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お狐さま、働かない。  作者: きー子
公教会事変
32/94

三十二話/反抗開始

「……早まったことを」


 公教会支部長室。

 キリエ・カルディナは眼鏡を拭きながら物憂げにため息をつく。


 外からは熱狂の声が迫りつつある。本当なら彼らはもっと早くに押し寄せていたはずだった――キリエは聖堂騎士団に降伏するよう何度も促していたからだ。

 再三の命令にも関わらず、聖堂騎士団は頑固なまでに抵抗を続けた。この程度の相手に屈するわけにはいかないと、自ずから戦意を振り絞り。相手には彼がいるにも関わらず。


「何を悠長なことを! 枢機卿猊下、早くここを出て下さい! もう敵勢はすぐそこにいるのですよ!?」


 金髪碧眼の少年――キリエ枢機卿付きの祓魔師、アルマ・トールが対面で急き立てる。

 しかしキリエはその言葉を一顧だにしなかった。


「残る皆の者に命令は行き渡りましたか?」

「……は、はい。勿論です! ですからッ」

「そう。……良かった」


 キリエ枢機卿は眼鏡をかけなおして安堵の息を吐く。

 逃げたいものは裏口から逃げるように。そうでないものは無抵抗で相手に従うよう命じた。

 相手が蛮行を働かないとも限らないが、その可能性は低いとキリエは見る。相手にとって重要なのは、飽くまでもキリエ枢機卿とその親派。他の信徒にまで嫌われたら支部の運営が立ち行かない。それは相手の本望ではないだろう。


「あなたには最後までご一緒させてしまいました。しかし、この期に及んで私に付き合う必要も、付き合わせるつもりもありません。今この時をもって、あなたを補佐官の任から解きます。今ならまだ間に合うでしょう。お逃げ下さい、アルマ。そしてあなた方も」


 キリエは扉の向こうで控える二人の祓魔師を一瞥する。彼らはここしばらく、キリエの護衛を務めてくれていた。しかし、敵兵が大挙して押し寄せるとなれば抵抗は無意味だ――もしくは害悪ですらある。


「馬鹿なことを仰らないで下さい! キリエ枢機卿、あなたこそ逃げ延びなければならない御人でしょう! 奴らに捕らわれたらいったいどのような目に合わされるか!」

「それは今となっては問題ではありません。私がここから逃げ出せば、かえってこの街に混乱を招くでしょう」

「あなたほど情勢の均衡を保つために心を割いた方など他にいないのですよ!? この数年、聖堂騎士団が出動する機会すらあり得なかった! それが……彼らがトップの座に着けば、もはや街の安定は失われる……!」


 アルマは机に拳を叩きつける。キリエの前でありながら抑制しきれない感情が噴出する。

 それでもキリエは彼の言葉に揺らぐことはなかった。


「失われる? ……いいえ、すでに失われた後なのです、アルマ。私はすでに失敗した。……ユエラ・テウメッサ。やはり難物と言わざるを得ませんね。私は最善の選択を採り続けたつもりでしたが……」


 積極論を唱えるものからは日和見的とも揶揄された穏健な対応。それは今でも間違っていたとは思わない。

 だが、理解を得ることはできなかった。その点はまごうことのない自らの力不足だ。


「私は彼らの軍門に降ります。もし私が逃げ出せば、彼らは私を捕えるまで止まらない。挙句には公教会という組織を二つに分断することにもなりかねません。……私の身柄ひとつで収まりが付くのなら、安い代償だとは思われませんか?」


