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魔道具屋レオンハート〜チート級魔道具有り〼〜  作者: INGing
王都の魔道具屋 編
5/14

エーテル

ブクマありがとうございます。

『うー、気持ち悪い・・・』



今日は少し調子に乗りすぎた、こんなに酷い魔力欠乏症は久し振りだ。


狩人になって約半年。

最初のうちは無茶もしたけど、最近になって自分の限界が把握できる様になってきた。

・・・そう思っていたんだけど、それはどうも勘違いだったみたい。


まだいけるといつもより少し、ほんの少しだけ森の奥に入っただけで狼の群れに囲まれちゃった。

ちょっと焦ったけど、何とかワタシの魔法で倒せる程度の獣で良かった。


それで気を抜いちゃったのがまずかった、次々と襲いかかってきた狼を全部魔法で倒しちゃった。

全滅させた時にはもうフラフラ、酷い魔力欠乏症で立っているのも辛いくらい。

それ以上の狩りは断念して、そのまま王都に帰る事にした。

帰りに獣と遭遇しなかったワタシはかなり運が良かったと思う。


王都についたら、真っ直ぐにいきつけの魔道具屋へ向かう。

魔力は時間経過とともに徐々に回復するんだけど、欠乏症までいくとエーテルを飲まないと治らない。

普通のエーテルは不味いし高いし極力飲みたくは無い、だからみんな限界まで魔法は使わないで自然回復させるのが常識。

ワタシも数ヶ月前まではそういう認識だった。


でも、あそこのエーテルはそんな常識を変えてくれた。

味も果実水みたいに甘くて美味しいし、値段も他所の1/10くらいで手頃だし。

あそこがエーテルを販売するようになってから、エーテルが嫌いな魔法使いはかなり減ったと思う。

お陰でワタシもエーテルを飲む事に、忌避感を感じなくなったし。

細長い瓶に入ったエーテルを手に持ち、笑顔が素敵な店主に会計を頼む。



『いつもありがとうございます、エーテル1つ銀貨2枚です』



震える手で懐から銀貨を2枚取り出すと店主へと手渡し、その場で栓を抜いて一気に飲み干した。

琥珀色に輝く液体が口の中に入っていき、舌を楽しませて喉を潤してくれる。

次第に全身に気力が満ち、最悪にまで落ち込んでいた気分を向上させてくれた。

体力を回復してくれる効果はないけど、スッキリとしたお陰で少し身体が軽くなった気がする。


人心地着いたワタシは、この後どうするかを悩んだ。

狩りを途中で引き上げてしまったせいで、いつもより若干稼ぎが少ない。

普段は魔法鞄いっぱいに入っている狩りの成果も、今日は半分を少し越えた所といった感じだ。


かといって、今から森に戻ると言う選択肢は無い。

外はもうじき、日が暮れるかどうかといった所。

外門の閉じる時間までに戻って来ることを考えれば、せいぜい1匹か2匹程度しか狩れないだろう。

どう考えても割に合わない。

少し時間は早いけど、今日の活動はここまでにしておこう。


空いた時間、せっかくなので魔道具屋の商品を少し見てみる。

いつもエーテルしか買わないけど、こうして見てみると多種多様な物が置いてある。


魔力を込めると、一定量の水が湧き出てくる『水瓶』

火力が調整出来る、ツマミのついた『焜炉』

点灯と消灯を瞬時に切り替えられる、スイッチのついた『懐中電灯』

見た目に対して、かなりの大容量を収納出来る『鞄』

一流の魔道具屋にしか置いて無さそうな、そういった高価な魔道具。

それだけでは無く『ポーション』や『エーテル』、『毒消し』や『虫除け』などの一般的な魔道具も置いてあって品揃えの豊富さに驚いてしまう。


特に驚いてしまうのが、効果の疑わしい魔道具もそれらと同様に陳列されている所だ。

特定の場所へと移動するネックレス?

致命傷を肩代わりする指輪?

剣身に魔法を纏う事が出来る剣?

空中に足場を作る靴?

