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片石三尉再び

 防衛庁を震撼させたテロリスト事件も片付き、平穏を取り戻したゲーム内で一人不満を爆発させている者がいる。


「くさかちゃん達は、すーぐ私の事を除け者してさー、みんなで帰還したかと思ったら私だけ帰還しててさー、追いかけようとしたらみんなログアウトしちゃうしさー」


 ひろみはお気に入りのレア武器『白頭山一号』を抱き枕にして、ゲーム内のセーフティゾーンで拗ねていた。


 草鹿隊のゲーム内での風除け的立場であるひろみは、少し頭の残念な出来である事から、情報漏洩の危険や詮索等も無い誠に都合の良い女となっているので、草鹿的には生かさず殺さず利用する腹積もりであったが、ここまで面倒臭いと流石に辟易として来ていた。


「福田……撃ち殺していいか?」


 小声で草鹿が呟く。


「隊長、短気はいけません」


 猫型機関銃を腰だめに構える草鹿を福田三尉が嗜める。


 現在草鹿達がいる場所はセーフティゾーンであるが、HPの減少はしないだけで痛覚はアクティブになっている状態である。


「仲間外れでさ、一人ぽっちでさ、うん……解っているの……私ってホラ、理解されにくいから、でも寂しいって感覚はあるの、誰にも理解されなくってもね……」


 三点リーダーを多用しまくり、チラチラと草鹿達を横目で見るひろみ。


「隊長、発砲許可を……」


 珍しく福田三尉も苛ついた。


 草鹿隊の面々も関わり合いになりたく無いらしく、各々武器手入れと称して猫とじゃれ合ってる始末だ。


「ウザいウザいと思っていたが、ここまでウザいと名人の域に達するな」


「酷い!」


『白頭山一号』を抱きしめながら、草鹿の足下にゴロゴロと転がり寄り、再度どれだけ寂しかったのかを語りだす。


「わかった……もう勘弁してくれ、何が望みだ?」


 草鹿の心がとうとう折れた。


「なんでも?」


「ああ、なんでもだ」


 ひろみが「ぱあ」っと笑い、途端に機嫌を直す。


「隊長……」


 対照的に福田三尉がウンザリとした。


「んとね、んとね、沢山人を呼んで、くさかちゃん達全員でお遊戯会をやって、みんなの目の前で「ひろみお姉さん大好き!」って言って欲しい!」


「死ね!」


「酷いよ! お姉さんを騙したの? また騙したの?」


 ひろみのこの上無いウザい願い事を、一言のもとにはねつけた草鹿は部隊撤収の準備を始めた。


「まったく、昨日は昨日で散々な目に遭ったのに、今日もこんな事じゃ訓練にならん」


 草鹿の携行武器であるふてぶてしい顔付きの猫をケージに押し込み、ふと副長である福田に視線を移すと何かを考え込んでいる。


「福田、却下だ」


「隊長、まだ何も言ってません」


 不穏な空気を察した草鹿が福田に対してクギを刺す。


「隊長、考えて見たんですが」


「考えるな感じろ」


 けんもほろろに意見を聞こうとしない草鹿に、福田は話を続ける。


「先程のひろみの提案を上手く利用する事で、昨夜の様なテロリストの再発を防げるのでは無いかと思うんです」


「囲炉裏をテロリスト呼ばわりするな、テロリストが暴れるぞ」


 囲炉裏をテロリストとして部隊を動かした張本人が、福田を嗜める。


「まあ、それは置いておくとして、先程ひろみが提案した催しを開く事により、スパイの炙り出しが可能になるのでは? と考えたのです。不特定多数のプレイヤーよりも、餌に釣られた連中の方が確率は高いので、根こそぎ引っ張れるのではないでしょうか?」


 前日に技官が限られた時間指定で、泣きを入れた様子を思い出しながら反論する。


「集めた人員を片っ端から調査するとしても、時間がかかり過ぎやしないか?」


「継続的に技官を増やすのは人事的に無理でも、限られた日にちと時間を指定するのであれば、その日だけの技官の人員補給は難しく無いかと思われます。まあ、助っ人技官ですね」


 福田に提案される作戦内容を頭の中で練り始める。


「情報の流出に対しての対策はどうする?」


「現在我々は『お兄ちゃんクエスト☆陸コレだいさくせん』を遂行中ですので、どちらにせよ認知度は高まる一方ですので、今更イベントの一つや二つで隠密性は変わらないかと思われます」


 目立つ容姿を誤魔化す為に苦肉の策として銘打った『お兄ちゃんクエスト☆陸コレだいさくせん』は草鹿隊の認知度を不動のものとし、草鹿隊に対してハラスメント的な行いをするという事は、幼女アバターの永久封印と言う情報を流布する事により、草鹿隊はゲーム内においてアンタッチャブルな存在になっていた。


「いや、しかしだな」


「何を躊躇する事が?」


 必死に作戦の穴を探す草鹿に福田が結論を迫る。


「……が、……なのだ」


「は?」


 草鹿がもじもじと口籠ると、福田が耳を近付けて再度聞き直す。


「お、お遊戯と言えば、踊りだろ? 俺は踊りが苦手なのだ……」


 ゲーム内の見た目は幼女だが、中身はれっきとしたおっさんである草鹿に対しての福田の決断は冷酷だった。


「片石三尉!」


「はい! 片石三尉!」


 幼女姿の片石三尉は福田の下にチョロチョロと走り寄り、気を付けの姿勢を取る。


「イベントの立案を!」


「了解! 現時刻をもって福田副長の掌握下に入ります!」


「お、おい!」


 現在進行中の『お兄ちゃんクエスト☆陸コレだいさくせん』を立案した片石三尉に再度白羽の矢が立てられた。




「これだから……いや、なんでも無い……」

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