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さよならノスタルジア  作者: あお
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あの青は何色

受験が終わったら、青いハイヒールを買おう。

受験日を三日前に控えた深夜一時半、私はパソコンの前でそう決めた。パソコンの画面には長らくお気に入りに登録されていたシックな色合いの青いハイヒールが映っていて、私はぼんやりとそれを眺めながら、三日後に右端に映る買い物かごにマークをクリックすることを想像した。鮮やかだけれど、シックな色合いの大人っぽい青色が、あと数日で私のものになる。


ずっと欲しかったけれど、絶対買おうと決めていた訳ではない。気に入って、けれど、安くなったら買ってもいいかな、程度にしか思っていなかった。他に洋服を買ったり雑費がかさんでお小遣いは余裕があるわけではなかったし、手持ちの服には合わせにくいデザインだ。買ったらこの靴に合う服も買わなきゃいけなくなる。


なんで買おうと決めたのだろう。受験が終わったら、ということは、ご褒美にでも買おうかなということだろうか。単純に考えればそうだろうけれど、そう考えても腑に落ちなかった。受験は受験だけれど、内部の大学院にそのまま進むだけだから、体調不良でもなければ簡単に合格できるだろう。ご褒美が必要なほどでもない。

変化が欲しかったのだろうか。三日後で受験が終わることで、受験生だからという理由がなくなる。受験を理由に単調に熟してきた毎日の作業は、三日後にはその理由を無くすのだ。理由の無くなった後に空っぽとなった人生に、次の理由を与える必要がある。その理由というやつは、何か変化というものが起こるとできたりするから、そういうアイテムが欲しかったのかもしれない。

それが、この青いハイヒール。…なのだろうか。

液晶パネル越しの青はとてもきれいだが、これは画面の向こうの商品だ。実際に通信販売で届いた商品と全く同じように見えるとは限らない。このきれいな青も、私が今思っている青とは違う色かも知れない。まぁ、それでも別に構いはしないのだけれど。


そろそろ寝なきゃ。ほとんど合格だって言える受験だけれど、油断は禁物だ。夜更かしで夏風邪なんて引いたらたまったもんじゃない。

ベッドに入るとすぐに眠くなった。八月も終わりで、そんなに暑さも酷くなくなってきたせいかもしれない。その日の夢には、あの青みたいなきれいな海の夢を見た。

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