姿を隠す事が出来る外套?


存在しないとは言わないけども、もし本当に有ったとしたらこれらは神話級の魔道具だ。

こんな風に、人目に晒される所へ陳列する訳が無い。

値段も、安いもので金貨1枚から。

とてもじゃないけど、効果の程は信じられない。


それらの棚を、真剣な表情で眺めている赤髪の女性。

商品説明を真に受けてしまった被害者か、少しだけ憐れな気持ちになるも余計な事は言わないでおく。


その棚から離れて、次は消耗品等が陳列された棚を見にいく。

『石鹸』や『洗剤』に『串』などが置いてある、その棚には『矢』も置いてあった。

確かに消耗品だけども、ここ魔道具屋じゃなかった?

まぁ、1つの店で全て揃うと言うのは客にしてみればありがたいけど。


狩人を生業とする人は、弓を主武器にする事が多い。

狩人は”戦う”のが仕事じゃない、獣を”狩って”素材を得るのが仕事だ。

如何に安全に、遠距離から一方的に効率よく狩るか。

それが優秀な狩人の考え方というものだ。


ワタシみたいに魔法が使える狩人は極稀で、安全に狩りを行う手段として弓を使うと言うのは合理的に思う。

ワタシも狩人になった際、成人の祝いにと親族から弓を贈られた。


ただ・・・


いくら練習しても、ワタシの弓術は上達しなかった。

それは狩人として致命的に思える欠点だったが、幸い魔法の才能があったので何とか生計を立てる事はできている。


不器用という訳じゃない、どちらかというと器用な方だと思っている。

狩りの合間に練習を重ねていたけど、少しも良くならない事に失望し最近では弓を触る事も無くなった。



『10本で銅貨1枚、ここは魔道具以外の物も安いのね・・・』



これだったら練習用に使っても、そこまで懐は痛まないかも。

それにエーテル1本分のお金が有れば、矢が200本買える計算だ。



「ちがう!そうではない!」



熟練の狩人が獣を1体仕留めるのに使う矢の数は1本〜2本、100体〜200体の獣を魔法で狩るのは現実的に不可能だ。

費用対効果を考えてみても、弓術の上達は必須の様に思える。


うーん、どうしよっか?

50本だけでも買って、明日から練習しようかな?

それとも予備のエーテルを買っておく様にして、今日みたいな時に備えるか・・・。



「っ?!ダメだ!それを発動させると・・・」




突然叫び声が聞こえて、驚いてそっちを見る。

白い鎧を着た金髪の美女が、何やら盾を持って身構えている。


何かあったのだろうか?

