き出す。

 しばらく歩くと、沙織は小さく息をついた。


「ん? 何か分かったの?」

「……どうやら、ここは最下層のようですね」

「えッ……もう?」

「えぇ。どうやら、かなりの近道だったみたいです」


 沙織の言葉に、私は小さく拍手をした。

 早く済むなら、それに越したことは無い。

 それから、沙織の石の板を覗いてみると、私達がいる場所は騎士団の人が来ていない場所のようだった。


「これから、知っている道に行ってから、蜜柑達が落ちた穴に向かいましょう」

「その地図でどこが穴か分かるの?」

「中層の物と重ねれば分かるでしょう」

「ふーん……」


 そんな会話をしながら、ゆっくり進んでいく。

 この辺りの魔物は、中層よりも強くなっているハズだった。

 気を引き締めなければ……と、警戒していた時だった。

 突然、壁の一部が隆起した。


「……!?」


 私は咄嗟に、石の板を見ていた沙織を蹴り飛ばした。

 明日香が沙織を受け止め、そのまま後ろに跳ぶ。

 私も彼女等とは逆の方に飛ぶ。

 直後、隆起した岩がトゲと化して、私達がいた場所に突き刺さる。

 岩の地面に空いた穴に、背筋に寒気が走った。


「キュルルル……」


 妙な鳴き声と共に、壁から大きな岩が外れ、地面に着地した。

 よく見ると、それは巨大なハリネズミだった。

 ハリの部分が全て岩になっているのだ。


「キュルルルルルル……」


 可愛らしい鳴き声とは裏腹に、その目は鋭く、私達を睨みつけている。

 背中に背負った甲羅のような岩からは、針と化した岩が突き出ている。

 容易に触れることは出来ない。


「ど、どうする?」

「……」


 震える声で尋ねると、明日香はハリネズミを見てジッとしていた。

 防御力が高そうなので、沙織の矢はあまり期待できない。

 明日香の拳は、あの針に勝てるだろうか。

 私の薙刀は……と、色々と考えていた時、沙織が何かを思いついた様子で手を打った。

 隣にいる明日香の肩を叩き、何かを囁く。

 明日香はそれに頷き、ハリネズミの針を掴んだ。

 ……うん?


「よいしょ……っと!」


 声を漏らしながら、明日香は両手で針を持ち、ハリネズミを持ち上げた。

 それにハリネズミは目を見開く。


「キュルルッ!?」

「……! せいッ!」


 叫び、明日香は地面に針を突き刺す。

 すると、ハリネズミは仰向けになり、腹が剥き出しになった。


「やっぱり、腹部の防御力は無さそうですね。魔物じゃこのような戦い方はしませんから、腹部を晒される恐怖など無いですよね」


 得意げに解説をする沙織に、私は感心する。

 なるほど……まぁ、ハリネズミも、お腹は普通だしね。

 納得していると、沙織が私の肩に手を置いた。


「さぁ、行きますよ。先は長いですから」

「うん……え? トドメ刺さないの?」

「あの体勢からの反撃は不可能です。あの状況から攻撃しなかったことから、恐らくあの魔物に攻撃手段は無いです。……殺す必要は無いでしょう?」

「……まぁ、うん……」


 魔物を殺すのは、敵を殺すのと違ってかなり不快だからね。

 沙織に促され、私はその場を後にする。

 たまに、突然不殺に目覚めるキャラとかいたりするけど、そんな感じ?

 ……いや、沙織のは少しずれてる気がするけど。

 あの状態で放置って、殺すよりも中々エグいと思う。


 それから何体かの魔物に遭遇したが、中々強い魔物ばかりだった。

 正攻法で倒すのは難しそうだったので、ある時は隠れ、ある時は(沙織の)知恵を使い、乗り越えていった。

 そして、ついに蜜柑達が落ちたらしき穴に辿り着いた。


「ここかな……?」


 沙織の地図で確認しながら、私は広場のような場所に出る。

 丸い広場のようになっており、上を見ると、かなりの高さが吹き抜けのようになっていた。

 ゲッ……中層あんな高いの? あそこから階段でひたすら下りてきたんだ……。


「葉月ちゃん!」


 想像以上の高さにげんなりしていると、蜜柑が明るい声で言いながらこちらに駆け寄って来た。

 それから私の前に立ち、嬉しそうに笑った。


「蜜柑。怪我は無い?」

「私もギンちゃんも、大丈夫だよ」


 敬礼のようなことをしながら言う蜜柑に、私はホッと息をつく。

 その時、間に何かが入って来た。


「やー」


 不満そうに言って両手を横に突き出し、私と蜜柑の距離を取らせるギン。

 彼女の服は血だらけで、服の裾が千切れていた。


「ギン! 大丈夫? 怪我とか……」

「あぁ……その血はギンちゃんのじゃないよ」

「そうなの?」

「うん。魔物の血。あと、服は、私が怪我した時の手当で千切ったからそのせい」


 そう言って額の辺りを擦る蜜柑。

 さらに聞いてみたところ、着地の際に技を使い、着地に失敗して頭を打ったらしい。

 魔力が切れているためか怪我の治癒が出来ず、そこに怪我をしてしまった。

 しかし、ギンが服を千切って包帯代わりにして手当をしたり、魔物の血を飲ませて魔力を回復したりすることで、怪我は無事治ったらしい。


「そんなことが……」

「うん。ギンちゃんには助けられちゃった」


 そう言って微笑む蜜柑に、ギンはムッとした表情で顔を背けた。

 何が不満なのかは分からないが、ひとまず、そこは褒めておこう。


「ギン、やるじゃん。凄い凄い」

「……」


 褒めたにも関わらず、ギンはなぜか、ずっとムスッとした表情をしていた。

 えー……なんで?


「ギン、どうかしたの?」

「……ママと蜜柑が話してると、なんかムカムカする」

「またそうやって……」


 呆れていた時、とあることに気付き、私は動きを止めた。

 ギンを見て、私は続ける。


「ギン……今、蜜柑のこと、名前で呼んだ?」

「えッ……あ、こ、これは……み、蜜柑に助けて貰ったから、流石にビッチは酷いかなって思っただけ! それだけ!」

「……へぇー?」


 顔を真っ赤にしながら反論するギンに、私はそう返事をした。

 ……何だろう? 何か、ね……私の中にある百合センサー的な何かがやけに反応しているんだ。

 いやぁ、流石にこの二人で百合は無いでしょ。

 ギン、かなり蜜柑のこと嫌ってたし。

 今でも私達の会話を邪魔するし、まだ嫌ってるんじゃない?

 でもなんか、隅に置けないんだよなー。


「……敵がいる場所が把握出来ました」


 その時、近くで地図を確認していた沙織がそう言った。

 壁には幾つもの通路があるため、どれが正しいのかを確認するのに時間が掛かってしまったようだ。


「おっけ。じゃ、行こう」


 私はそう言いながら、薙刀を肩に担いだ。

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