25話 獣化
翌日。
おれはギルドの前で師匠と待ち合わせているんだけど...
「おはようございます、会長!」
「ああ。ご苦労。」
次々と群狼達がおれに挨拶をしてギルドへ入っていく。
恥ずかしい。
はやく来てくれ師匠!
師匠がやって来た。
「よお、ユウキ若会長。くっくっく。」
ぐぬぬ。馬鹿にして。
「おはようございます!師匠!」
「お前...ほんとにそれで行くのか?」
「はい。何も問題ありませんよね?」
「いいだろう。だが、おれを師匠と呼ぶからには徹底的に指導するぞ。おれの弟子として恥ずかしくないようにな。ちゃんとついて来いよ?」
あれ、これは間違えたか?
「どうした!返事がないぞ!」
「は、はい!」
「まずは東の森までひとっ走りするぞ。ユウキの全力で向かおう。」
狩猟の試験をやった東の森に来た。
「かなり速くなったな。」
「はー、はー、一週間狩り続けてきましたからね。」
「ユウキの実力はもうD級冒険者の域じゃない。スタミナはともかく、トップスピードはおれ以上だ。もしおれが暴走しても生き残れるだろう。」
「ふぅー、暴走?」
「ユウキ、お前は獣化のスキルを持っているか?」
おれのスキルは、
【スキル】
《頑丈》《万能血》《言語理解》《自己鑑定》
《気絶耐性》《拳術 Lv3》
だ。
「獣化はないですね。」
「やっぱりな。魔法に加えて獣化も覚えるように訓練してみるか。」
「獣化って何なんですか?」
「簡単に言うと獣の特性を強めるスキルだ。肉食系の場合は牙や爪が鋭くなることが多いんだが…」
「だが?」
「犬獣人は獣化を忘れてしまった種族と言われていてな。正直どうなるか分からん。ユウキが覚えられる補償も無いからこっちは魔法のついでだな。」
ペット化して、野生を失ったみたいな感じかな?
《その認識で合っています。メルティス様は、激減した犬獣人が戦いで減らないよう、耐久スキルを与えた代わりに、攻撃的スキルを得にくくしました。》
(なるほどな。)
「分かりました。ちなみにどう訓練するんです?」
「極限状態におく。空腹と疲労だな。魔法の訓練と同時並行で行なって行く。普通の獣人ならともかくユウキは犬獣人だからな、かなり厳しく行くぞ。まあお前なら耐えられるさ。…おれも耐えたしな。」
ひぇ。
師匠は炭鉱奴隷として鍛えられてたから耐えられたかもしれないけど、おれは元々日本のぬるま湯に浸かってたもやしっ子なんですけど…
「今、おれの獣化を見せてやる。」
師匠が全身に力を込めたのが分かった。
「ググググ」
身体から何かモヤのようなものが立ち上がり、身体が変化していく。
(デカくなってる)
筋肉が盛り上がり、皮鎧を押し上げていく。
顔もより熊に近づき、牙が伸びていった。
師匠が力を抜いた時、そこにいたのはもはや別人だった。
身長は50cmほど伸び、3m近い。そして肉体の厚みは倍ぐらいになっている。
威圧感は10倍増し。
森で会ったら死を覚悟するレベル。
『これがおれの獣化だ。おれは獣人にしては魔力が多い方だから、かなり身体もデカくなる。』
魔力によって強化具合も変わるのか。
おれもかなり多い方だから、どうなっちゃうんだろう?
『魔法の訓練は人目につきたくない。森の奥に行くぞ。』
そう言うと、どんどん奥へ進んで進んで行く師匠。
鬱蒼と茂った木々をへし折り、下草を踏み潰して進む師匠。
後には化け物の通り道が出来ていた。
師匠のおかげですんなりと進み、山の麓まで来た。
『ここまで来れば、まず人は来ない。たまに火熊が現れるだけだ。』
この世界のヒグマは地球より恐ろしそうだ。
『ふぅ…』
師匠が獣化を解く。
「これでだいたいのイメージは付いたろ?」
「はい。やっぱり疲れるんですか?」
「魔力の消費があるからな。無茶をすれば肉体への負荷も強い。まあ今みたいにただ道を進むだけなら出した事はないし、おれ達獣人の魔力の使い方の一つと思っておけ。ただ身体強化魔法とは合わせない方がいい。身体がぶっ壊れる。」
「わ、分かりました。」
今ので、ただ道を進んだだけなのか…本気の戦闘になったらどうなるんだ。
それにしても魔力の使い方か…
「師匠、指名依頼の件で相談があります。」
「話していいのか?依頼主の情報漏洩はギルド職員として見過ごせないぞ?特に今回は領主様だしな。」
「大丈夫です。たぶん師匠にも耳にも行くと思います。」
群狼達に話してもいいと言われてるし大丈夫だろう。
「おれの耳に…獣人絡みか。」
「はい。師匠は魔牙という組織を知っていますか?」
「魔牙…」
師匠が露骨に嫌な顔をした。
これは知ってるな。しかも嫌な思い出がありそうだ。
「知っている。何度も勧誘も受けている。」
お!これは情報が得られそう!
反応などいただけたら幸いです。
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