 キリエは淡々と自らの立場、そして考えを述べる。

 結局のところ、キリエはこの期に及んでも揺るがなかった。彼女はあくまでも安定と均衡を保つことに腐心した。その方針が政敵を利し、自らを追い落とすことになろうとも。


「……っ……!!」


 アルマは下唇を噛みしめてかすかに震える。

 いつも傍に付き従ってくれていた彼のこと。キリエの考えはよく理解しているだろう。その上で、アルマは納得しかねていた。

 つまりは感情の問題だ。


「納得が必要です。……私の身柄を委ねさえすれば、それこそが彼らの立場を確固たるものにすると納得してくれるでしょう。あまり気の進まない選択ではありますが……」


 聖堂騎士団の指揮権。武力行使の容認。それらを決する権利はキリエのものではなくなる。

 だが、仕方ない。


「……俺は納得いきません」

「納得する必要はありません。どうか、飲み込んでください」


 それが自分の力の限界だったのだ。

 いくら理詰めで説得することを得意としても、感情的な納得を与えることまではできなかった。相手が政敵であれば言うに及ばず、自らの側近さえ納得させることができないのだ。これが無能の証でなければ何であろうか。

 ――――遠くの熱狂が近づいてくる。


「……さ、アルマ。早く出なさい。これは枢機卿としての命令です。これに逆らうことはあなたにはまかりなりません」

「……っ!!」


 アルマは肩を落とし、俯き、そして背を向けた。180suもある背丈がやけに小さく見える。

 彼は最後に一度、ぽつりとちいさく呟いた。


「キリエ枢機卿。あなたは、彼女の……ユエラ・テウメッサの排除に賛同なさるのですか?」

「平穏、秩序、安定、均衡。それらのためなら、私はより良い手段を選ぶでしょう。……もはやその権利が与えられることは、私には無さそうですが……」


 自分は彼女をこの街に受け入れることを選んだ。彼らは排除することを選んだ。

 キリエの信じる最善とは異なるが、街に秩序をもたらすためなら……受け入れることもまた、仕方がないと考える。


「かしこまりました。……今までありがとうございました、キリエ枢機卿。主の導きやあらんことを。あなたには必ずや迎えがあることでしょう」


 アルマは足早に歩み去る。扉の向こうに控えていた二人の祓魔師も連れ立って。


 ――――これで良い。


 無事に脱出できることを祈り、キリエは椅子に深々と背をもたせかかる。

 華奢な肩にどっと押し寄せる疲労感。しかしながら、休む暇もないらしい。ほんの五分も経たないうちに、支部長室の扉が荒々しく叩かれた。


「ここだぞ!」

「気をつけろ。護衛がいるはずだ」

「一気に突入するぞ」


 思わずキリエは苦笑する。ここには痩せた女が一人いるばかりだというのに。

 程なく傭兵が扉をぶち破って突入する。彼らは即座に周囲を見渡し、そして呆気に取られたように目を丸くした。


「……あ?」

「誰もいねえ?」

「いや……」


 傭兵の一人がキリエを指し示す。

 キリエはちいさくため息をついて彼らに言い放った。


「この騒ぎの代表をお呼びなさい」

「……は?」

「聞こえませんでしたか。この騒ぎの首謀者に今すぐお伝えなさい。私は大人しくあなた方の支配下に降ります。ですから、もしも何の権限もなしに他の信徒を拘束しているようでしたら、今すぐ解放しなさいと」


