プロローグ
焦げ臭い・・・どこもかしこも焦げ臭く醜い・・・一人ながらも男は呟いた。
男の立っている崖から下の村は炎で渦巻き悲鳴も響き渡る。逃げ遅れた人々は焼け殺された・・・誰に?どうやって?そんなのはもう興味もないくらいに自分の心で呟いた。戦争はどこで始まっていったのかもわからないくらいに昔からあったような気もする。村と町があるようにこの世界は栄えている所がまばらだった。栄えてる町は村のもののことなど考えず戦争を繰り返しありったけの科学で焼き尽くしていた。いままでも・・・たぶんこれからも・・・。男が歩いている崖はしきりに降る雨でぬかるみ足が滑りやすくなっている。雨で頭の傘が手で支えなければならないくらいに重い・・・。男は、崖の下の燃える村を気にせずにすたすたと歩いていく。なんの目的もなくただ雨の中を歩き続けていく。歩くだけのこの旅で戦争の中で戦う軍人から通りすがりに攻撃されたこともある。銃で何発も撃たれたがなぜか男には当たらなかった・・・なぜかは男自身も考えた事は無かった。しかしすくなくとも当たった銃弾が急所に当たった時は幾度となく村のものに助けられた。そして村のものは死んでいった、助けたいと思ったこともあるが戦争の戦火には敵わなかった。軍人は日に日に銃からまったく使い道がわからない光を放つ鉄の塊へと形を変えていった。もう戦争のことなどどうでもいい・・・男は呆れ続け逃げてきた・・・道の行くまで逃げ続けた。 男はしきりに降る雨の中何かの影をみた。一歩一歩踏みしめて歩いていく、胸の鼓動を抑えながらも歩いていく。男は雨で押さえつけられている傘を手の甲で押し上げた・・・やはり軍人のわけのわからない鉄の塊だ・・・しかもとてつもなく大きい。塊の左右に突き出ている規則正しくそろった鉄の刃を見るなり男は身震いをした。
「新しい奴らの武器か?・・・・」降りしきる雨に邪魔されつつも呟くが音でかき消される。
男はさらに近寄り調べていく、左右に付いた円状の刃は処刑道具にも見えおそろしいばかりだ。左右に付いている円状の刃の他に塊の胴体は丸く、転がらないためか支えのようなものが胴体から出ている。雨で分からないのかほのかに肌色に近い・・・。捜索を続けるが雨の中からなにか物音が聞こえたが男には届かなかった。しかし物音は近くなり男にも届いた。
「なんだ?・・・」男は背中に背負っている太刀に手を伸ばす。
ふと近づく物音に男は崖から村を見た。すでに軍人による攻撃は止み煙が雨の中空えと続いていた。
「しまった!!軍人の奴らが・・・ぐ!!」
男は頭の後頭部に激しい痛みを感じ・・・気を失った・・・。