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駄作

俺がいいと言うまで、ゲートは閉じるんだぞ

作者: 矢田こうじ
掲載日:2016/10/07

朝の通勤ラッシュ。


吾郎はいま、電車に揺られている。

彼は急行の止まる駅に住んでおり、その利用客の多さ故、乗車しても簡単には座れない。

終点までの間に座れることは2週間に1回あるかどうか、ぐらいだ。


吾郎は、脂汗をかいていた。

彼は考え続けている。

それがまるでたった一つの解決策のように。


彼には今、波が来ていた。

ここ数ヶ月のうちで一番の(ビッグウェーブ)だ。


何だろう。

昨日、何食べた?

それとも朝が寒かったからか?

夕飯のシュウマイ、少し味がおかしかったか。

昼飯の鳥の唐揚げ、油が強かったか。


どちらにしても、思考を止めてはいけない。

()めれば、それが()まらなくなる。


彼の乗っている電車が駅に止まった。


俺の前の席の人、降りろ。

降りて下さい。

約1名、つまり約俺(やくおれ)が終点まで助かるのです。

そこにはオアシスが沢山あるのです。

この時間帯でも、人の少ない穴場があるんです。

そこまで保たせたいんです。

ほら、立ってくれ!!


彼は強く念じるが、誰も席を立たなかった。

ドアが閉まり、また電車は走り出す。


嗚呼。

次の駅まで、10分は止まらない。

目的地は次の次の次の駅だ。


吾郎はスマホを取り出す。

前の駅で端っこを確保した為、心と右の脇に余裕ができたからだ。

少し楽になっているうちに対策を。


「腹痛 ツボ 検索」


声が出ていたかもしれないが、とにかく自分の体を誤魔化す事が喫緊の最優先事項だ。


今、足のツボなんて押せない。


次だ。


ほほう、手か。胃腸に効果あり?

信じていいか?サイトの主人(あるじ)よ。


芝居染みた思考の連鎖も、彼の対策の一つだ。


親指と人差し指の間の?

人差し指側少し上を?

小指側に押す。

こうか。


イタタタ。

痛いという事は、あなたのその部位が弱っている。


なるほど。

ただ、今更がわかっても何の足しにもならない。

何故なら、俺は体全体でそれを今感じているからだ。


く。


何て事だ。

また第二波(ビッグウェーブ)が。


どうする俺?

次の駅で降りるか。

そうすれば助かる。


しかし次の電車がすぐに来ない。

終点の駅なら、それなりの頻度で電車は来る。


待てないか。

頭だけで決めるな。お腹様にも聞け。


・・・まだ、行ける?

そうか、頑張るんだな。

わかった、俺も頑張ろう。


そう考えているうちに、次の駅でのドアが閉まった。

また電車はゆっくりと動き出す。


急に吾郎の顔が歪む。


グッ・・・身体よ、俺の身体。

何故、俺に、ブラフ(はったり)を?

さっきドアが閉まる前に聞いたよな?


同時に対策できなかった自分を責め、後悔していた。


本当に何で今日に限って薬を忘れたのだ。

昨日寝るときまで、気にしていたのに。

ただ、ここまで強いと気休めかもしれない。

気休めの慰め。


嗚呼。

嗚呼。

もうダメだ。


次。

次の駅で降りないと。

そこまで保たせる。

何とかして保たせなければならない。


何かを考えなければ。

何を考えれば。

とっても楽しい事、逆にとっても辛い事。

・・・辛い事はまさに今だ。却下。


あ、今やっとあの不動産の看板が過ぎた。

もう少し、あともう少しで駅だ。


あの駅は、確か進行方向側。

誰もいないで欲しい。


電車は踏切を通り過ぎ、ゆっくりと駅に停車し始めていた。


「すいません、降ります。すいません」


なるべくドアの近くへ。

急いで向かえる場所へ。


ドアが開いた瞬間、飛び出すように外に出た。


急げ、走るな。

走れば力が入りすぎる。

ゆっくり急いで。

気持ちを先に向かわせるな。


入り口に入った。

吾郎に最後の試練が待っている。


扉が閉まっていませんように。

扉が空いていますように。


そして彼は少し安堵した。

一番奥が空いている。


よし、もう少しだ。

扉を閉めて。


あ。


あ。


あ。


・・・俺は俺を褒めたいと思う。

よく、頑張ったと。

対象となるキーワードを出さずに、あの状況を出せるか、書いてみました。


本当に辛いんですよ。

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