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主夫から凄腕料理人にジョブチェンジした夫の話。

私の名前は、篠崎あやめ。

私と夫は今ではとても仲がいい。

それでも結婚1年目の新婚の時は喧嘩ばかりだった。

本来は、生活のより合わせも落ち着きラブラブでいてもいいこの時期に夫と私は喧嘩が絶えなかった。


それは何故か?

夫が働かなかったからである。


夫は少し頼りない所があるが、とても優しい人だった。

そんなところに惹かれて結婚したわけだが、この時は裏目に出た。

元々、技術畑だった夫が営業部に部署替になったのだ。

連日深夜まで働く彼を私はずいぶん心配したし、辞めようかと思っていると相談された時も

やつれて顔色が悪くなった彼を見て同意したわけだ。


夫が家にいるようになって、1ヶ月目は疲れてるんだなと思った。

2ヶ月目はまあ、仕方ないかと思った。

3ヶ月目は、この人どうするんだろうと思った。

しかもその間、就職活動は一切していなかったのである。


なまじ、私が総合職としてバリバリ働いているのが悪いのだろうか。

この間、昇給したこともあって子供を望んでいない私たちならどうにかやっていけそうな位は稼いでいる。それでも、結婚したら専業主婦になろうかと思っていたのに…。そんなことをぐるぐると考えていた。そもそも、この時の私は家事と仕事だけで手いっぱいだったのだ。勿論夫は家事なんて、手伝おうともせず、そんなところも腹立たしかった。


そんな状態を打破したのが、オムライスだった。

私は上司とあまり上手くやっていなくて、連日嫌みを言われへとへとになって帰宅をした。

そうすると、1人息子として大事に育って家事のかの字も知らなかった夫が晩御飯を作ってくれたのだ。

それは上手ではないけど、目が熱くなってきた。

こうやって、目に見えるわかりやすい形の優しさに飢えていたのだ。

私は何だか、感動してしまい美味しいねを連呼した。

そうすると夫の顔がぱっと輝いたのだった。


これだ。

と思った私は、事あるごとに夫を褒めまくった。

次の日から拙いながらも夕食を作ってくれるようになった夫に

このインスタントのみそ汁の温め具合が最高だとか、

このゆで玉子の堅さ加減はもはや天才の域だとか、

褒めて、褒めて、褒めまくった。


そうして、半年が過ぎるころには私よりもずっと料理上手になっていた。

元々、食道楽の私にとってはこの人と結婚して良かったと思った。

(ちなみにこの間、彼は在宅で働いていた。そっちの方があってるのかもねと私も納得した。)


が、夫は調理師になるための学校に行きたいと言い出したのだ。

幸い1年制の短期で資格を取得出来るところが見つかったものの…。

家事をやらせるためにおだててました、なんて言えるはずもなく背筋に冷や汗が流れた。


まあ、夫の夢を応援できたのは、当時私が最年少で部長職についていたというのも大きい。

そんな感じで夫の料理スキルはどんどん上がっていったのだった。


そうして結婚して10年目の今日、高級ホテルのオーナーシェフとなった。

そんな彼は、将来独立して自分の店を持つのが夢だと言っている。


私は、ただ家事をしてくれる夫が欲しかっただけなのにどうしてこうなったんだ?



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