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下級戦闘員の一日

悪の組織。

正義の味方にやられる存在。

俺はそんな悪の組織に所属している。

なぜ、そんなところに所属しているかって?

それには海よりも深く山よりも高い言い訳が・・・


あればよかったなぁ~。

悪の組織に所属している理由。それは就職先が欲しかったからだ。

この就職氷河期には就職先を見つけることは非常に難しい。

それはもはや、宝くじに当たるのと同じぐらい。

言い過ぎた。

さすがにそこまでじゃないが、俺には無理だった。


だから、悪の組織。

悪の組織は厳しく辛い労働環境だが給料はそこそこいい。

サポーターの仕事は月給20万ぐらい

下位戦闘員でその倍ぐらい出る。

上位はその倍で、怪人になるとさらにその倍以上出る。体は改造されるけどね。

俺は下位戦闘員として実績を積んでいるところだ。


下位戦闘員の朝は早い。

朝五時に起きて朝の清掃と見回りを開始する。

違った、ジョギングと肉体を鍛えるためのトレーニングだ。ゴミは重たいからな集めるのや分別は判断力の強化トレーニングだ。

それを二時間ほど行って朝食を取る。

朝食後は町のパトロールだ。最近は子供の誘拐や事故が多いからな、通学中の子供の横断歩道を渡す役目は下位戦闘員の安全確保能力と危機察知能力を試すいい機会だ。


「おはようございます。」


子供たちの気持ちのいい挨拶を聞くのは大変心が洗われる。

あ、さっきの子達は確か正義の魔法少女リリカルハニーだ。

小学生なのにこの前戦いを挑んだ怪人の先輩をボコボコにしていたな・・・

あれ?俺の方が危ない?

いやまさか、正体はばれてないだろう。

何せこっちは正義の味方と違ってマスクで顔を隠しているのだ。

個人を特定されると色々と面倒だからな。うん。


気を取り直して次は組織の支部に向かう。

俺のような下っ端は本拠地の位置を知らないので大抵はどこかの支部にいる。と言っても俺は入社して半年ほどしか経っていないのでここ以外の支部の位置も知らない。

時間はかなり遅めの10時集合。

こんなに遅いのは通勤ラッシュに巻き込まれないためだ。

通勤ラッシュに巻き込まれるぐらいなら家で仕事してろ。それがここの支部の支部長のお言葉だ。

まぁ、仕事って言っても正義の味方の動向を探ったりそれを報告するための資料作りがメインだけどね。

正直、家のパソコンで資料を作ってメールを送れば終了する内容だ。

まぁ、そのメールを暗号化しないと警察とかにバレて逮捕されちゃうけどね。


戦闘訓練?

24時間交代で正義の味方の動向を探っているのにそんな暇があるとでも?

そういうのは休日の日に自分でするものさ。

え?それで強くなれるのかって?

強くなりたいのなら改造されて怪人になった方が早い。給料も上がるしね。


最近の俺の主な標的は戦国戦隊ゲコクジョウジャーのレッドさんだ。

ちなみにレッドさんはあの戦国武将 武田信玄の力を使う大学2年生だ。

最近、三股していることがバレてしまい大変なようだ。

風のごとく早い破局、林のごとく静かな冷たい視線、火のごとく広まった噂と山のごとく積み重なった問題に悪戦苦闘しているようだ。

なにせ付き合っていたうちの一人が同じ戦隊の仲間のホワイトさんだ。

これは悲しい。

その内、内側から瓦解して戦国戦隊は消滅するかもしれない。

この報告をしてから上層部は関係が悪化している内に攻め込むか、雨を降らせて地が固まるのを恐れて傍観かの選択で揉めているらしい。


おっと、レッドさんが新しい女とデートの時間だ。尾行しなくてわ。

俺はレッドさんとその新しい彼女さんに気づかれないように尾行する。

昔はよく気づかれてもめ事を起こしたり、先輩に良く叱られたがこの半年で全く気づかれないスニークスキルを身に付けた。

今では立派なストーカーだ。俺も悪の組織の一員として成長したなとしみじみ実感する。


俺のストーキングに気づかすにデートを続けるレッドさん。

さすがに三股していただけのことはある。話が弾んでいるように見える。

ただなぁ~・・・・

俺は視線をレッドさんの右斜め後方40m付近に眼をやる。

マスクにサングラスをしているがあれはおそらくホワイトさんだ。


なぜだろう、嫌な予感しかしない。

俺の中で「レッドさん早く逃げて!!」と誰かが叫んでいる。

映画を見ているときに感情移入してしまったキャラや配役の人がもうすぐゾンビか何かに襲われてしまう。そんな感覚だ。


そういえば、レッドさんこの前ホワイトさん達と何か話し合いをしていたな。

話し合いの場がレッドさん達の秘密基地なので尾行はできず、レッドさんの服に取り付けた盗聴器で話を聞こうとしても基地のセキュリティか電波妨害のためかよく聞き取れなかったんだよな。

わかっていることはレッドさんが平謝りしていたこととホワイトさんの激怒とその他の方達のフォローというか説得というか。まぁ、そんな感じだ。


もしかして、平謝りしてレッドさんとホワイトさんは仲直りしたのかな?

