4-6 ここから
美少女と美幼女に挟まれて起きるのは、もう慣れたつもりだが、衣服がここまで乱れていると、変なことを考えないでもない。
そういえば、パジャマとか用意すんの忘れたな。この服ずっと着てるよな。
.........汗とか染みてんのかなぁ。
.........我ながら気色悪いな。
寝てる女の子の服の汗の染み具合を確認する男。
完全にアウトだ。
最近俺にアウト要素が多すぎて困る。
さっさと起こそう。でなきゃ理性さんが死んじゃう。
が、起きようとすると腹に重み。
ルイが抱きついていた。俺の腹に顔を埋めている。
ヤバいなぁ。可愛いし、ちょっとアウトな構図だなぁ。
このままではいけないと思いつつも、暫くこの状況を堪能したいと言うジレンマ。今年最大のものかもしれない。いや、ジレンマとは少し違うか?
結局欲に負けて、その後1時間ほど2人を堪能した俺であった。
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「これ、美味しいですね。いったい何ていう料理なんです?」
「ふんほんろふほふふらいろほれほ」
「飲み込め」
トーストにスクランブルエッグとハム、そしてサラダの何となくアメリカンな朝食を食べ、研究をスタートする。
女の子2人に色々とイタズラしたのは気づかれていないようで、威厳が保たれたというか、むしろ情けないというか、軽く死にたい気持ちさえあったが、まぁ、そこはおいておこう。
ちょっとした自己嫌悪を包んで、取り敢えず川の水の採取に向かうために川辺まで歩き、取り出した特殊なビーカーにこれでもかと入れる。このビーカーにもトイレと同じく空間拡張が施されており、見た目の100倍は入るというなかなかの優れものだ。
家に戻って机の上にピペットやら漏斗やらフラスコやらを設置していき、一応断絶結界を張っておく。これで漫画のように爆発しても、周囲に被害が及ぶことはない。無いとは思うが、保険は大切なのだ。
さて、最初は何をしようか.........。
俺はまず、真っ赤な水を漏斗に流しーー
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ここにきて4日目になった。この3日間の研究で色々とこの水について分かってきた。
まず、この水には2つのものが過剰に含まれており、真っ赤なのはそのせいである。
1つ目は魔力。
この世界の水はすべて魔力が通っているのだが、ライラスフォールの水に限定して普通の10倍もの魔力が溶け込んでいた。
これを飲めばどんな人間も魔力が即座に回復することだろう。代わりに死ぬけど。
そう、この水飲めないのだ。
その、この水を非飲料水にしているものこそ、大量に混ざっている2つ目のもの。
俺は不治の病のせいなのか、それを『邪気』と命名した。
だがまぁ、そんなおぞましい名前になるにも理由はあるのさ。
俺は研究の途中で適当なマウスを2ダースほど召喚し、それに様々な方法で水を摂取させていった。
そしてそのどれにおいても、マウスは体が変化するのだ。
具体的にいうと目が取れたり、やせ細って翼が生えたり、蜘蛛になったり石化したり、あとは、食蟻獣のようになって火を吹き始めたのもいたな。
フェイが隣で半泣きになっていたのが記憶に残っている。
そんな気色悪くも恐ろしい成分なのだ。邪気で妥当だろ。
そして今朝、事件は起こった。
川辺に流れ着いたとある生物の死体がかなり問題だった。
目の前の死体に若干の怖気を覚えつつも、ホルマリン漬けになった一匹のマウスと比べて見る。
「似てんな」
流れ着いた死体は、食蟻獣のようになったマウスに酷似していた。
「サイズ以外全部似てるね」
そう返すのはルイ。
「というよりも、同じ見た目だと思うのですが.........」
フェイの言うことはもっともだ。体表の模様に頭部の形、手の生え方まで一致している。
これは、上流に向かう以外ないだろう。
「俺は今日、この川の上流に向かうことにしたが、お前らはどうする?」
その言葉にルイは不敵に笑って、
「もちろん、ついていくよ」
フェイは、不安そうに、
「スガ様とルイちゃんだけでは少々不安ですし.........無茶をさせないためにもついていきます」
なかなかに不当な評価を受けているようだ。悲しいかな。私、泣かないっ!
「なんのせ、取り敢えずは朝飯だ」
あまり食欲は湧かないが、それでも飯は食わねばならん。後で腹減ると困るしな。
拠点に戻って適当な食材を出してフェイに渡す。
飯ができたら呼んでくれと伝え、死体とマウスをじっくりと観察した。
...............ウップ。
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飯はまぁまぁ食った。
装備もなんとなく揃った。
やる気も多分ある。
覚悟はできてる気がする。
つまり、準備万端。
いざ、未知なる探検へ!
元気いっぱい腹一杯気合いたっぷりで川沿いを歩く俺たちは、多分側から見るとすごい呑気に見えるんだろうな。
まぁ呑気ですけども。
歩き始めて2時間くらい経っても、俺たちのドキドキは止まらないぜ!
