第一章…空き缶…
今思えば、あの時に僕らはもう夢に向かって走る『ランナーズ』だったんだ!
…あれは、まだ夏の熱気が残る9月の最初の日曜だった…
まだ暑い9月最初の日曜の朝…
…俺、こと『桐野恭弥』は汗だくになりながら走っていた…
「暑ぁちぃ…暑すぎる。クソッ!」
勢いで近くにあった空き缶を蹴り飛ばす。
‐カーン‐
綺麗な放物線を描いて空き缶は前を歩く人に向かい飛んで行く…
「危なッ…」叫んだ時には『時既に遅し』だった。
空き缶は‐カンッ‐と響いた音をたてて通行人に直撃した!
「だッ、大丈夫ですか!?」
慌て駆け寄る俺。
「いっ、痛いです…」
「あのッ!本当にごめんな…さ…いっ!?」
俺は、言葉を失った…
何故なら、空き缶を当ててしまった人は…『春野さくら』…夢高の2年で俺と同級。
そして…学校1の美少女(古いか?)で合唱部のエース的存在…っと、とにかく俺達男子の憧れの的だ。
それよりも、今は春野の体が心配だ…
「ゴメンッ!春野、大丈夫か?」
春野は、始めは驚いた様だったが、すぐに俺と分かったようだ。
「なんだぁ、桐野君かぁ〜。もぅ!痛いよぅ…」
手を目の下に当てて典型的な泣き真似をする。
「…バレバレだぞ?ってか怪我は無いのか!?」
「大丈夫!体は丈夫なの。でもぉ…すっごく痛かったから、駅前のアイス奢りね?」
人の弱味に…まぁ俺が悪いから仕方ない。
「はぁ…1つだけだぞ?」
「はぁ〜い☆…ねぇ?桐野君は毎朝この辺り走ってるの?」
??…
「そうだけど?何で急にそんな事聞くんだよ?」
「えっ!?…そっ、それは…何と無くだよ!」
何慌ててんだよ…
「じゃあイイや。…なッ!!ヤベッ時間が…」
夏との約束の時間はあと5分しか無い!
「どうしたの?」
…と春野。
「ワリィ!夏との約束があるから!また連絡するわ。じゃっ!」
急いでその場を離れて夏との約束の場所に行く。
「バイバ〜イ☆奢りわすれないでよ〜ぅ」
一瞬、転げそうになったけど、春野の声に軽く手を挙げて返事をする。
ハッ…ハッ…………
今日は、何と無く大変な一日になりそうだ。