1/1
父親がいないということは、子供に何をもたらすか。
死から4カ月が経過した。
父の社宅に住んでいた一家は、会社から退去を命じられた。社員のための社宅なのだから、社員が不在となれば、社宅にいる理由はない。ごく当たり前の世間の常識が、母子2人には冷たい風となった。
「父が勤務していた会社の関連会社で働けば、社宅の住居を継続できる」。
こんな条件も、7歳の子供を抱えては難しく、結局、社宅を出ることになった。四畳半と六畳
で風呂なし。社宅から徒歩3分と近く、小学校も変わることはなかった。というより、変わらないように引っ越しをしてくれたのだと思う。
生活は一変というレベルではない。枯れはてたという言葉がしっくりとくる。
そんな時、父の親友が線香をあげにきた。以前、何回か会ったことがある。職場の仲間だったような気がする。後ろに、もう一人40歳位の男・ひろしが一人いた。生前に、父と親しかったという。
ひろしと、母子はその後も幾度か食事に行くようになる。
「次の父親は、この人か」。
ため息、落胆にも近く、そして、どす黒い何かが胸をしめつけた。