もしそうなら、この場で上杉 対 武田の合戦が甦ることに・・・

今回は上杉の圧倒的勝利で終わりそうだけど・・・

言い忘れていたけどホワイトさんは上杉謙信の力を使うよ。

まぁ、戦闘能力が上がるだけで特に特殊能力とかはないみたいだけど。

戦国武将だからね。強いことと頭がよくなる程度の補正しかないみたい。

それでも、内の先輩怪人さんは歯が立たないから戦国武将ってすごいよね。


おっと、レッドさんの新しい彼女さんがどこかに行ってしまったぞ。

きっとお手洗いだろう。

その隙にレッドさんは飲み物を買いに俺から見て右斜め後方に・・・

ホワイトさんとレッドさんの目が合った。









本日の報告、戦国戦隊ゲコクジョウジャーは解散しました。

レッドさんは病院に運ばれたので狙うなら今がチャンスです。

ホワイトさんは今近づくと確実に消されます。


俺はレッドさんの入院した病院と部屋の番号を調べてから組織に帰った。

夕方になり、いつも通り下校する子供たちの安全を守る。

おっといけない、これではいい人みたいじゃないか。

子供のまだ成長途中の体を舐め回すかのように視姦する。ただし、そのことが絶対ばれないようにするために偽善者を装う。相手を油断させるためだ。まぁ嘘だけどね。本当は御近所さんに変な誤解されると大変だからだ。

それにしてもJSを視姦だなんて悪の組織は大変だ。


小学校の登下校を見守ったら買い物をしに行く。

近所のスーパーではこの時間帯はタイムセールだ。昼間は尾行のために軽食で済ませたので少し多めに買う。尾行時はアンパンと牛乳。これは刑事も悪の組織も変わらない。多分・・・


「いらっしゃい。試食はいかが?新製品だよ?」


そう言って試食を進めてくるのは正義の味方 美少女戦士ブレザーハート の人だ。

確か、現役女子高生のはず・・・バイト?

俺は彼女が進める試食品を一口食べるがあまりおいしくない。

顔を歪める俺に彼女は「お兄さん、正直者ですね。顔に好みじゃないって出てますよ?」

試食をしたのに買わないのは失礼なのだが「あまりおいしくないので買いたくないな」と思っていた俺に彼女はそう言って助け舟を出してくれた。


「今日はピリ辛のものが食べたいんだけど、何か良いのないかな?」


俺の質問に彼女は笑顔で答えて自分のおすすめを手に取り商品の説明をしだす。

バイト歴は意外と長いのかもしれない。

半年間このスーパーに来ているが会うのが初めてなので今まで時間帯がズレていたのか、それとも別のところでバイトしていたのか・・・

いやよそう。彼女は俺の勤務対象外だ。

今はただの客と店員。それでいいじゃないか。

俺は彼女のおすすめをカゴに入れて立ち去る。

彼女の「ありがとうございます。」と笑顔に少し元気をもらった気がする。


その後、俺は適当に買い物をして夕食の準備をする。

一人暮らしなので簡単に作れるものと朝セットしておいたご飯、そしてブレザーハートの子が進めてくれたものを温めて食卓を準備して食事を始める。

テレビをつけて一人寂しい食事を紛らわせる。


食事が終わると夜のパトロール。

最近は治安が悪いのでこれは重要ミッションだ。

御近所の平和は世界平和の第一歩だ。


・・・


しない方がいいのだろうか?


そう思いつつ靴を履いて外に出る。

懐中電灯とライトを当てると反射する上着を着るのを忘れてはいけない。

俺はジョギングをしながら夜の人通りのないところを走る。

悲鳴や警報機の音を聞き逃してはいけないのでイヤホンをつけて音楽などを聞きながらというわけにはいかない。


正直、一人で寂しい・・・


「きゃあああ!!」


2時間ほど走っていると女の人の悲鳴を聞いて俺は走る速度を上げる。

角を2、3回曲がると悲鳴が上がったと思われる場所を視界に捉える。

そこには春の暖かな季節に不似合いな真冬のコートを着て鼻血を出すおっさんと高校生ぐらいの少女がいた。よく見ると高校生の少女は先程スーパーであったブレザーハートの子だ。

おっさんの方は・・・ 良く見たくなかった。

なにせコートの前部分をはだけさせており、コートの下は裸なのだ。いやブリーフは穿いているようだ。

真っ白なブリーフはなぜか一部が黄ばんでおり、おまけにアレがアレしているようでテントを張っている。

ああ、おっさんはなぜか道路に寝っころがり白目を向いて鼻血をだしているので別に無力化する必要はない。さすがは美少女戦士 ブレザーハートの一員。恐ろしいぜ。


俺は少女に近づき「大丈夫かい?」と声をかける。

少女は自分の両肩を掴んで震え、その表情はあきらかに怯えていたが俺の声に反応してこちらを見る。


「あなたは・・・ さっき会った。」


俺は自己紹介などはせずに事情を聴き、警察に通報。

俺は駆けつけただけで何もしていないので事情の説明などはできない。

だから彼女には申し訳ないが家に電話してもらい、警察に事情の説明をしてもらうことにする。

俺は警察が来るまで彼女と一緒に待つ。

おっさんは逃げられると面倒なのでコートの前を閉じて両手をタオルで縛る。

ジョギング用にタオルは常に所持している。

ただこのタオルはもう使えないなと俺は思った。

結構お気に入りだったのに・・・


そんなことを思いながら気落ちしている少女を励ますために何とか話を振るのだがなかなかうまくいかなかった。経験不足な俺では彼女を励ますことも勇気づけることもできなかった。

こんな時、経験豊富なレッドさんならうまくいくのだろうか・・・

うまくはいきそうだが、そのまま口説き落としちゃいそうだな・・・あの人なら・・・




時間も遅いということで警察の取り調べはすぐに終わり、後日また事情聴取に来るということだった。

彼女は警察の方が責任を持って送ってくれるということなので俺は自宅に帰る。


自宅に着くと風呂に入って体と頭を洗い洗顔する。

浴槽につかるのはそれからにする。

お風呂の湯は明日、洗濯に使うからできるだけ清潔な方がいい。

風呂に上がると夜ももう遅いので眠ることにした。


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