始まりと終わり
なんとなく書き始めてみました。
まだ、先の事は分かりません
世界を人類が支配して数千年。
長い間、自らを神の創造物であると信じて疑わず、自らを神の御使いであると信じて疑わず、世界は人類の物であると信じて疑わず、各々が各々の欲望を満たす為、人は唯一の天敵たる、同族同士で争いを繰り返していた。
500年前、一部族の族長に過ぎなかったゼオンという名の男が周辺部族を吸収、統治し始める。
ここに巨大中央都市国家ゼノンガルド。そして、初代ゼオン王が誕生した。
ゼオン王統治の元、人類同士の争いは急激に鳴りを潜め、小規模な諍いこそあるものの、長らく平和な時間が続いていた。
五年前までは。
その日、世界中を突如として闇が覆い尽くした。
いつも通りの日々を過ごしていた人々は、午前中にも関わらず、突然暗闇に染まった上空を見上げ、困惑し、恐怖した。
現王ゼオン18世は、この災厄を魔王の仕業と断じ、直ちに討伐隊を編成。
総勢500名から成る大隊は、魔王のいる北の大地へと進軍。
人々はその勇ましさに期待し、希望の灯火が輝くのを感じ、胸を躍らせた。
しかし、一ヶ月、二ヶ月、半年。待てど暮らせど、魔王討伐の報告は来ず、また討伐隊の誰一人として、戻っては来なかった。
成す術を無くしたゼノンガルド上層部は、全世界に向けて御触れを発信した。
『邪悪が存在するならば、光もまた存在するはずだ。勇ましき者達よ! 光に導かれし者達よ! 立ち上がれ! 悪しき闇を打ち払うのだ! 魔王の首を持ち帰った者には、永遠の富を約束しよう』
それは藁にも縋り付く程の無駄な足掻きに思えたが、それでも野心に満ち溢れた者達はやって来る。
世界に災厄が訪れてから、五年。
未だ魔王を討伐した者は現れず。
「うわぁ、おっきいなぁ」
ゼノンガルドの城門の前に立ち、改めて間近で見上げる光景に、ハンスは声を上げた。
まさしく大都市という言葉がぴったりで、闇に覆われる前なら、さぞかし煌びやかな所だったのだろうと思った。
今では、全てが色褪せて見える。はっきり言って、廃れている。
「おい、坊主。何しに来た?」
城門を見上げているハンスに、門兵らしき男が声をかけてきた。
「えっ? 勇者を募集してるって聞いたんですけど」
その返事に門兵は、鼻で笑ったように見えた。
「まだそんな酔狂な奴がいたとはな」
門兵の口調はあからさまに呆れているようだ。
「あっ、何処に行けば受け付けてもらえますか?」
ハンスは門兵の様子など意にも介さず、質問する。
「受付なら、このまま真っ直ぐ。遠くに見えるだろ。尖った屋根が。だが、もう受け付けは確か…」
「ありがとうございます」
ハンスは軽く会釈して、スタスタと歩いて行く。
「なぁ、おい!」
門兵がハンスの背中を呼び止める。
ハンスは立ち止まり、チラリと門兵を見た。
「命は大事にしろよ」
門兵の言葉に、ハンスはニコリと微笑み、また歩き出す。
「はぁ、もう辞めようかしら」
受付嬢をして、五年。すでに受付としての機能は殆どなく、退屈な時間をひたすら潰すだけの人生に、ミラジョボは疲れ果てていた。
五年前には十人近くいた受付嬢も、今や自分一人。
時折訪れる応募者への対応も、今や一週間に一度あるか無いか。
最近、故郷の事ばかり思い出すようになって、大きな溜め息をついた。
「ホームシックなんだわ、きっと」
カウンターに目を落としていると、「あのぉ」と呼びかけられて、ビクリと体を震わせた。
「すいません。ここってお城なんですか? すごいなぁ、大きいなぁ」
ミラジョボは慌てて身なりをを整えて、眼前で感激の声を上げて、周囲を見回している人物に目を見開いた。まだ、幼なさの残る顔立ちの青年だったからだ。
一丁前に細長い剣を腰に携えている。
咳払いを一つし、気持ちを切り替える。
「ようこそ、いらっしゃいました。ここは世界の中心の中心。ゼオン18世の住まわれるゼオン城でございます。ご見学をご希望ですか?」
ニッコリ営業スマイル。久しぶり過ぎて、顔が引き攣っているのを自覚する。
「えっと、見学もしてみたいけど、勇者を募集しているって聞いてきたんですけど」
青年はそうするのがまるで当然のような口ぶりで言ってきた。
ミラジョボは、心の中で心底深い溜め息をついた。
皆、欲に塗れて命を落としたがる。
でも、良かった。今はこの言葉しか言えないから。
ミラジョボは冷たく突き放すように言う。
「勇者は間に合っています」




