2-8 冒険者になりたい
後始末も終えて身が楽になった俺は、約束通りギルドに向かうことにした。運悪く、ギルド周辺には俺のクローンは行ってないようだから、比較的近いところまで転移してから歩いて行こうと思う。
でもさ、一ついい?
何処にあるんだろうね。ギルド。
まただよまたミスったよ。何処⁉︎ギルド‼︎
さっきと同じ展開だよ!
「ハァ、人に聞くか.........」
がっくりと肩を落としながら裏路地を抜け、ふと思う。
.........あれ?空気って、こんなに美味しかったっけ?
結構な時間匂いのきついところにいたからか、いざ大通りに出ると、空気の綺麗さに感動した。
素晴らしい!なんて素晴らしいんだ!
これが新鮮な空気!いや、もしかしたら違うかも知んないけども!
歓喜に打ち震えながら、深呼吸をする。
すー、はー、すー、はー。
......道を行く人に変な目で見られちった。
そんなに変なことをしているだろうか。
まぁいい。ギルドへの道を聞かねば。
近くにいた人をてきとうにつかまえて道を聞く。
話によると、ギルドは門から西の方にしばらく行ったところらしい。たいして関係ないけど、この国に来てから大通り以外行ったことねぇな。最初の店もこの通りにあったし。
俺はつかまえた人に礼を言って、門まで転移した。
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ギルドとは、一般的に冒険者ギルドを指す。冒険者ギルドでは、冒険者と言われるクラス制の会員のような者が依頼を受けたり、依頼を発注したり、冒険者になったりすることが出来る。
一口に依頼といっても、探し物や指導・教育、護衛など様々であるが、冒険者が好んで受けるのが、魔獣討伐である。
俺は全く見たことがないが、本来なら国璧の外側は魔獣が蔓延っているのだ。そうでなければ何故国璧など建てる必要があろうか。
それらの依頼は他のものよりも比較的報酬がいい。それは、命に関わるということもそうだが、それ以上に生活の基盤を支えているものが関わっているからである。
そう。魔石だ。
魔獣の体内にある魔石。魔獣の核である魔石。
その意味の分からん不思議石からエネルギーを抽出する技術が確立されたのが今から30年前。
ポレパリド・ペローとかいうやる気のなさそうな名前の男が発見したらしい。
それまで自動で何かを動かすなどというものはほとんどなく、唯一の魔道具も5日毎にに10人の手によってエネルギー補充が必要という非常に効率の悪いものであった。
しかし、この一般に魔力抽出技術というなんのひねりもない呼ばれ方をされている技術では、魔石の質や大きさによって使用できる周期が違ってくる。大きいものほど長く、質のいいものほど強いエネルギーを抽出できるのだ。
この技術は瞬く間に大陸を超え、世界中に広まった。
それからは、魔石灯を始めとし、様々な道具や施設が生み出された。それら全ての動力は勿論、魔石から抽出された魔力である。
話を魔獣討伐の報酬まで戻そう。
魔獣討伐には魔石以外に2つの役割というべきものがある。
1つ目、魔獣討伐による、旅の事故の未然防止である。いつかフェイが言っていたように、魔獣は獰猛なのだ。放っておいたら旅人や商人を襲ってしまう。それを冒険者が防ぐのだ。
2つ目に、美味いのである。魔獣の肉は、普通の動物に比べて格段に美味いのだ。魔獣というものは、牛であろうがウサギであろうが全部が全部肉食である。奴らは、人だけでなく、普通の動物も食うのだ。それにより、肉や栄養が蓄えられる。普通の動物より一回り、いや二回りは、ジューシーなのである。
さらに、魔獣の身体には魔力が循環している。魔石を取ったからと言ってその魔力がなくなることはなく、それらを人が食べることによって、魔力量の増大が期待できる。
そのため、料亭などにおいて、いくらか割高ではあるものの、魔獣の肉は人気の品なのである。
以上の理由から、ギルドが定期的に討伐依頼を出しているのである。
この依頼は元から報酬がいいのに加えて、ギルドが魔石と魔獣肉の買取をしてくれるので、合わせて一石三鳥のお得依頼なのだ。
冒険者が好んで受けるのも頷ける。
ちなみに、この報酬の元手は入国税と出国税から払われている。俺とルイも払ったのだ。銀貨2枚。まぁ、召喚したやつだが。
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以上、フェイたちと合流した俺がギルド内でギルド職員とフェイに教えてもらった話でした。
討伐依頼の報酬の事だが、入出国税から払われるのは、全ての国共通であるらしい。
よく出来てるよな。
合流した後俺たちは、冒険者になることを相談して決めた。
なぜか。金がないからである。ルイは、入国した時みたいに出せばいいじゃんと言ったが、良識ある大人な俺とフェイはそれではダメだと言い張った。俺は実はいちいち召喚すんのがめんどさかったからだが、言うまい。
先のアジトで金を強奪してくればいいと気づいた時には、事件現場に衛兵が現れていた。
そんなわけで俺たちは今、受付嬢のおばさんに話を聞いていた。
おいおいそこは美人のお姉さんだろって?
