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1-1 青年の困惑

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 目を開けた。

 風が気持ちいい。

 寝起きの俺の頭が風に冷やされてまどろみから抜け出していく。


 寝てたか。

 昨日、バイトしんどかったしな。10時間も働かされてしまった。まぁ、残業代はちゃんと出してくれる人だから何の問題もないが。


 .........あー、太陽高ぇ。

 11時くらいかな。こんなに寝たのはどれくらいぶりだ? もう少しくらい寝ててもいいが.........いや、今日はアニメのイベントがあったはずだ!

 こうしちゃいられねぇぜ!


 スターンドアーップアーットザベーーッド!

 華麗にベッドから降り立つ俺!


 ...............ベッド?


 いやいや、違うさ。ベッドから起きるのは普通だな。だって俺ベッドで寝たもの。たまに廊下で起きる事もあるけどそれは置いといて。


 周囲を見回す。わぁ、素敵。

 すげー草原だ。青臭い。


 ハハハッ。ハハッ。ハッ、は?


 長期のインドア生活によって生まれた俺の白い肌から凄い勢いで冷や汗が流れる。

 念のため言っておくが、我が家は草原のど真ん中に家を建てた覚えはない。そんなにアホじゃない。

 というか周辺に建物がねぇ。

 木しかねぇ。あとベッド。


 あ、木たっか。

 高ー。


 周りの木も全部同じような、縦に伸びたカシの木みたいなのだ。つーか本当に高ぇ。何これ。100メートルあるんじゃないの?


「グルァアアアアア!!」


 ...............気のせいかな。


 さてと。

 どこよ、ここ。

 こんなサバンナみたいなところが日本なわけがない。もしかしたらあるのかもしれんが、自宅の近所ではない。


 見た感じ何もないが、本当になんもねぇの?

 個人的にはせめて人のいるところとか、欲しいっつーか何つーか。

 高台的なものもここら辺には.........。


 あるじゃないか。

 この馬鹿高い木があるじゃあないですか。

 頂上なんて行っちゃえば折れるかもだけど、そこまでいかなくとも十分周囲は見渡せる。


 さてと、登るか。枝の位置が高い。ジャンプすれば届くか。

 体を伸ばしーの、肩回しーの、首鳴らしーの。


 せーのっ


「ジャァァァァアアアアあああああああ!?」


 ジャンプした。足元爆散。とてつもない勢いで上へ上へと体が上がって行って怖いっつーか何つーか。


 いや待てヤバイヤバイ!


「あああああああああああああ」


 お、木、抜けた。

 何でだ!

 目測では100メートルくらいあったんですけど!?


「ああああああああぁぁぁぁ.........あ?」


 およ? 止まった。

 あ、そっか。まぁ、止まるよな。

 だって俺ジェットエンジン付いてないし。

 舞○術も使えないし。そりゃそうだ。

 じゃあ、これからどうなるか?


 落ちるんだよ。


「ぁぁぁぁぁぁああああああ!!」

「ギャオオオオオオ!!」


 あー、うるさいうるさい。それどころじゃない。


 はるか下にさっきの木が見える。豆かよ。


 あ、これ死ぬやつだ。

 これは死にますね。間違いない。

 そう思ったら身体から力が抜けた。

 

 ああ、俺の人生短かったなあ。

 童貞卒業出来なかったなぁ。

 俺が死んだら天使が俺を運んでくれるだろう。

 きっと俺は天国行きだ。悪いことしてないもん。いい子だもん。頼むよ天使達よ。

 私の体をお空に飛ばしておくれぇぇえええッ!


 ............ん?


「............あれ?」


 目を開ける。何だこれ。

 死んでないですね。おかしいな。

 浮いてますね。空中に。


 なんか浮けたんですケド。


「..................」


 ちょっと右に行きたいなーとか思ってみたりーな感じー.........。


スーー


「動いた!スゲェ!」


 まじかー。スゲー。

 どうやら俺は飛行スキルを手に入れたようだ。彼女ができることよりも凄いかもしれない。


 これはもしかしてアレか?

 あのさ、剣とか、魔法とか、魔王とか約束されし勝利の剣とか諸々ある、あのデンジャラスでユーモラスでファンタジーでデンジャラスデンジャラスなやぁつ。


「...............」

「ゴォアァァァァアアア!!」

「うっさいわ!」


 分かったよ! 見にいきゃいいんだろこの見られたがりさんめ!

 当初の目的を果たすべく、俺は上に飛んでいく。

 

 分かってんだよ。何となくそうなんじゃないかなーって思ってんだよ!