 キリエの淡々とした宣言に困惑する傭兵たち。なぜ自分たちが目の前の女に命令されているのか、全く理解が及ばないように。

「早く!!」

「はっ……ハイ!!」


 キリエの剣幕に圧倒され、傭兵たちは慌てて退出した。

 はぁ、とちいさくため息をついてキリエは窓の外を見る。陽が穏やかに傾きかけている。

 しばらくして、護衛を引き連れたヨハン司教が支部長室に入室する。隣には彼も控えていた――アルバート・ウェルシュ。


「これはこれは、キリエ枢機卿猊下。大人しく縄に付かれるとは、実に殊勝な心がけですな」


 まるで貼り付けたような笑みを浮かべるヨハン司教。彼が合図するとともに、護衛らがキリエの周囲を取り囲む。


「私をどうなさるおつもりで」

「お聞きしたいのですかな?」


 男の口角がにやりと吊り上がる。


「いえ。特には」


 キリエがゆっくり立ち上がりながら言う。これにはヨハンもわずかに鼻白んだ。

 ヨハンは一度咳払いし、気を取り直して弁舌を振るう。


「……枢機卿猊下はお疲れのようでしたからな。しばし、懲罰房にて静養して頂くことと致しましょう。支部長としての業務は私が滞りなく遂行させていただきますのでご心配なきよう。事がすんだあかつきには、そうですな……一介の女人としての幸福と手になさるというのはいかがかな?」

「……言葉が過ぎるのではないですか、ヨハン司教」


 そこに口を挟んだのはアルバートだった。


「おや、これは失礼をば」


 やり取りの間にもキリエは護衛らに縄を打たれる。両手首を後ろ手に戒められた格好だ。

 アルバートはその姿を痛ましげに一瞥する。


「どうかご理解を頂きたい、キリエ枢機卿。これは必要な措置なのです。今に迫る脅威に対処するための」

「――確固たる対策があるというのですね?」

「……それは、いかなる意図か?」


 護衛たちに引っ立てられながら、なおもキリエは舌鋒鋭く言い放つ。


「少なくともクラリス監察官の報告によって得られた情報の限り、彼女の排除に成功するという確証はどこにもありません。それとも……聖堂騎士団の囲いとあなたの力さえあれば必ずや倒せる、とでもお思いですか?」


 それを聞いたアルバートははっとして口をつぐむ。ヨハンは負け惜しみとでも思っているのか気にもかけていなかったが。


「あなたが精霊に愛された血族であることは疑いようがありませんが――だとしても、思い上がりはなはだしいでしょう。……私は、あなたの英雄願望に付き合ってはいられない」


 説得を考えていたからこそ、かつては言うに及ばなかった一言。

 キリエはそれを吐き捨てるように口にする。


「勇者殿に失礼な口を効くな!」

「早く歩け!」


 護衛らに急き立てられ、縄を引かれながらキリエは地下まで連行される。

 後には顔面蒼白のアルバートと、ほくそ笑むばかりのヨハンが残された。


 ◆


「……厄介なことになったのう」


 ユエラはリビングの椅子に深々と腰を下ろし、嘆息する。

 傍らにいるのはテオ一人。リーネはスヴェン邸の警護に戻らせ、アリアンナはフィセルが責任をもって連れ帰った。


「いかがなさいますか。おそらく、ユエラ様の手配が数日……二、三日中に回るのではないかと考えられますが」

「……足りんな。全く情報が足りん。取りあえず守りを固めるとして、先手を打つにはそれまでに動き出さねばならんが……」


 リーネの伝えた情報は次の通り。


 まず、公教会が各有力者の連合軍による攻撃を受けたこと。

 原因は現在のティノーブル支部長、キリエ・カルディナ枢機卿に対する不満が大きいこと。

 革命の旗印であるヨハン司教は、ユエラの積極討伐を掲げる急進派であること。〈勇者〉の末裔アルバートとは、お互いの利害の一致から結びついたのではないかとのこと。


 戦闘自体はほとんど無く、代表者同士による一対一の決闘によって決したようだ。それもずいぶん勝手な話だが、被害を最小化するためにはやむを得なかったか。

 ユエラはちいさく鼻を鳴らし、ソファに横たわっている彼女を一瞥する。


「聞いておったろう、おぬしも。そうやって呆けておる時間は無いぞ?」


 クラリス・ガルヴァリン。

 あの後、意識を取り戻した彼女は、虚ろな瞳で見るともなく宙を見つめていた。よほど衝撃が大きかったのだろう。彼女は言うなれば中立公平の人。急進派の方針とは相容れない立場だろう。


