23話 情報集め
最強の魔王ねー。
ゲームなら燃える展開だ。
ただ、命がかかってくると楽しんでいられない。
アーサーさんにも勝てないおれには厳しそう。
足掻くべきか、割り切って自由に生きるべきか…
おれは天寿を全う出来るらしいけど、森の木剣のエルフの2人は巻き込まれるかもしれない。
強すぎる魔王を倒したいが、強すぎる勇者に頼ったらまた同じ事の繰り返し。
解決するには、強すぎる魔王を、普通の勇者が倒してくれればいいと思う。
う〜ん。
出来るのか?そんな事?
てか、普通の勇者ってどこにいるんだよ?
オルビスの世界も100年は持つらしい。
なら魔王も勇者もまだ生まれてない可能性がある。
魔王に弱点とか無いのか?
強い魔族から選ばれるなら、弱いうちに倒すという選択肢もない。
負の感情から生まれるなら、根絶やしにも出来ないだろう。
引きこもる知性があるなら、話し合いは出来ないんだろうか?
とにかく、今おれの持ってる情報は少な過ぎる。
決断するには全然足りない。
希望があるのか、ないのかさっぱり分からない。
ただ、少なくとも今を生きてる獣人達を捨てる気にはならない。
メルティス様は、おれたちに無理をして欲しくないらしいけど、情報を集めるぐらいなら問題ないだろうしな。
まずは情報を集めよう!
「う〜ん」
「…」
「う〜ん」
「…ダー!」
「う〜ん」
「あ、あの!リーダー!」
えっ?
「うむ。なんだ?」
「全員集まりました!」
おれは考え事に夢中になっていた。
声をかけてくれたのか。
たしか狩猟部隊の隊長だな。名前はカーギーだっけ?
「ご苦労!おれも今祈りが終わったところだ。話を始める。お前は進行役をつとめるように。」
「はっ!畏まりました!」
まずは出来ることから。
目の前の群狼達を導こう。
「諸君。集まってくれて感謝する!」
「「「はっ!」」」
「これより、群狼の今後について話す!」
「みな清聴せよ!」
「「「……」」」
群狼は、チンピラ→ヤ○ザ→軍隊へ進化したようだ。
もう軍狼って感じだ。
「まず、お前たちに課した規律はこのままで行く。」
「「「…」」」
「だが、おれはトップの座を一時退く。」
「「「!?」」」
「みな鎮まるのだ!」
「「「…」」」
「うむ。いいか、カギルをリーダー代行に任命し普段の運営を任せる。」
ばっ!
「お前、名を名乗って発言せよ!」
「はい!私は第2狩猟部隊 隊長ガギンであります!リーダー代行とサブリーダーとは何が違うのでありますか?」
「貴様!そんな事も分からんのか!」
「申し訳ありません!」
「いや、良い。おれの説明不足だ。」
「リーダー代行には普段は全権を持たせる。おれが指示する時だけ全権がおれに戻る。」
「了解であります!」
「そして、カジルをお目付け役に任命する。お目付け役はリーダー代行が、おれの定めた規律から外れないように監視する役目だ。何か異論はあるか?」
「「「…」」」
「無いならこれで会議を終了する!この時を持って、群狼のリーダー代行カギルへ全権を委任する!」
「「「はっ!」」」
「なお、カギルは現在訓練場の休憩室でカジルを診ている。カジルが目を覚まし次第こっちにくるが、それまでは第一狩猟部隊のカーギー隊長に従え。」
「はっ!」
おれは礼拝堂を出た。
おれが出ないと、誰も席から動かないし。
「疲れたー。」
群狼の三分の一ぐらいは女性だけど、めちゃくちゃ漢臭い。
綺麗に片付いた庭で少し休んでいたら、リーナさんが水を持ってやって来た。
「ユウキ君、お疲れさま。」
「ありがとうございます。リーナさん。」
「領主様のところにはまだいかないの?……何を悩んでいるの?」
さすがシスター!
メルティス様に口止めはされてないけど黙ってた方がいいかな。
リーナさんの悩みを増やすのは本望じゃない。
「勇者が魔王に負けたらどうなるんだろうって…」
「???。歴代の勇者様はみんな魔王を倒すか、少なくとも相打ちになってるから分からないわね。勇者様は女神様から力を授かるし、わたし達は勇者様を信じて支援すれば大丈夫なんじゃないかしら?」
なるほど、敗れた場合はメルティス様が後始末をするからそういう事になってるのか。
「勇者に対する支援って何をするんですか?」
「セレーナ王国と女神教会は聖女を育てて勇者様に預けるのが役割よ。エルフは賢者を、小人は魔導士を、巨人は盾士を、ドワーフ達は勇者様のパーティに武器や防具を支援するのよ。」
「あれ?獣人は何をするんですか?」
「知らないの?…獣人は…勇者バハル様以降は戦力の供給よ。」
「戦力?」
「そう。魔王軍との戦いで最前線を任されてるわ…女神様の加護を受けたと言われる犬獣人は免除対象の種だけどね。」
壁役じゃないか…。
ただ、一度滅びかけたところを女神様が救った犬獣人の保護はかなり手厚いらしい。
「勇者パーティには入らないんですか?」
「わたしが知る限り、バハル様以降はいないと思うわ。魔法使いが多い小人族が、昔から獣人と対立してて協力を拒否してるのよ…犬獣人も戦場に行けと言ってるぐらいよ。実際、獣人がパーティにいなくても魔王に勝ててしまってるのよね。相打ちは増えたけど。」
「そうですか…」
恨みが根深そうだ。
ほとんどは相打ちじゃなくて敗北なんだろうな。
これじゃあ支援したくても出来ないぞ。
「特に今回の勇者は小人族だから、いくらユウキ君が強くてもパーティに入るのは難しいと思うわよ?」
「え!」
反応などいただけたら幸いです。
誤字脱字、気になる点も遠慮なくどうぞ。




