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読書感想文

作者: KINA
掲載日:2026/04/08

 降りてこ~い。言霊降りてこ~~い。


 「先生またそれですか。」


 昔好きだった作家のね、なかなか小説の続きを書けない理由が「言霊が降りてこないから」だったんだよ。その頃は仕事しない言い訳か~?なんて思ってたけど、自分が作家の端くれになってみて思ったよ、あれは真実だったんだ!とね。


 「そんなもんっすか、神頼みってやつですかね。」


 そんなもんなんだよ。あぁぁ言霊さぁぁん降りてきてぇぇ~


 「ここはいっそ初心に帰って新しい題材を考えてみるのはどうでしょ?ネタのストックはあるんでしょ?」

 

 ん~ あるにはあるけどまだ自分の中で形にしきれてないんだよねぇ。言霊がねぇ。

 

 「えぇそこも言霊さんですか。」

 

 言霊さんはどこにでもいるんだけど求めると来てくれないんだよ。

 

 「ツンデレ?」

 

 ツンデレかなぁ?別に嫌われてるわけじゃないと思う。いや思いたい。思っても良いよね?

 

 「仕事として成立してるんだから好かれてる方だと思いますよ。」

 

 そうかぁ好かれてるなら良いか。まぁ来てほしい時に来てくれないんじゃ好かれててもなぁ。

 

 「まぁまぁ、あまり言うとへそ曲げて来なくなっちゃいますよ。」

 

 それは困るね。ごめんね言霊さん。

 

 「そうそう、日頃から感謝を忘れなければきっと来てくれますよ。」

 

 

 

 「そうだ、初心ついでに小説を書く切っ掛け教えてくださいよ。」

 

 きっかけ?ん~ 昔から本読んだり想像するのが好きだった子だったよ。父親は本を読む子供に育って欲しかったようで生まれた頃から家には本がたくさんあってね、お陰で学校でも図書館に入り浸るタイプに育ったよ。

 

 「へ~ でも今はそんなに本に囲まれてませんね?」

 

 電子書籍が便利だからなぁ。小説家がこんな事言うと怒られると思うけど、本も雑誌も数が増えるとじゃまでさぁ探すのも大変だし。電子書籍なら知りたい情報をササッと探せるじゃん。便利と収集癖を天秤にかけたら便利がぐぐぐっと、歳を取るほどぐぐぐーーと比重が重くなっていくんだよね。だから今はあんまり紙の本を買ってないのよ。これは内緒ね。

 

 「はいはい、わかりました。」

 「それで?」

 

 ん?あぁ、そんな本の虫だったから小学校の頃から学校の読書感想文や感想画コンクールっていうの?ああいう夏休み明けのコンクールには毎回感想文を書いてた出してたよ。

 

 「懐かしいですね、読書感想文。作者は何を考えていたか?なんて解んないのに一生懸命本から読み取ろうとしたり。」

 

 そうね、そんな無茶な要求もあったんだろうけど、その頃の自分は本を読んで思ったことをそのまま書いたら褒められるコトが面白くて、いろんな本読んでは感想を書いたな。しかも結構評判が良くてさ、一度なんて市内の小中学校合同のコンクールで最優秀賞もらったことがあるよ。その時は読書感想画も一緒に優良賞も貰ってね。今でも実家には表彰状あるんじゃないかな?

 

 「スゴイじゃないですか、それでトントン拍子に小説を目指すように?」

 

 いや、その頃は本読むのも好きだけど子供だからあくまでもイベントの時に頑張る程度で満足出来てた。それでしばらくは賞らしい賞は貰えなかったけどそれほど気にはしてなかったな。

 

 「ふむふむ、子供時代って飽きっぽいところもありますしね。」

 

 何やっても楽しい時代だからね。自転車乗れるようになったり、25m泳げるようになったのもその頃だったかな。いま思い出しても楽しい子供時代だったわ。

 

 それで中学一年になった時に学校で読書感想文・感想画のコンクールがあって、いつものように感想文を提出したのよ。それでうちの中学は賞に選ばれたら体育館で書いた本人が読み上げるのよ。


 「へー体育館で?」

 