 さっきの爆音アレだろ? ドから始まってンで終わるやつ。4文字のやつ。○カベンじゃなくて、ドルト○でもないアレ。


「.........はぁ、マジか」


 草原は途中で荒野に変わり、岩と砂の世界が広がっていく。

 そこに叩きつけられる業火。炎が消えた後には、人や岩が溶けてドロドロとしたものが転がっていた。


 そして、残骸を覆う巨大な影。

 明らかに5トンは越しているだろう緑色の巨体が悠然と宙を舞っていた。

 大きく広がる翼。

 長い尻尾。

 爬虫類のような相貌。


 わーい、ドラゴンなのだー。

 チクショウめー! かーっくいー!


 遠くやの方で一匹の巨大なドラゴンとたくさんの武装した人たちが戦っていた。


 確定。


 異世界だわここ。



*****♪***♪♪*******♪*****


 

 取り敢えず俺はさっきの場所に戻って来た。


「何ということでしょう。マジで」


 木が、その、何といいますか.........抉れてたり?


 地面も凄いことになってた。

 僕このクレーター初めて見るんですケド。

 さっきあったっけ?

 無かったよね?

 ベッドひっくり返ってるし。

 木の根っこが深いとこまで見えてんじゃん。


 そっか。そっか。


 構え!

 腕を引いて.........掌底っ!


ブワァァァァ


 前方にあった木が大きく揺れた。

 ただの掌底で台風レベルの突風が出るようです。

 強いなー、俺。チートレベルっすなぁ。日本じゃ考えらんねぇぜ。


 .........どれくらい強いんだろうか。

 そりゃあ僕だって男の子ですし。自分が強いとなれば、出来ることの確認とかしておかないと気になって朝も起きれないし?


 取り敢えず走ってみようか。


「.........おお」


 案の定地面が抉れて、俺の体は10メートル先へ移動した。

 転移と言っていい速さだ。

 驚くべきは俺の認識が追いついていることだろう。動体視力も上がっている。


 俺的には、もっとスマートなのがいいな。

 『フッ』って消える感じにさ。

 アイワナビーNINJA。


 試しに足の裏で地面の硬さを確認するようにしながらスタートしてみる。音はせず、さっきまで自分がいた場所に軽く埃が立っていた。


 よし! 今日から拙者も中忍でござる!


「そうじゃねぇぇぇえええ!」


 そうじゃん。遊んでる場合じゃ無いじゃん! 


 あー、どうしようか。

 取り敢えずは自己確認だ。


 なんか忘れかけてたが、俺は東 清。

 だいぶ良い大学への進学が決まって最近調子に乗ってた高校3年生.........来週入学式だよチクショウ!

 あーもう、ふざけんなよー。どれだけ頑張って勉強したと思ってんの?

 誰だよ俺呼んだの。


 ほんと誰だよ!


 はぁ、ダメージでかい.........俺の1年強の苦痛の日々がぁ.........はぁ。


 取り敢えず、来週までには帰れそうにないな。いや、知らんけど。

 ハードルが低いと絶望が酷いからな。拍子抜けするだけな分、高い方が絶対にいい。


 俺は異世界に転移した。ここが日本じゃないって事はバカでも分かるだろう。

 バカじゃない俺はもちろん分かる。


 ここで問題になってくるのはこの世界での俺の立場だ。

 別に1番じゃないが、周囲に何もない状況なんだからそれくらいしか考えることがねぇ。


 例えば、俺がこのまま人里に行ったとする。

 何らかの理由で騒がれる。

 面倒くせぇぇぇええええ!

 こういうパターンがない事もない。


 だが、確認する術がないんだよなー。


 あ、そうだ。さっきの戦場に行ってみよう。人いたし。

 ドラゴンは.........会話通じるかなぁ?



