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魔道具屋レオンハート〜チート級魔道具有り〼〜  作者: INGing
王都の魔道具屋 編
8/14

心身強化の杖

私の拙い作品を読んで頂き感謝します。


ブックマーク頂いてる方、有難うございます。

もしよろしければ、感想や評価なども頂けると励みになりますので宜しくお願いします。


当作品は全てスマホからの投稿になってますので、PCの方は読みにくいかもしれません。

申し訳ありません。

ダンジョンから帰ってきたら、なんや門のとこが随分と騒がしくなってる。



「どうしたん?そんなに慌てて」


「ベル様!ちょうどいい所に!」



ウチが声を掛けた兵士はんは、ビシッと敬礼して質問に答えてくれた。



「様とか付けやんとって、背中が痒くなってきたわ」


「も、申し訳ありません。実は先程に哨戒の者より通達がありました、魔族領の方角から魔物の群れが接近中との事。その数およそ500、第2級災害警報が発令されました!」



マジで?!王都崩壊の危機やないかい!



「2級って事はウチ等の出番やな・・・もう災害警報なんか出やんと思ってたのに。・・・分かった、ほんならウチはこのまま先に向かうわ。自分等は急いで住民の避難勧告にあたって、城に報告上げといて」


「はっ!!お気をつけて!」



急いで魔物の進軍を止めやんと、王都中は血の海になってまう。

ウチ一人でどれだけ出来るか分からんけど、まぁ時間稼ぎくらいは出来るやろ。


そう思って振り返り、魔物のとこに行こうとしたら、クイって裾を引っ張られた。

横を見たら、ハニーが少し悲しそうな顔で見つめてきてた。



「・・・行くの?」


「ああ、赤髪ちゃん。有難うな、ダンジョンに付き合ってもうて。報酬はギルドから貰ってな、ウチちょっと野暮用が出来てもて」



何も言わんと、はいさいならはちょっと失礼やったか。

そう思ってお礼を言うたんやけど、ハニーは少し俯いて首をフルフルと横に振って呟いた。



「・・・危険」


「赤髪ちゃん・・・有難う、心配してくれて。でも、これがウチの仕事やねん。赤髪ちゃんも、今のうちに安全なとこ逃げー」



ウチがそう言うと、少し黙った後ハニーは顔を上げて。



「・・・マリア。赤髪ちゃんじゃない」


「そうか、マリアちゃん。ウチはベルや、ベルちゃんって呼んでな」


「・・・ベル、ちゃん?」


「おっと、ちゃんって歳やないやろ!とか言わんといてな?言うたら泣くで??」



そう言うて泣き真似したら、マリアちゃんは一瞬だけ表情が柔らかくなったけど、またすぐに暗い顔になった。



「安心してや、ウチは死ぬつもりは無いから。国軍が出張って来るまで時間稼げたらウチの勝ちや、こんなとこで死んでたまるかい!」



しかもウチはまだ処女なんやぞー!1発やるまで死ねるかーい!!

とか叫んだら、いつも無表情やったマリアちゃんがクスクスと笑ってくれた。

うん、やっぱ可愛い子には笑顔が似合うな。

隣りの兵士はんは苦笑いしてるけど、そんなん知らんわ。


結局マリアちゃんも逃げやんと、避難勧告の方を手伝ってくれるらしくて足早に王都の方へ入っていった。

やっぱいい子やなマリアちゃん、嫁に欲しい!


マリアちゃんを見送って、ウチも急いで魔物のとこへ向かう。

ちょっと時間ロスしたけど、まぁまだいけるやろ。

・・・ちょっとだけ気張ろか!