しばらく様子を見ても何も起きず、金髪美女の方も「・・・あれ?」と呟いて呆気にとられた表情をしている。

その後は店主と小声で話始めたので、何もなかったのだと気にしない事にした。


その後もしばらく悩んだ結果、矢を買うことにする。

何処か疲れた様な表情の金髪美女が帰っていくのを横目に、店主に声を掛け矢を購入して帰った。





翌日。

いつもの様に森へと来たワタシは、小型の獣を相手に早速弓の練習を始める事にする。

普段は魔法鞄に入れっぱなしにしている弓を取り出し、森の浅い所を散策した。

外縁部に生息している獣は、危険度もそんなに無く安心して練習する事が出来る。


早速見つけた兎に向かって弓を構え、矢をつがえて気配を殺し弦を引き絞る。

落ち着いて狙いを定め、矢を放つ。


弓の張力により勢いよく飛び出した矢は、そのまま何かに誘導されているかのように横へと曲がって飛んでいった。



『・・・やっぱりダメね』



めげずに2射目、3射目と矢を射るがそのどれもがあさっての方向へと飛んでいく。

右へ左へ、遥か上空へ。

縦横無尽に動き回る矢を見て、ハァと深いため息をついてしまう。

どれ一つとして真っすぐに飛んではくれない、やっぱりワタシに弓の才能は無いのだろうか。


先日買った矢が尽きる頃、未だに成果0という事実に軽く絶望感を感じた。

この後は少し気合を入れて狩りをしないと、昨日に続いて連続で稼ぎが少なくなってしまう。

1日くらいなら減っても何とか生活出来るが、これが2日3日と続いてしまうと流石にマズイ。


弓の事はひとまず忘れ、昨日狩りをしていた場所まで戻る。

中域に入ってすぐくらい、徐々に獣の危険度も増していき周囲の警戒も必要になってきた。


道すがら遭遇した獣は、魔法を使って狩りながら進んでいく。


矢と違い、狙った方向へと飛んでくれるので先程までの鬱憤が徐々に晴れていった。

それどころか、少し狙いが逸れても自動的に修正されて目標へと当たってくれる。


やっぱりワタシは、魔法一本でやっていくのが良いのかもしれない。

弓をしまいこんだ魔法鞄を見て、深いため息が出る。


大事な弓だけど、もう触る事は無いかもね。


ぼんやりとそんな事を考えながら、昨日狼に囲まれた場所までやってきた。

ワタシの魔法の余波でボコボコになっている地面、飛び散った肉片や辺りに漂う血の匂い。

この匂いに釣られて、やってくる獣を狩っていく算段だ。


同族の匂いを嫌って狼はやってこないと思うけど、それは逆に好都合。

群れを成して行動する狼よりも、個々で活動している他の獣が来てくれた方が狩りやすい。


ワタシは近くの木に登り、周囲の獣の動向を探った。


・・・おかしい、獣の数が少なく感じる。

遠くからこちらを伺っている様な気配は感じるが、一定の距離を保ち近づいてくる様子が無い。

おそらくこの気配は狼達だろう、この辺りを危険だと感じて距離をとっているのだ。


それは狙い通りだから別に構わない、ただ他の獣の気配が少ないのは疑問に思える。

異変に思ったワタシが逡巡していると、徐々に狼の気配が増えていく。



『っ?!』



それに気を取られていたワタシの横を、頬を掠める様に何かが飛来する。

慌てて避けようとするが、そのせいでバランスを崩し木の上から落ちてしまう。



『一体何が・・・』



なんとか上手く着地し、先程の飛来物が飛んできた方を確認する。

するとそこには、通常の狼よりも一回り程大きい個体がワタシを睨みつけて牙を剥いていた。



『フォレストウルフ!!』



その狼の目は、真っ赤に濁っていて魔物であることを証明している。

その魔物は大きく遠吠えを一つすると、眼前に氷の礫を作り出す。


先程頬を掠めたのも、きっとこれと同じ物だろう。

慌てて手を突き出し、魔法を発動させる。

魔物が作り出した礫は徐々に大きくなって氷柱状へと変化する、そしてそれは完成したと同時にワタシ目掛けて射出された。


真っ直ぐにワタシ目掛けて飛んでくる氷柱、かなりの速度をもってワタシの生命を狙う。

しかし、眼前までやってきたソレは見えない壁に阻まれたかの様に空中で四散した。


私から放出された魔力が、周りの空気へと拡がっていく。

干渉された空気はワタシの元へと集い、やがて流れを作り風の障壁を作り出す。

これによって氷柱を防いだワタシは、次に魔物に向かって手を横薙に振るう。

すると風は、今度は鋭い刃と化して魔物へと襲いかかった。


高速で繰り出される刃は、防ぐ事も避ける事も用意では無い。