 そう体育館で。新設校だったからかもしれないけど、真新しい体育館に全校生徒が座っててさ、そこに向かって自分で書いた感想文を読むのよ。ちょっと怖いよね?いま考えても罰ゲームだったんじゃ?って思うぐらいだよ。

 

 「あはは、たしかにそれは勇気がいりますね。」

 

 まぁ普段から笑いを取るためにバカやるようなキャラだったからさ、怖いなんて言わなかったけどいざ自分が読み上げる番になったら流石にビビったね。中学1年生が上級生も含めた全校生徒の前で自分が書いた感想文を読むんだからさ。

 

 「同級生だけなら良いけど上級生とかやだなぁ。」

 

 ホントそうだよ。まぁなんとかトチらず読み上げて自分のクラスの席に座ってホッと一息つけたわけ。

 

 「お疲れ様~ ですね。」

 

 はは、ありがとう。

 そしていよいよ最優秀賞を取った生徒が壇上にあがってさ、どんな作文だろうって集中したら、

 

 「ぎゃーーーーーーーーーー!!」


 って突然マイクが割れるほどの大声で叫び始めたの。

 

 「叫んだ?」

 

 そう、叫んだの。その子がね。そしてそのまま普通のトーンで作文を読み始めるわけ。つまり感想文の出だしが「ぎゃーーーーーーーーーー!!だったわけ。

 

 「へー それはずいぶん変わってますね。中学生ですよね?」

 

 うん、オレと同じ中学一年生。クラスは違うけど合同クラスとかでは何度か一緒になったことがある程度の認識しかなかったんだけど、そんな同級生が突然叫んで、何事もなく感想文を読み上げていくのよ。

 

 「面白いですね。それでどんな内容だったんです?」

 

 えーと、あー んー 最初の叫び声が印象強すぎて、残りの感想はよく覚えてないや ははは。

 

 「ひどっ でも最優秀賞もらえるぐらいなんだから選んだ先生たちにも受けが良かったんでしょうね。」

 

 うんそう思う。子供って大人が喜びそうなコトって薄っすらわかってるところあるじゃん?

 

 「ありますねー」

 

 自分もそいうところあったからわりと大人への受けは良かった。良い子に見えていたと思う。それが作文にも出てたんじゃないかな?きっとその子もウケるテクニックを持っていたんだと思う。

 

 でも、自分にはない才能ってやつを最初の叫び声で感じちゃったね。「ぎゃーーーーーーーーーー!!」で始まる作文なんて生まれてこのかた考えたこともないし読んだこともない。きっとその子には必要なコトで、選考者もそれ込みで選んだんだからスゴイ才能だったんだよね。

 

 こんな書き方をして良いんだ。こんな発表しても良いんだ。っと感心したんだと思う。お陰で叫び声しか印象に残ってないなんてヒドイ状況なんだけどさ(笑


 「たしかにヒドイ。もしかして嫉妬とか感じちゃいました?」

 

 いやぁ、それがまだ子供だったせいか他人の才能に嫉妬するより感動するほうが大きかったんじゃいかな、ホント感動して「すげーなー」て思ったんだわ。

 

 「うわっピュア!ピュア厨房だっ!」

 

 今でもピュアピュア青年ですけど?

 

 「青年?・・・まぁそれは置いといて、」

 

 置くのかよ

 

 「えぇ置きまして、それからどうしたんです?」

 

 そいつのことを意識するようになった。

 

 「いわゆるライバル視ってやつですね。」

 

 ライバル…だったのかな?スゴイ才能のヤツだって意識はあったね。

 さっきも言ったけどうちの中学って新設校でさ、一年生は新入生だけど二年三年は他の学校からの編入だったのよ。当時はマンモス校なんて周りにゴロゴロあってね。一年生でも12クラスあったよ。

 

 「スゴイですね。今は一学年3クラスもあれば多い方って話ですよ。」

 

 そうね、前に取材に言った学校がそんな感じだったな。

 そんな新設校だったから生徒会役員は一年生を中心に作ろうって話が持ち上がったらしくてさ。二年や三年は別の学校の規則やルールで数年過ごしたわけでしょ?だから新しい学校は新しい一年生たちから形を作っていこうって判断だったみたい。

 