「うそん・・・」



魔族領の方に走って行ったら、割とすぐに魔物とかち合った。

足の早い魔物から順番にしばき倒していって、集団が目に入ってめっちゃビビった。


これのどこが500?見渡す限り一面魔物やん、1000でもきかんでコレ。

魔法使われへんのがキツイな、こんな時パーっと殲滅出来る魔法でも使えたら良いのに。


そんな事考えとったら、ズキンと急に頭痛がした。

視界が真っ暗になって、立ってられへん程の目眩がする。



「なん・・・やの、これ」



不意に子供の泣き声が聞こえてくる。

こんな所に子供なんかおらへんし、幻聴なんは分かる。

せやけど、ウチに一番近いとこで泣いてる様に聞こえる泣き声は、めちゃめちゃリアルで不意にウチを不安にさせる。


真っ暗やった視界に、急に光が浮かんで目の前に不思議な光景が現れた。


大きな家が目の前で燃えてる。

子供の泣き声も止んでくれへん。

ギュウって、胸が締め付けられる感じになって、思わず目を閉じてまう。

次第に子供の泣き声は遠くなっていって、ゆっくりと目を開いたらそこはさっきまでの魔物の群れが見えた。



「はぁ・・・はぁ・・・なんやったんや、今の」



フラフラと立ち上がって、杖を構える。

気を抜いとったら殺られる、ウチはさっきの幻覚を振り払う様にブンブンと頭を振った。


しかしまぁ、ようけ集まったもんやなぁ。

どこまでやれるかなぁ。


・・・やっぱ死にた無いなぁ。


だんだん近付いて来る魔物達を見てたら、めっちゃ怖なって来た。

こんな時、誰か助けに来てくれたらめっちゃ格好いいのに。


なんて、そんな姫さんの役割はウチには向いて無いな、生命が続く限り戦い抜いて「あーしんど」言うて酒場に直行すんのがウチらしい。

そういや、この前新しい給仕はん入ってきてたなぁ、全然すれた感じが無い若い子やったわ、ちょっとおしり触っただけで「きゃっ」とか言うてからに、ああ言うんが女らしい言うんやろうか、ウチもちょっと真似してみよか?・・・あかん、考えただけでも寒いわ、ウチやったら「何しとんねんワレぇ!」って言うんが1番似合っとる、こんなんやからいつまで経っても男出来へんねん、あー彼氏欲しい、あの魔道具屋の店主はんとかいい感じやねんけどなー、でもエルフの彼女さんおるみたいやしウチみたいなんはあかんか?


・・・あかん、現実逃避しても怖いもんは怖い!!

ウチがしょうもない事考えてる間に、とうとう魔物達は目と鼻の先まで来てもうた。


ウチの杖は届かへんやろうけど、魔法とか矢やったら届きそうな距離。

向こうもそれを分かってるんやろう、その証拠にそこら中から弦を引く音が聞こえてくる。

こういう時、近接職は辛いでな、相手が近寄ってこやんと何も出来へんねんから。


・・・ウチ魔術師やのになー!


取り敢えず身構えて杖に魔力を流しとく、身体が強化されとったら矢の2〜3本くらい刺さっても何とかなるやろ。

そう思って、迎撃の体勢を取っとったんやけど。



「ウソやろ!?洒落にならんでコレ!」



バッと前方から飛び出して来た矢は、10本20本じゃきかん数やった。

多分100本くらい、まるで雨みたいな矢の量に、迎撃する気概も削がれてもうて代わりに絶望感に包まれた。



「あかん、死んだ・・・」
















ウチが諦めに入った時、急に目の前に黒い影が現れた。


信じられへん事にその影は、飛んでくる矢を1本1本短剣で迎撃していってる。

左手に持った片刃の細い短剣で次々に矢を叩き落とし、前に立ってウチを守ってくれてるのんが分かる。

1本たりとも洩らさず叩き落としていく。


一体どっから現れたん?

ってか誰?

何でウチを守ってくれるん?


