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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

短編小説

静謐(せいひつ)

作者: とり
掲載日:2026/07/03

 



 朝。

 夏の、八時(はちじ)を過ぎたころの、強い日差しをまとった、さわやかな朝だ。


 私は勉強机(べんきょうづくえ)でうたたねをしていた。

 私服。

 学校は夏やすみにはいっていた。でも受験生(じゅけんせい)だから、(こん)をつめて勉強をしなければならない。


 数学の問題集(もんだいしゅう)。ノート。――きのう。

 きのうは私の誕生日(たんじょうび)だった。(いえ)(まず)しいほうだからか、プレゼントは無い。ケーキも。


 私はきのう、十五歳になった。


 しかし十四歳から十五歳になったところで、急になにかが変わるわけでもない。


 いや、あった。

 私が変えた。


 ――静謐(せいひつ)


 きのうの夜、父が帰ってくるなりいつも通りうるさくて、母と口論(こうろん)になった。私は自分(じぶん)の部屋に()もって勉強をするフリをしながら、両親(りょうしん)(たが)いを口汚(くちぎたな)くののしり合うのを「なんでこの人たち、結婚(けっこん)したんだろう」と思いながら聞いていた。


 けんかが終わったのは(いち)()(かん)ほどが()ったころだった。夜の十一時(じゅういちじ)をまわっていた。


 私は水を飲むために台所に行った。リビングには母がいて、「あんたなんか産まなきゃよかった」と、何度()いたか知れない呪詛(じゅそ)を私に向かって吐き捨てた。そこから()つ当たりと愚痴(ぐち)がはじまる。


 私はてきとうにあいづちを打って、自分(じぶん)の部屋に引っ込んだ。卓上(たくじょう)のカレンダーを見たら、今日の日付に華丸(はなまる)が描いてある。私の誕生日だ。

 なぜ私は毎年毎年、だれに祝われることもない日にめでたいマークをつけているのだろうと不思議になった。


 深夜一時(いちじ)

 私は両親(りょうしん)の部屋をそっと開けた。どちらも眠っていた。

 けんかばかりしているのに、寝るときは父も母も同じ部屋なのだから、あきれるやら滑稽(こっけい)やら、ふっと笑いが()れる。


 私の手には包丁があった。


 それで私はふたりの(のど)を突いて殺し、心の安寧(あんねい)静寂(せいじゃく)を手に入れた。







 ※このものがたりはフィクションです。


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