不可視の風刃によって、相手は成す術もなく切り刻まれる。

ワタシの必勝パターン・・・だったのだけど。


どうやって感知したのかは知らないが、風刃が届く手前で魔物は横へと跳んだ。

その後、自動で追いかけていく風刃も次々に避けて全てを無傷でやり過ごした。


その光景に驚いていると、不意に横から衝撃が来た。

そちらを見ると、狼がワタシに向かって飛びかかって来るのが見えた。

慌てて風刃を飛ばし、狼を切り刻む。


幸い風の障壁に阻まれて、衝撃以上の被害はワタシには無い。

しかし、気がついた時には既に狼の群れに囲まれてしまっていた。


周囲の気配を探ると、先程まで距離があった狼達もこちらへと向かって来ている。

魔物が放った咆哮によって、次々に狼が集まってきた。



『はぁ・・・はぁ・・・、多過ぎるわ・・・』



ワタシが放つ風刃によって、狼達は無数の屍に変わっていく。

しかし、魔物を何とかしない事には次々に狼は集まってくる。


魔力がかなり少なくなってきて、このままじゃあ昨日の様に欠乏症になってしまう。

終わりの見えない戦いに、体力も気力も徐々に削られていった。



『もう・・・』



限界ね。


身に纏っている風の障壁も、かなり弱々しい物になってきた。

あと1度か2度か、狼の体当たりを受けてしまうと消えてしまうだろう。


それを魔物も察知したのだろうか先程まで激しかった猛攻を止めて、確実にワタシを仕留める為か慎重に包囲網をつくりだしている。



『ここまで、ね・・・』



ガクっと膝が折れ、地面に身体が崩れる。

ジリジリと包囲を縮め、ワタシの元へ近づいてくる魔物と狼達。

それらをただ見てる事しか出来ないワタシ。

魔物が跳躍の為に身を屈めたと同時に、スッと目を閉じた。















「こっちだ!狼共!」




不意にそんな叫び声が聞こえ、ワタシはゆっくりと目を開く。

周りを見ると、狼達はワタシの方を向いていなかった。

さっきまでワタシに飛び掛かろうとしていた魔物までが、まるでワタシに興味を無くしたかの様にあさっての方向を向いていた。


何が起きたのかと狼達の視線を追うと、そこには白い鎧を身に纏った金髪の美女が立っていた。

金髪美女は淡く光る盾を左手に持ち、狼達に向かってそれをつき出す様に構えていた。


やがて狼達は、次々に金髪美女へととびかかる。

金髪美女は狼の体当たりを盾を上手く使って弾き、時に逸らし時にいなし隙きをついて右手に持った剣で屠っていく。

時折捌き切れない事もある様だけど、ワタシの障壁と同じ目に見えない何かによって防がれ、狼達は鎧に傷をつける事さえ叶わないようだ。



『あぶない!!』



やや離れた所で魔物が氷柱を生成し、金髪美女を狙っているのが見えた。

当の本人は狼達の猛攻を捌くのに集中していて、全く気付いていない様だった。

ワタシは咄嗟に手を翳し、魔物に向かって風刃を発動させた。


不意に意識の外からやってきた風刃に、魔物の反応はコンマ数秒遅れた様だ。

今回は避けられる事も無く、ワタシの魔法によって切り刻まれ、魔物はただの肉塊と化した。


ただワタシの魔力は、その風刃によって尽きてしまった。

昨日とは比べ物にならない程の悪寒、意識を保っている事も出来なくなり、そのまま視界が真っ暗になっていった。





『っ?!』



急激に意識が浮上し、慌てて身体を起こす。

戦闘中に意識を失うなんか、死でいてもおかしくは無い。

何とか生きていた事を安堵する前に、周囲の警戒をはじめようとしてふと気づく。


いまワタシがいる場所は、森の中では無く何処かの室内だった。

その部屋のベットに横たわらされていたようで、身体が柔らかな布団に包まれていた。



『ここは・・・』


「気が付きましたでしょうか?」



状況の変化に困惑していると、凛と鈴が鳴る様な透き通った声が耳に入った。

声がした方へ目を向けると、そこには黒髪黒目の細身の女性が立っていた。


長く真っ直ぐな艶のある髪、切れ長の目には、下手をすれば吸い込まれてしまいそうになるほどに透き通った漆黒の瞳。

エプロンドレスを身に纏い、首には奴隷を示す太めの首輪。


美しい容姿に見惚れていると、さらに声を掛けられた。



「貴方様は魔力切れによって意識を失われておりましたので、マスターの指示によりエーテルを投与させて頂きました。なお当店にいらっしゃった経緯としましては、倒れた貴方様をクリス様が担いでお越し下さいました」


