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2044年、北極海洋上。
<<――…本統制海軍に…繰り返す。…作戦時刻18:00、日本国…政府は枢…連合国との…戦の合…意に…至り。…戦本部…命令…11002…に従い…、戦…闘を…中止…よ…。繰…す。日…統制…軍は――>>
その通信を聞いて、彼女は目が覚めた。辺りを見渡すと、指令室一面が炎に包まれて、あちらこちらから火が噴き出していた。意識がまだ覚束無いし、記憶も燦然とはしていなかった。だが、間違いなく「何らかの出来事」がこの艦に起きたのは彼女にとっては明白の事実だった。
「一体…どういう…こと…なの…?」
足に力を入れて立ち辺りを見渡すと、何かが足に触れた。見てみると足元に斃れた仲間の死体が横たわっている。
噴き出す炎によって灼熱の地獄と化した指令室に、彼女は立っていた。だが不思議と熱気は感じられれず、右手からは大量の血があふれ出ていたが、これも痛みはなかった。そして、何かを思い出したかのように、
「…艦…本艦の状況…は…?」
と言うと、緊急用のコンソールパネルを見た。
「空母…<かつらぎ>…損害…データ…」
損害率は70%以上になっていたが、幸運にも浸水は軽微で、当面沈没だけは免れそうだった。だが、指令室は炎に包まれおり、状況を把握できそうになかった。
(枢軸国軍の攻撃…?いや、だったらこの艦が攻撃されるはずがない…?では、第三勢力から攻撃…?それとも…)
彼女は遠退いていた意識を引っ張り戻しながら、指令室から艦橋の外に出た。
そして、眼下に広がる光景に言葉を失った。
「何…なの…これ…?」
多くの艦が、火柱を上げながら海中に沈んでいる。夜になっていた空は火で紅く染まり、夕方のような明るさだった。一方海には沈没艦から出た油と人の血で染まっていた。水面には火がついた油と、未だ沈んでいない死体が浮かんでいる。
言うなれば、熱と血と人々の慟哭が飛び交う――地獄。
その物だった。
だが、彼女はその光景を見つめるほか仕方がなかった。恐怖で足が、腕が、頭が動かない。
「あ…あぁ…あッ………」
言葉を詰まらせて、何も言えない。心臓の鼓動が速くなっていく。
だが、冷たい汗が一筋背筋を通った途端、中から何かが突き破って生え出すような激痛が背中に走った。思わず叫び声を上げた。
「あぁぁぁぁああぁぁああぁぁあぁ!!!」
理性と、意識と、記憶の全てが彼女の中から消え去ろうした。その瞬間、遠くから声が聞こえてきた――
「世界を、教導しろ。お前の力で」と。
初投稿となります長谷川薫と申します。
さて、本作品「真紅の園」は私が参加している箱庭ゲームで、運営しているオリジナル国家のストーリー物です。登場国家名もそのままなので、検索すればおそらく見つけることはできると思います。はい。
さて、小説自体ですが、初期案から大分修正を経て、第一話をエピローグとしました。正式な一話及び二話は近いうちに投下します。