次々と頭ん中に疑問が浮かび上がって来たけど、その内の一つはすぐに答えが分かった。

影だと思ってたその人は、黒いローブのフードを目深に被り、顔の鼻から下を布で隠した男やった。


何で男かわかったかって言うたら、一瞬こっち向いた時に目が合ってん。

透き通るような真紅の瞳に、フードからチラッと見えた銀色の髪。

目しか見えてへんのに、優しく微笑んでるんが分かるその人は、間違いなく魔道具屋の店主はんやった。



「何で店主はんがこんなとこに?」



余りにも驚きの光景を見て、ついついそんな疑問を呟いてまう。

楽勝そうに捌いてる様に見えるけど、流石に喋ってる余裕は無いんかウチの疑問には答えてくれへんかった。


店主はんは空いてる右手を、スッと横に伸ばす。

なんや?と思って見てたら、空中から光の粒が集まってきて、やがてその手の中に黒い何かが納まっていった。

そんでそのままそれを、前方の矢が飛んで来てる方に向けると「ドン!」っていう激しい音が鳴った。

その後、黒い何かから出てきた”目に見えへんもん”が、地面を抉りながら飛んでくる矢を吹き飛ばして進んでいく。


ドン!ドン!ドン!と、矢の飛んでくる方向全部にソレを放つと、しばらくして矢が飛んでくる事が無くなった。

そうして息つく間が出来てから、店主はんはこっちに振り返って巻いてた布を取って優しくニッコリと微笑んだ。



「お客様、無事で何よりです」


「な、何で・・・」



ウチが困惑した様子なんを見て、ここに来た経緯を説明してくれた。



「先程、当店の方まで避難勧告に来た方から『一人で魔物に立ち向かって行った女性がいる』と伺いまして。特徴を聞かせて頂きお客様の事だと気付いたので、慌ててトんで参りました」


「・・・わざわざウチの為に?」



ウチを助ける為だけに、危険をおかして来てくれたん?

アカンって、そんな事されたら・・・


感極まってもうてちょっと泣きそうになってるウチに、店主はんはゆっくり近付いて来て少しだけ首を傾げた。



「どうやらまだ振り切れて無い様ですね・・・杖は役に立ちませんでしたか?」


「どういう事?杖の調子は良いけど・・・」



ここに来るまで、襲い掛かって来た魔物を蹴散らすのに、杖はかなり役立ってくれた。

そう考えて首を傾げたら、店主はんは軽く首を振った。



「お客様が魔法を使えなくなってしまったのは、恐らく子供の頃に何かトラウマになるような事件を起こしてしまったせいだと思います」



小さい頃から大きすぎる魔力を持ってる子供は、制御が上手くいかんでそう言う事件を起こすのはよくある事らしい。

普通は大人の方から、使用に関して厳しく注意するもんらしいけど、ウチの場合チヤホヤされて育ったって聞いて、店主はんはそうあたりをつけたらしい。


なんかやらかして、それが怖くなって記憶ごと魔力を制限してもうてるんか。

・・・そうか、あの耳の中から聞こえてくるような泣き声。

あれはウチの声やったんや。



「なのでトラウマを払拭する補助になればと、追加で精神力強化を付与しておいたのですが」



そう言われてふと気づく、最初は怖かった筈の魔物達も、杖に魔力を込めてからその恐怖も薄れとった。

矢の雨を見た時も怖さよりも諦めの方が強く感じたくらいに。



「そうやったんや・・・」



杖をじっと見つめ、握る手に少し力が入る。

確かに”ウチ用”にって作ってくれたもんやけど、まさかそこまで考えて作ってくれてたとは。

掻き抱く様に杖を抱き締め目を瞑る、店主はんの心遣いを感じてついぞ目尻に涙が浮かびあがった。



「焦る必要は有りません、徐々に克服していきましょう」



優しく諭す様な声に、ウチは首を振って立ち上がる。



「大丈夫・・・大丈夫や」



浮かんだ涙を拭い、杖に魔力を込めた。

魔道具を発動させるには充分な魔力が入ったけど、まだまだこんなもんじゃ足らん。


ウチが制御出来る限界ギリギリまで魔力を込める、その魔力は杖の先端へと集まっていき次第に激しい光を放ち始めた。

そしてその杖を、店主はんが先遣隊を壊滅したお陰で足が遅なった魔物達に向かって振るう。


瞬間、頭に痛みが奔ったけど杖の効果ですぐに落ち着いていく。

そんでそのまま、往生せいやぁ!と叫ぶと杖からウチの魔力が迸る。


ドドドドドドドド!