 「なんとなくわかります。他校の空気を含まない新しい風って感じがしてなかなか粋な判断ですね。」

 

 うん、わりと自由な学校だったと思う。いまにして思えばね。

 当時は「女子の制服が可愛くないからボイコットする!」とか生徒と衝突することなんかもあったよ。

 

 「マジっすか?!それは編入組が?」

 

 いや、一年生ね。二年生や三年生はそれまで通ってた学校の制服着用がOKだったから、新しい制服を着ている上級生のほうが珍しかったかなぁ。女子曰く「可愛くない制服」ね。男子は普通の詰め襟だったし、女子の制服を見てもあまり気にするような部分は感じなかったんだけど、やや緩い学校の空気が女子生徒たちに「意見したい!」て思わせたのかもね。

 

 「最近は制服改造しても全然OKなところ増えてますが、その頃は反抗運動を起こさないと駄目だったのか。」

 

 そこまでは反抗してなかったよ。運動場に出て授業をボイコットして給食の時間には教室に戻ってきてご飯食べてたし。

 

 「ぇ~ 反抗もゆる~い。」

 

 あはは、確かにゆる~い。後で反省文を書いて許されるぐらいの反抗と結果だったわ。

 

 「先生はボイコットしたんです?」

 

 いや~ 男子は殆ど参加しなかったよ。イケメンで女の子に受けが良い男子は何人か一緒にボイコットしてたけどね。

 

 「中一なのにマメなイケメン勢。」

 

 オレもイケメンだったけどね。

 

 「・・・それで生徒会はどうなったんです?もしかして先生も生徒会役員になったとか?」

 

 オレもイケ…まあいいや、クラスで推薦はされたけど辞退した。あまり責任感が強いタイプじゃないし「お前らやりたくないだけだろう!」とか思っちゃったしてね、やや反抗期だったかもしれないな。

 

 「こっちも反抗運動ですね。」

 

 ちょっとだよ?ちょっとだけ。でも放送委員はやった。給食時間に放送委員が好きな曲を掛けてもOKなのよ。わりと人気のある委員だったけど、担任が放送委員の統括だったんで、委員会じゃないなら放送委員はどう?って感じですんなり決まった。

 

 「DJ!DJ!」

 

 うぇ~い♪

 そして生徒会委員長になったのは例の感想文最優秀賞を取った生徒。

 

 「マジっすか。」

 

 うんマジっすね。勉強も出来るしハキハキ喋るし、クラス委員長もやってて優等生なのよ。

 

 「すげー スーパーマンか何かかな?」

 

 天は二物も三物も与えるた存在だったんだなぁ。文才は「ぎゃーーーーーーーーーー!!」で知ってるけど、期末テストなんかも上位にいるしさ、あ、オレも結構上位だったよ?読書家だからね。文系は強かった。

 

 「なるほど。」

 

 もっと興味持って!オレに興味持って!

 

 「はいはいスゴイスゴイ。」

 

 くそうぅ。

 まぁそんな才能の塊が全学生を統べる生徒会長になるのだから、そりゃもうテキパキとした生徒会運営だったと、役員やってた友達が言ってたわ。

 

 「良いですね、漫画みたいなキャラだ。」

 

 ホントだな、小説のプロットにそんなキャラ出したら主人公でも強キャラ過ぎてダメ出しされそう。

 

 「リアリティが無い!とか言われちゃいますね。」

 

 リアルなんだけどねぇ(笑

 

 「一年で生徒会会長ってことは、もしかして三年かずっとその子が?」

 

 

 ・・・。

 

 いや、そんなことはなかったよ。オレらが中学二年に上がって夏休みに入る前に、その子死んじゃったんだ。

 

 「え?!」

 

 葬式には学年全員でその子の家を尋ねたよ。元々持病があったみたいでね、急に悪化して夜のうちに息を引き取ったんだって。その前の日は普通に授業を受けたり生徒会でテキパキ働いてたよ。二年の時は同じクラスになったんで一年の時より接点は増えてたんだわ。

 

 「えー ご愁傷さまです。」

 