*****♪***♪♪*******♪*****



 闘いは終わってました。

 ドラゴン強ぇ.........。


 うひぃ、人の焼死体だ。真っ黒だぜ。

 完全に焼き尽くされているのか、嫌な臭いが酷い。骨の髄まで炭化しているようだ。

 なんまんだぶ。なんまんだぶ。


 あ、でも、人間も結構ダメージ与えてるっぽい。緑色の鱗がちょくちょく落ちていた。

 少し拾ってみると、ものすげぇ硬い。あと軽い。折れない事もないけど、俺かなり力ある感じだし、それでここまで耐えるか。


 えーと、

 馬鹿でかい体。

 硬い鱗。

 空を飛ぶ。

 口から火を吐く。

 .........えげつねぇ。コレがゲームならマスター殴られてるぞ.........。


 しかし、何だろうな、この気持ちは。

 勝てそう。


 .........いやまぁ、そりゃあ場合によっちゃ勝てるさ。だって俺、掌底で突風が起こるもの。

 そういうことではなく、その、何というかーー


 ーードラゴンとして勝てそう。

 言ってしまえば、あのブレス撃てそう。


 ..................。


「や、まぁ多分無理だけどさ。やるだけやって、それでいいからさ。出来なかったら普通にそれだけだし?」


 誰にしているか分からない言い訳を並べながら、俺は軽く足を踏みしめた。


 イメージしてみる。

 先ほどのドラゴンを。


 口から吐かれる高温の炎。

 腹の奥が燻るように熱くなる。

 ただ吐くだけではダメだ。纏まった炎。圧縮され、一方向に放出される、赤い暴虐。


 身体中から集めた熱が、腹の中で微振動を起こすような感覚がきた。


 大きく息を吸い込み、一気に吐き出した。


ビィィィーーーーーーーン


 先ほどのドラゴンよりも強力なファイアーブレス........ブレス?

 ブレスと言うより、レーザーだな。コレ。

 何故か真っ白。レーザーの果てが見えない。


 開いた口が塞がらない。いや、塞いだら危ないんだけど。

 いまだに出ている。止まる気配が全然ない。


 どうしようコレ。

 どうやって仕舞おう。


 頬を掻きながら首を振る。

 その時、遠くにある木にレーザーが衝突した。


ジジジ、ジジ、ドォォォォオオオオオン


 焦げるような音。そして大爆発。

 チュインチュインと音を立ててレーザーは消滅した。


 この時唖然として、座り込んだ俺をバカにできる人います? いたら殴る。全力で。

 半端ない力をいきなり手に入れたら、みんなこうなるだろう。


 .........しかし、自分で出来るかもねーとか言っといて何だが、何で出来た? まぁ、何をどう考えても科学技術とかそこら辺の物ではないことは確かだ。コレが科学なら、普通に一人で国とか滅ぼせる。

 というか、今のは本当にブレスだったのか? イメージの元にしたやつとの結果の差が激しくてイマイチピンとこない。

 真っ白という事は、あのレーザーは超高温だったという事だろうか。

 長時間発射し続けていたことは、恐らく俺の魔力やら何やらが多いせいだと思うが.........もしかして俺って魔力量もチートだったりするのだろうか。


 だとしたら俺、この世界で本当に最強格なんじゃないの?

 マジで?

 あ、どうしよう。ちょっと嬉しい。


「...............人族?」

「!?」


 ビックリしたー!

 へ、何ぞ!?

 誰ぞ!?

 自分について深く考えていたら、いつのまにか後ろに人がいてすごく驚いたー!


 急いで一歩二歩距離をとって、相手を観察した。


 いや、この人本当に誰だよ。顎に手を当てて何かを思案している。

 見た感じ、年齢的には中学生かそこらだろう。背は高くないが、細身で脚も長い。胸は普通に見える。控えめにいって俺にとっての理想的な女体である。

 そしてその上には小さな頭部が乗っかっている。物凄い美人さんだ。可愛い系の顔で、あどけなさが残っている。


 誰なんだろう、この子。

 第一異世界人発見の筈なんだけど、向こうからの不意打ちのせいで半端なく警戒してしまっている。

 出来るなら、このまま彼女に色々と聞きたいことがあるんだが.........。


「えーと、あの〜、すいませぇん。私、東 清と言うものなんですが〜、ちょ〜っとお名前伺ってもよろしいでしょうか〜?」

「人族のはずが.........いや人型の?.........でも尻尾が.........魔力が足りてないだけ?」


 あれ、無視!?

 まともなファーストコンタクトで無視キメやがったこの女!

 俺の気持ちが削がれたらどうしてくれるんだ!


「それなら......よし」


 少女は何かの結論に達したようで、一度頷いてからこちらに歩いてきた。

 そして俺の胸に手を当てる。


「? 何、セクハラ?」


 少女が何か力を込め始めた。

 何だ? 物凄い頑張ってる.........。


 え、オイ、待て待て。

 顔真っ青だぞ。

 危なそう。


「な、なあ。大丈夫かああああぁぁぁアァァアァアァア!?」


 !!!?!?!??!!?!??!


 熱い! 頭が熱い! 焼けるように痛い!


 何だコレ! 何だ、クソッ!

 立っていられない。

 目がチカチカする。

 割れそうだ。

 視界の端で少女がへたり込んでいるのが見えたが、気にかける余裕さえない。


「あ、ぁああがあぁあ、ぐ、がああぁあ‼︎」


 ああっ、まだ痛ェ!

 だんだん強くなってる!

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!


「ぎゃああああああああああああ!!!」


 そして痛みが最高潮に達したとき、額の両端に違和感が生まれる。それを区切りに、俺は意識を手放した。

 初めての投稿です。至らない点が多々あると思うので、ご指摘よろしくお願いします。

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