表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

辰三の話

血の匂いしか、しない世界。


辰三にとって生きるためには仕事と金が必要だった。

自分に辰三という名前以外、何も残してくれなかった両親。彼は彼が生きて自分の名前を守り通すことが、両親への恩返しだと信じるしかなかった。


どうして両親が殺されたのか分からない。

悪い事をしたのか、

いわれもない殺人だったのか、

何も分からないまま、逃げるしかなかった。


自分がどこの生まれだったのかも分からない。

気がついたら刀を持つ仕事をしている。


おそらく才能でもあったのだろう。


畑仕事でもなく小間使いでもない、どうしてこんな闇の仕事をしているのか、経緯はよく覚えていない。

自分のような細腕の子供が、小振りとは言え、太刀を握る戦いの中、どうして生き延びれたのか。

よく分からない。

だからきっと、才能でもあったのだ。

そうとしか思えない。


なぜなら、自分は人を斬ることが嫌いだからだ。


できることなら畑仕事を小間使いをしたい。

このまま人を斬る仕事をしていれば、自分のような子供がどんどん増えてしまうかもしれない。

そういう子どもを自分の手で生み出していると実感しながら、生きている。


両親が残してくれた辰三という名前を、握りしめながら、

血に塗れて生きている。


這いあがれない空を、見上げて泣くのは、もう諦めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