「ソウダッタ、デスカ・・・」



黒髪の女性の説明を受けて、今の状況について把握した。

あの時の金髪美女が、ここまでワタシを運んでくれたのだ。

ということは狼達は無事に撃退出来たと言う事だろう、そう思うと今まで張り詰めていた緊張の糸が、ホッと緩むのを感じた。



「マスターを呼んで参りますので、そのまま少々お待ち下さい」



そう言って、ワタシの返事も待たずに黒髪の女性は部屋から出ていった。

その後しばらくすると、一人の男性を連れて女性は戻ってきた。


その男性とは、光をキラキラと反射する程に輝く銀色の髪に、優しげに見開かれた瞳は真紅の・・・



『魔道具屋の店主さん?!』



そこに居たのは、いつもエーテルを購入している魔道具屋の店主だった。



『はい。魔道具屋レオンハートの店主をしております、レオンです。お客様、無事で何よりでした』



ニコリといつもの様に優しく笑い、店主はワタシの無事を祝福してくれた。

その笑顔を向けられたワタシは、少し気恥ずかしくなってしまって、少しだけ頬を染めてしまい慌てて俯く。



『あ、ありがとうございます・・・』


『優秀な狩人さんだとは存じておりますが、あまり無茶はしませんように。先日買って頂いた矢は、あまり役に立ちませんでしたか?』



店主の疑問ももっともだ、矢を買って狩りに出たのに魔力切れで倒れている。

言外に何故弓を使わなかったのかを聞かれているのだろう。



『いえ、矢に問題は無いです。問題はワタシの、弓の腕前の方で・・・』



そう言って、さっき以上に恥ずかしくなり、顔の温度が急激に上昇していくのを実感した。



『半年前に成人し、狩人になりました。それから練習を重ねているんですけど・・・なかなか上達しなくて』



弓は普通10日も練習すれば、それなりに真っ直ぐ射る事が出来る。

もちろん、射程を伸ばしたり上手く狙いをつけられる様にするのに更なる鍛錬は必要だけど。

小型の獣を狩れる様になるのに約1ヶ月、狩人なら練習すればそれ位は出来るのが普通だ。


なのにワタシは、半年経った今なお真っ直ぐに射る事すらできやしない。

成人祝いに貰った弓を魔法鞄から取り出し、落ち込みながら店主にそれを話した。



『これは親族から贈って貰った物なんですが、上手く使ってあげられないのがすごく悔しいです。意匠も素晴らしく良い弓なのは確かなのですけど・・・使い手がワタシというのが、かなり宝の持ち腐れですね』



そう言って苦笑いし、店主の方を向く。



『・・・?どうしました?』



店主の顔を見ると、何やら驚いた顔をしている。

視線の先はワタシの手元、成人祝いの弓に向けられていた。



『あの・・・』


『あ、すみません。少し呆けていました。・・・もしよろしければ、手に取って見てもいいでしょうか?』



店主が真剣な表情でそう言うので、少しだけ気圧されてしまい弓を店主へと渡す。


弓を手に取り、右手を翳す店主。

ブツブツと真剣な表情で”何か”を見ている、しばらくすると顔を上げワタシに尋ねてきた。



『・・・贈られた親族の方はミーミルさんでしょうか?』


『っ!!姉様を知ってるんですか?!』



店主の口から出てきた名は、姉の名だった。

不意に出てきたその名に驚いてしまい、少し声を荒げてしまったが、店主は気にせず「通りで・・・」と呟いている。


しばらく思案していた店主は、やがて得心がいったという表情で弓を返してくれた後、ワタシに向かって笑顔で言った。



『お客様が宜しければ、この弓の使い方をお教えしましょうか?』


『・・・え?』



魔道具屋の店主が、狩人のワタシに弓の使い方を教える?

その言葉の異様さに、まともな思考が出来ず、只々呆気にとられてしまっていた。

誤字、脱字、乱文、誤用など見かけましたら一報頂けると幸いです。

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