と、杖を向けた方角から爆炎が魔物達に襲い掛かった。

かなり距離が離れてんのに、こっちにまで熱が届いて来る程の激しい爆炎。

なるほど、そりゃこんなもん子供がみたら泣くわ。


しばらく魔物達がウチの魔法に蹂躙されるのを眺めて、段々収まって来た頃に店主はんの方に向き直った。

店主はんは目を丸くして、ちょっとだけ驚いてた様子やった。



「こんだけやって貰っといて、まだウジウジしてるんは女が廃るってもんやろ?」



そんな店主はんにそう言うと、店主はんはニコリといつもの笑顔に戻ってくれた。



「お役に立てた様で何よりです」


「めっちゃ助かったわ、おおきにな。お礼にウチの処女あげよか?」


「いえ、代金はすでに頂いておりますのでお気持ちだけで」



相変わらずツッコミがなってない店主はんに、冗談や!って逆にツッコんどく。

・・・まぁ、半分以上冗談ちゃうけど。



「では、後はお任せします。この調子ですともう王都に脅威は無さそうですね」


「まぁな、後はこの美少女魔術師に任せときー!」


「はい、宜しくお願いします」



このボケ殺し!ウチがボケたらちゃんとツッコんでや!そう言うたら。



「・・・何かおかしな所でもございましたか?お客様は美少女ですし魔術師ですよね?」



って、真顔でとんでもない事ぶち込んできよった。



「っ!!?」



あかん、顔熱い!



「お客様?」


「な、何も無いわ!アホ!早く王都に戻り!」



恥ずかしなってそう叫んだら、店主はんは首を傾げて困惑してた。

しっしって手で追い払う様にしたら、頭を下げて来た時と同じ様に帰っていった。



「あ、あかん。顔熱い、男の人に美少女なんか言われたんオトン以外で初めてや」



誰もおらんくなってから、顔に手を当てて熱を冷ましていく。

落ち着いて来たと思っても、さっきの店主はんの顔が頭にチラついてまたすぐに顔が熱くなる。



「あー、かなんなーホンマ。マジになったらどうしてくれんねん」



かなりの時間かけて落ち着かせて、まだまだ残ってる魔物の群れを魔法で蹂躙していく。

討ち漏らしが無いように、探知魔法も同時に使いながら景気よくぶっ放してたんやけど・・・



「なんや、この魔力・・・」



探知範囲内に途轍もなく馬鹿でかい魔力反応があった。

その反応は猛スピードでこっちに向かってきてる、慌てて魔法を放って見てもその反応は消えへんかった。

むしろ・・・



「なんやコイツ、ウチの魔法を吸収してる?!」



より大きな反応になって向かってくる魔力。

杖の効果も有るっていうのに、じわりじわりと心の奥から恐怖が襲ってきよる。



「な、なんでこんなとこにおるんや・・・」



次第に姿が目視で確認出来る距離になり、その反応が何者か理解した。



「強大な魔力を感じてやってきたのじゃが、どうやらハズレだったようじゃの」



ウチの目の前に降り立ったソイツは、桃色の髪に肉感的なスタイル。

必要最低限しか隠れてない、まるで下着の様に布面積の少ない服を着て妖艶な色気を振りまいていた。



「魔王・・・!」


「ん?お主・・・僅かに、奴の匂いがするのぅ?」



ウチの声に気付いて、反応を示す魔王。

クンクンと鼻を動かして、ウチの匂いを嗅ぎだした。

背中に冷たい汗が流れる、幾ら魔法が使える様になったって言うても魔王に叶う訳が無い!

当代魔王は友好的って聞いてるけど、そんなんホンマか分からへんし何より敵の親玉にここまで接近されたら誰だって怖いはずや!



「や、奴っちゅうんは?」



魔物と戦ってたら急に魔王と遭遇とか、それなんてクソ冒険譚や。

一応、何も言わんのも気分を損ねるかと聞いてみたけど。



「奴じゃよ、お主は知ってるはずじゃがの」


「ひっ!?」



そう言って、ウチから離れた時に見えた魔王の顔に恐怖する。



「妾の探し人、それは希代の付与術師レオン・ウィルハートじゃ」



そう言ってニヤっと笑った魔王の目は、まるで獲物を探している飢えた獣の様やった。

そんな途轍もなく獰猛な視線に晒されて、ウチ漏らしてしまいそうや。


いや、漏らしてへんけども。

誤字、脱字、乱文、誤用など見かけましたら一報頂けると幸いです。

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