 もう随分前の話だし、病気じゃ仕方ないって当時も思ったから、いまはただ懐かしい話ってだけだよ。でもその当時は結構ショックでさ、自分がライバル視していた才能がふっと目の前から消えて、遠いところへ行っちゃった気分になった。まさに「ぎゃーーーーーーーーーー!!」って感じ。

 

 「キツイですね。」

 

 うん、あの叫び声を聞いた時から自分で感想文を書く時は「あの子ならなんて書くだろう?」「どんな出だしで驚かせるんだろう?」「あの子ならこうか?」「あの子はきっとこうだろう」そんな風に思ってた。

 

 「意識しまくりですね。」

 

 そのぐらい自分と違う感覚をブツケられたと思ったんだよ。強烈だったんだなぁ。いまならそれは「憧れ」だとわかるな。嫉妬なんて少しも混じってない強い「憧れ」だったんだ。

 

 「いまでもその憧れを?」

 

 あるね、彼女がいなくなって、彼女が書いたかもしれない文章を、感想文を、小説を… もしかしたら「言霊」って言葉で彼女を呼び寄せたいのかもしれない。憧れの対象が書く予定だった話を、書くはずだった言葉を、オレの身体を使って世に知らしめたい。

 

 「イタコ小説家を目指してる?」

 

 いやいや、もちろんオレの書きたいものを書いてるよ。ただそこに彼女ならなんて書くかな?と思いながら書いてる自分にふと気づくコトもあるんだよね。中学二年生という若いみそらで散った才能を、自分の中の物差しのような基準としてずっと残しておきたいんだな。

 

 

 

 「もしかして、先生その子のこと好きだったとか?」

 

 んーーーーーそれはわかんない。

 

 「えー 聞いた限りかなりの好き度ですよ?」

 

 だって中学生だよ、多少マセたガキだったけど所詮中一の男子、テレビや漫画、プラモデルに興味の大半が持っていかれてるまさにガキだからさ、あの「憧れ」が恋かどうかもわかんない。まぁいまでもわかんないままだわ。

 

 「絶対好きだったわ。厨二病アンテナにビンビン来てますわ。」

 

 中一だっつーの!

 

 「あはは、まさか先生の恋バナが聞けるとは思いませんでしたが、それが先生の初心なんですね。」

 

 そうだね、たどり着けない目標であり、憧れの対象。いつかは「ぎゃーーーーーーーーーー!!」に匹敵する感動を読者にも味あわせたいって考えたのが小説家になる切っ掛けだったんだろうな。

 

 

 

 ふふふ、嬉しいですね、そんな風に思ってもらえてたなんて。

 

 「うん、いまでも君はオレの中に生き続けてるよ。そして困った時にはいつも思い出させてくれる。」

 「あの時の感動と憧れをね。」

 

 やっぱり好きだったんじゃないの?私のこと。

 

 「そこはノーコメントだよノーコメント、言わぬが花って言葉もあるでしょ。」

 

 はいはい、そーゆーことにしておきましょうかね。

 もう小説は書けそう?

 

 「そうだね、なんていうかこう~アイディアがムラムラ湧いてきたよ。忘れないうちに書かなきゃ!」

 

 ムラムラって…いやらしっ!

 

 「うっせー!こちとら明後日がが締切なんだよっ!!」

 

 はいはい、読者をあっと言わせるような大作を書いてくださいよ。

 

 「それこそ「ぎゃーーーーーーーーーー!!」から初めてみるか。」

 

 ちょっと、それ私のパクリじゃない!さっき自分の書きたいものを書くって言ったばかりよね?

 

 「うるさいうるさいうるさ~い!オレが書きたいのがたまたま「ぎゃーーーーーーーーーー!!」スタートなんだよっ!それにあの感想文をパクったところでもう時効ですぅ~ 中一時代ですぅ~。」

 

 しかたないなぁ。書くならちゃんとみんなを驚かせなさいよ。

 

 「あぁ、厨二病なんて言葉がなかった頃のキミのスゴさを理解らせてやるよ。」

 

 

 

 もう大丈夫ならそろそろ行くね。

 

 「おう、またな。」

 

 うん、またね。

 

 

 

 

 「「ぎゃーーーーーーーーーー!!」」ってハモんなよ!」そっちこそ!!

 

 

 

 


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