「いやー、探検って言うとすーごい子供ごころをくすぐられるよなー」
「ねー。僕もなんかワクワクしてるよ」
「気を引き締めてください、お二人共。何があるか分からないんですから」
ニヘニヘと表情のだらしない俺とルイに、フェイが注意を促す。
「フェイにはちょっと子供らしさが少ないんじゃないか? もっと年相応になろうぜ!」
「そうだよ! ガキはガキらしくしてればいいんだよ。ね、ガキ」
「うるせえクソガキ」
「なんだとこのガキー!」
「やーいガキガキー。おいガキ、つまりフェイ、お前もなんか言ってやれ」
「ガキガキうるさいです!」
うぉう。
いきなり怒るなよ。ビックリするじゃないか。心臓が止まったらどうする。再起動させる。
「そんなに油断していると、魔物などに足元をすくわれてしまいますよ? 何があるかわからないの.........⁉︎」
突然フェイが動きを止めた。何事かと見つめるが、一瞬後にはフェイは走り出していた。こっちに。
「スガ様危ない!」
俺を押し倒すように手を伸ばすフェイだったが、問題なく受け止める。衝撃を完全に受け止め、フェイは俺の胸に飛び込んでくる形となった。
わあ可愛いと思いつつ、裏拳で背後の化け物を粉砕する。
「〜〜〜〜〜!!?」
この世のものとは思えない悲鳴をあげ、顔を抑えてうずくまる化け物。振り返ってその姿を確認すると、それはーー
「ーーああ、こいつもか。なら近いな」
顔の上半分がなく、左手に目が、右手に鋭利な鉤爪を携えた骨と皮だけの化け物は、実験マウスの一匹が変質した形と同様であった。
要するに、川辺の化け物の同類である。
「だいぶ気持ち悪い形だよねー。何なんだろ?」
近づいたルイが、化け物の腹を蹴り飛ばしてとどめを刺した。しばらく痙攣していたが、すぐに動かなくなった。
「よく知らんが、まぁ、襲って来たら随時殺すスタイルなもんで。取り敢えず安全ではあるよん」
しかしねー。
何だろうねー。
はっきり言ってキメェバケモンだなぁ。
化け物の死骸を片手で持って眺めながら歩みを進める。視界の端でフェイとルイがものすごくいやな顔をしているが、しばらくは我慢してもらおう。
顔は陥没している。俺のせいだね。
口。並びが悪いが、人のそれと近い。
鼻。上半分はない。途中で無くなっている。
両手。左の目は空いており、未だに鮮やかだ。瞼はなく、そのうち乾きそう。多分ドライアイだな。右の鉤爪はかなり鋭い。俺の肌は傷つけられないが、試しに木に当てたらいい切れ味を発揮した。包丁に良さそうだ。
胴体。骨と皮だけ。人のそれと近い。
で、生殖器は無くて、色は灰色、と。
「生物としてどうなのこれ」
「正直なところ気味が悪いとしか言えませんよ。見た感じ人型ですが、体の仕組みがどう考えてもグチャグチャです」
解剖でもしてみりゃあ分かるんだけどなぁ。これ以上触りたくないし、ぶっちゃけ未だって指二本で頭にめり込ませて持ってる状況なんだよね。
もういいか。
「よーし、もういーらなーい!」
大きく振りかぶって〜〜、投げたぁ!
死骸は目にも留まらぬスピードで川に入り、巨大な水柱を立てて沈んだ。
「.........不憫」
ルイよ。真顔で言うな。
散々気持ち悪いって言っといてそれはずるいだろう。
そんなふざけた雰囲気のまま歩き続け、俺たちは川が通っている洞窟にたどり着いた。
川が中央を流れ、両はしに道がある。人が4人くらいは通れる幅なので問題はないが、洞窟からは何故だか不穏な空気を感じた。
「.........わかるか?」
「うん。コレは危ないね」
「私にも分かります.........なんて禍々しい雰囲気.........」
近づくにつれて倍増する異様な雰囲気。
入り口近くまで来れば、入る気など等に失せていた。
コレは流石に、な。
「す、スガ様.........」
「何ぞ?」
「あ、足元が.........」
足元?
見ると、フェイの足元には真っ白な魔法陣が現れていた。
罠か!
「フェイ! 足をどかせ!」
「出来ないんです! 体が.........!」
動かないのか! くそっ!
魔法そのものをぶっ壊すしか.........!
フェイの体に触れた瞬間、魔法陣が回り始めた。
ぐるぐる、ぐるぐる。
それは徐々に速度を速め、ただの円にしか見えないほどの高速回転になった時。
「くそっ、ルイ、手伝ってーー」
魔法陣が巨大化した。
俺たちを飲み込み、意識は真っ白に潰された。