 しかしクラリスは、アルバート率いる探索者パーティの一員だ。生死をともにした仲間である。それに背いてまで新体制に反目する意味はあるのか。


「……私の敵になるというのなら、この場は特別に見逃してやろう。なにかと巻き込んだし、世話になったこともあるでな。だが、次に会ったときは……敵同士であろうな」


 ユエラはすぅっと目を細めて彼女を一瞥する。クラリスはゆっくりと瞑目し、言葉もなく俯くだけだった。


「彼女の記憶を漁ってはいかがですか」

「……まぁ、それも悪くはないがな。こやつの記憶はあまり当てにしとうない」

「人を見る目などは確かかと思われますが……」

「その点は信用が置けよう。だが、こやつは、ちと――――美点を探し当てるのが上手すぎるのでな」


 客観的かつ誠実で、見る目も確か。だが、彼女を前にした人物は、誰であっても思わず襟を正してしまうだろう。彼女という眼を通しての評価は、ある種、あまり当てにしてはならない類のものだ。


「自分の足で集めたほうがまだしも良い、ということですか」

「……またおまえに頼ることになるかのう。後はスヴェンも情報を掴んでおると良いが」

「どのような情報が必要でしょう。なんとなれば、私にも分かることがあるかも知れませんので」


 言いながら、テオはユエラの前にカップを置く。砂糖が多めに入った暖かい紅茶。

 実によい味わいである。ユエラは大いに賞賛しつつ、糖分によって思考を巡らせる。


「……まず、連合軍の規模。聖堂騎士団とやらもそうじゃな。どういう指揮系統かも把握しておきたい。……後は、アルバートとやらが現実的にどの程度の戦力を有しておるかだが……」

「単体戦力でしたら問題にもなりません。必ずやユエラ様の元に首をお届けしましょう。そしてご褒美をください」

「まあ、そう慌てるでない。捕まえて聖職者連中に引き渡せば恩を売れ――――なんじゃ褒美って」

「一度、ユエラ様のしっぽに顔をうずめて思いっきり息を吸い込みたいのです」

「……ちと臭うのではないか?」


 ユエラは少し頬を赤くする。遠くから分かるほどではないが、直に鼻をつければ当然獣臭さは感じるはずだ。


「それが良いのです」


 テオは真顔で拳を握りしめながら力説する。

 なんだかわからないがものすごい説得力だ。


「まぁ、それは置いといてだな――」

「ユエラさん」


 ――と、その時。

 クラリスは不意に身を起こし、じっとユエラを見つめていた。


「どうした。……身の振り方は決まったかの」

「はい」


 ユエラがピンと耳をそばだてて問いかけると、クラリスは決断的に頷く。もはやその目に迷いはない。虚無はどこかへと立ち戻り、瞳には金彩の光が宿っている。


「ユエラさん。私に、あなたを、手助けさせてください」

「……正気かえ?」


 その答えに、ユエラですらもかすかな驚きを覚える。テオの表情がにわかに警戒してこわばる。

 しかしクラリスの答えは変わらない。


「武力による権力の簒奪。いかなる理由があろうとも、それを是認するような真似は私にはできない。まして、いたずらに恐怖を煽るような行為があればこそ、なおさらです。真にユエラさんを脅威と見なすならば、確かな証拠によって人々を認めさせるべきなのです」

「だが、実際に認めたやつがずいぶんおるのではないかえ?」

「…………認めたくはない事実ですが、先日からユエラさんの周囲には襲撃が相次いでいました。彼らが利害の一致のために相乗りしたであろうことは想像に難くないでしょう。そうなればもはや、武力を振るうに足る正当性などどこにもありません」

