19話 vsカジル
ついにこの日がやって来た…群狼に決着を着ける日だ。
ギルドの訓練場には大勢の冒険者が集っている。
皆、決闘を見に来たのだ。
(どうしてこんな大事になってんの!)
見物客が豪勢だ。なんか司会までいる。
ゲスト紹介が始まった。
まずは特別ゲスト
タカンの街 領主 ヴァイロ・タカン男爵。
長年、タカンの街を発展させて来たタカン家の現当主。
その鋭い眼光は、炭鉱街のクセ者達ですら怯えさせる!…らしい。
(その眼光でおれを睨むのはやめてください。)
居並ぶは70名を超える狼獣人達。
今は新リーダーの意向により、白い服と黒いサングラスに身を包み、全員が後ろに手を組みビシッと背筋を伸ばして立っている。圧巻だ。
ユウキは、教会にいるから清潔そうな白の服と、狼獣人達の目つきの悪さを隠すためにサングラスを武器屋に作らせたのだが、
(もはや、ヤ○ザにしか見えない。)
ついで、C級冒険者アーサー。
炭鉱街の大楯、守護神。
この街の獣人冒険者を束ねるリーダー的存在だ。
先日、B級を目指すことを宣言した。
今回の決闘の片割れの師匠とも言われる。
今は領主の前に立って周囲を警戒している。
(師匠!いい響きだ!)
さらに、B級冒険者セロン
ギルマスのいない現在、この街の人間の最高ランク冒険者だ。
長い間C級で燻っていたが、ついに昇格を果たした。
採取専門でありながら、多くの実力派冒険者からの信頼も厚い。
(おれも信頼してます。)
そして、C級冒険者カギル。
群狼の元リーダー。タカンの街の狼獣人達の顔役。
大勢の狼獣人を配下にした恐怖のカリスマ。
先日、今回の決闘の片割れに敗れ、大怪我を負っていたが回復した。
今日は見物人として参列しているが、その胸中はいかに…
(…)
最後にもしもの時の回復役。
頼れる女神教会のシスター リーナさん!
「「「わーーーー!」」」
(わーーーー!)
ーーーーーー
「さぁ!いよいよ決闘者の紹介だあーー!」
「「「わーーーー!」」」
(おぇ〜。)
知らない男がおれを紹介していく。
「まずは挑戦者を紹介しよう!!新進気鋭の狼獣人!あらゆる攻撃に耐えるタフさ!狙った敵は死んでも噛み殺す執念深さ!悪食のゾンビ狼!ユウキ〜〜!」
ザッ!ビシッ!
おぇ〜〜〜〜〜〜!
悪口じゃん!!
群狼達も、敬礼とかいらないから!
「対するは〜〜〜、狩猟のD級冒険者!元黒の群狼 サブリーダーにして、群狼の頭脳役!灰影の〜カジル〜〜!」
「「「わーーー!」」」
何だよその2つ名!ずるいぞ!
「さて、決闘の前に両者の意気込みをお願いします。」
え?意気込み?!そんなの知らないんだけど?
カジルが喋り始めた。
「カギルさん!見ていてください!おれは今日、こいつを倒して、あなたの元へ黒の群狼を取り戻します!」
「「「お〜〜」」」
カギルは特に反応してないな。
ジッとおれを見てる。
「おれは今日までお前を叩き潰すことだけを考えてきた!必ず勝つ!」
まじか、おれは今日までカエルを綺麗に潰すことばかり考えてたよ。
「さ、挑戦者の方もどうぞ!!」
どうぞ!、じゃないんだよ!
えーーっと…
「カジル!今日はお前をボコボコにして、そのカッコいい2つ名をボロボロのカジルに改名させてやるよ!」
あれ?、これおれも言われた事があったような…まあいいか。
「さあ、両者が位置についた!ここから先は森の木剣 セロン殿にお任せします!」
「…セロンです。公平にジャッジすることを誓います。2人とも、準備はいいね?」
「はい。いつでも大丈夫です。」
「はやくしろ!おれは1秒でも早く黒の群狼を取り戻すんだ!」
セロンさんに向かって偉そうに!
「では…構えて…
カジルが斧を上段に構える。
あれ、振り下ろされたら死ぬよな?
…始めーーー!」
ダンッ!
拳技!「連撃掌!」
ボコボコボコボコボコ!
「死n ばぐはぁっ!!」
開始2秒でカジルは訓練場の壁にめり込んだ。
連撃掌は拳技Lv3で覚えた、5連正拳突き。
おれの撃掌は、パラライフラッグを5匹まとめて粉砕する威力だ。
岩とかは分からない。
岩なんて殴ったら痛そうだしやりたくない。
おれは開始と同時にカジルの元へ踏み込み、斧が振り下ろされるより早く、攻撃を食らわせた。
シーンとしていた観客が騒ぎ始めた。
「お、おい!あれ死んだんじゃ…」
「見えなかったぞ?悪食は何やったんだ?」
「今のは爆撃掌か?」
「ふむ。拳技のレベルが相当高いようだな。」
死んでないぞ。
急所は外したからな。
それと訳知り風に言ってる奴。今のはただの連撃掌だよ。
セロンさんがゆっくり壁の中のカジルに近づき、
「生きてます。 勝者ユウキ!」
おれは片腕を上げた。
「「「うおーーー!」」」
決闘が終わり、観客達が去っていくなか、セロンさん、アーサーさん、リーナさんがおれを祝福してくれる。
「おめでとう。強くなったねユウキ君。」
「ありがとうございます。セロンさんのおかげで覚悟を決められました。」
「まさか10日でカジルを倒しちまうとはなあ。」
「師匠のおかげです。」
「誰が師匠だ!」
「そう紹介されてたじゃないですか。それに、明日からアレを教えてくれるんですよね?」
「…まあな。」
「師匠、よろしくお願いします!」
「私もまさかこんなに早く成長するなんて思ってなかったよ」
「ちょっとだけ無茶しました。でも、気絶するほどじゃないですよ?」
「知ってるわよ。パラライフロッグを狩ってたんでしょ?教会の狼さん達から聞き出したわよ。」
群狼はお世話になってるリーナさんには頭が上がらない。
「それで?お前はどうすんだ?このまま群狼共を率いるのか?」
「いえ、カギルへ返すつもりです。」
「そうか。カギルならカジルの様子を見にいつもの休憩室だぞ。」
「分かりました。決着をつけに行って来ます。」
「頑張ってね!」
「はい!」
おれが休憩室へ行こうとすると、
「待て。」
ん?誰だっけこの眼光が鋭い人。
《この街の領主です。》
あっ!
「なんでしょう、領主様?」
おれは領主に呼び止められたのだった。
「悪食のゾンビ狼よ、お前に話がある。」
反応などいただけたら幸いです。
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