いたけどさ、フェイとルイに縋るような蔑むようなよくわかんない目で見られるんだよ。仕方ないじゃん。
今後の方針としては、ここである程度金を貯める。それから旅に出よう。具体的には、そりゃやっぱりしっかりがっつり大銀貨151枚。
「新米冒険者は皆、雑石クラスから始まります。そこから、赤鉄、青銅、真銀、霊金、聖白金と上がっていきます。十分な実績を提示して申請をするとクラスアップすることが出来ます。しかし、クラスによって受けられる依頼のランクが違いますので注意が必要です。雑石ならEのみ、赤鉄ならEとD、青銅はDとC、真銀はCとB、霊金はBとA、聖白金はAとSを受けることができます。報酬はもちろんランクが高い方が上ですよ」
6段階か。それなら、青銅か真銀まで行きたいな。効率良く稼いでいきたいしね。
「説明は終わりで......あっ!すいません。大事なことを言い忘れていました」
何だろう?武器かな?武器だよな。ビギナーに武器なしとか普通無理ゲーだしな。
「冒険者の方々が怪我をしたり死亡しても、当ギルドは一切の責任を負い兼ねます。ご了承ください」
武器じゃなかった。無理ゲーやらすのかこのギルドは。鬼畜ー!まぁ、俺問題ないしいいけど。
これから俺たちは冒険者として数々の依頼をクリアしていくんだ。目指せ!151枚!
そう、心の中で膨らんだ俺の気合は、
「ではこれから登録に入りますので、登録料として1人につき銀貨1枚を頂きます」
一瞬で萎んで消えた。
...............とうろくりょう。
やばいどうしよ。
僕金持ってないよ。
フェイの方を向くと、青い顔で首を横に振った。どうしよう。
しかしそんな俺たちの焦りを完全に無視する形でルイが言った。
「この人達お金ないからさ、あとで払うことってできない?」
このやろう!俺が思いついたけど言えなかったことをこうもあっさり切り出しやがってチクショウめ!マジ尊敬っす!
「できますよ」
「お前ちょっと喋んなそんなの出来るわけ出来るんですか⁉︎」
「はい。冒険者になる方には、金がなくて仕方なくと言う人もいますからね。そういう方には、即座に依頼に行ってもらうようにしています」
なるほど。そういうことか。納得だ。
ルイが薄い胸をはってドヤ顔をしている。ちょっとムカつくが、手柄をあげたのだ。褒めてつかわす。
頭を撫でると嬉しそうに顔を綻ばせた。フェイが羨ましそうに見ているが無視。
「ただ、それには当人の所持品のうち、合計で銀貨1枚以上の値打ちになるものををここに置いていって頂きます。冒険者になるだけなって、他国へ逃げる人もいますからね。その場合、それらをギルドが売却することになります」
結構えげつないね君ら。
「では、何を置いていきますか?3名ということで、銀貨3枚分のものをお願いします」
3枚か。そうだな...............。
「じゃあ、このリュックサックを置いていきます。ちょうど銀貨3枚のやつです」
「分かりました。では今から冒険者登録を始めます。登録が終わったらリュックサックを渡して、何か依頼を受けてきてください。終了した際に私に言ってくれればリュックサックと天引きした分の報酬を渡します」
「分かりました」
「では、こちらの水晶に手をかざして下さい」
おばさんが取り出した水晶に、俺、フェイ、ルイの順番で手をかざしていく。
水晶が光って、中からズッと、カードが出てきた。そこからかよ。
カードには、名前、種族、年齢、性別、クラス、あとよく分からん空白があった。
「あの、この空白なんですか?」
「それは倒した魔獣などが自動的に表示される欄です」
マジか。そんなことできんのかこのカード。
「魔道具ですから」
これも魔道具なのか。魔道具ならしょうがない。 あまり考えないでおこう。深く考えるなって、ヨシヒコも言ってたしな。久しぶりヨシヒコ。
「ちなみに持主が所持しているだけで少しずつ充魔されます」
充魔。充電の魔力verである。
「いろいろと説明ありがとうございました。あ、リュックどうぞ」
「どういたしまして。良い冒険を」
決め台詞だろうか。ダサい気もするが、突っ込まないでおこう。俺の感性がダサいのかもしれないし。
「じゃあ、行くぞ」
「はい!」「イエッサー」
意気揚々とギルドを出て行こうとする俺たちは、
「あのー、どの依頼受けるんですか?」
「「「.....................」」」
出鼻で挫かれた。
もうちょっとカームにいます。