「おぬしの仲間と敵対することになっても、かえ?」


 その一言で、クラリスは刺されたような苦痛の表情をあらわにする。

 それでも、クラリスの答えは変わらなかった。


「構いません。……仲間として彼を問いただすのは悪手でしょう。ヨハン司教が噛んでいるとなれば……内部の反乱分子など、簡単に隠されてしまいます」


 まさにキリエ・カルディナ枢機卿がそうなったように。

 なら、とクラリスは言葉を続ける。


「ならば、私は、敵となって立ち塞がることを選びましょう」

「言っておくが、私はおぬしの気持ちに配慮などしてやらん。必要であれば死んでもらうぞ」


 ユエラは容赦のない言葉を吐くが、クラリスはもはや何も言わずに首を振った。

 もっとも、〈勇者〉の血族というだけでそれなりの価値はある。殺すよりは捕らえて利用したほうが恨みを買うこともない。


「左様かえ。……なら私はもう何も言わぬよ」


 ユエラは鼻を鳴らしてちいさく笑う。灰毛のしっぽがたしたしと椅子を叩く。


「とはいえ、〈勇者〉の血族を殺めることには相応のリスクが存在します。一族は聖王国にてなお健在でしょうから。最終目標をどこに定めるか、によりましょう」

「七面倒臭い奴らよ……まぁ、目的は簡単だ。要は元の体制に戻してやればそれで良い。あやつが生きておったら話は早かろうが……」


 公教会ティノーブル支部長、キリエ・カルディナ枢機卿。

 査問委員会で一度見かけたことがある。眼鏡がよく似合う、やけに落ち着き払った綺麗な女――彼女が無事でさえあれば。


「救出作戦でしたら、侵入は私にお任せを」

「繰り返すが、生きておったらだぞ」

「……可能性は低くないと思います」


 ぽつり、とつぶやきを零すクラリス。


「ほう。何か理由でも?」

「ええ。今回の件でキリエ枢機卿猊下は支部長の座を実効的に追い落とされたのですが……つまり、正式に移譲する手続きが行われたわけではありません。現在はヨハン司教が実効的な権利を掌握しているのみの状態です。全信徒を納得させるために、つまりは手続きを踏むために――必ずやキリエ枢機卿は生かされているはずです」


 クラリスは確信的に断ずる。いつになく力強い物言いは、それだけの自信の現れでもあろう。


「……筋は通るな。願望でなければ良いが」

「兎にも角にも迅速に動くべきかと。それこそ、手続きが済んでしまってからでは何もかも手遅れになりかねません」


 ……今回ばかりは私が出るしか無いか? テオの進言を受けてユエラは思う。

 面倒臭いのは確かだが、それでテオを失うことにでもなれば泣くに泣けなかった。


「聖堂騎士団には動揺が広がっているかと思います。突くならば――」


 そこ、とクラリスが言いかけた瞬間だった。

 不意にどんどんと扉が何度も力強く叩かれる。


「なんだ、今日は千客万来だのう……?」

「見てまいりましょうか」

「いや、良い。私も出よう」


 結局、三人揃って玄関口へ向かう。

 すでに時は夕暮れ。このような時間に来客もあるまいに。


 テオが扉を開けると、そこにいたのは黒の法衣に身を包んだ三人の少年少女だった。後ろには少年と少女が一人ずつ。先頭に立つ一人の少年は馬鹿に背が高い。


「ここが、ユエラ・テウメッサ殿のお住まいに間違いありませんか」


 先頭、金髪碧眼の少年が静かに問う。

 ――彼は敵か、あるいは。


「違いない。私がユエラだ。おぬしは?」


 そう答えると、彼はその場で膝を突き、頭を垂れた。

 額が地面にも届かんほどに。


「俺は……アルマ・トールと申します。キリエ枢機卿猊下の付き人を任じられておりました。どうか、ユエラ殿――――キリエ枢機卿をお救い願えませんか」


 後ろの二人もまた同様に膝を突き、懇願する。よりにもよって、彼らにとっては憎むべきであろう怪物に。


「……ほぉう?」


 ユエラは掌で顎をさすり、愉しげに二尾のしっぽをくゆらせた。


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