1話 目覚めたら獣人だった
気配を感じて目が覚めた。
「あ!よかったぁ。気分はどう?」
昨日も聞いたような病院で聞く掛け声。
ただ、はじめて見る天井。
「え、えぇ気分は悪くないです」
えっと、確か車にぶつかって......あぁいつもと違う病院に運ばれたのか。
どう見ても重症だったし救急病院だろうな…って!
「身体っ…あぁ良かった。五体満足だ...うっ、くっ」
安心して思わず泣きそうになる。
「だ、大丈夫?!どこか痛むの?」
優しそうなお姉さんだ。
ただ金髪碧眼でどう見ても日本人じゃない。
やっぱり知らない病院か。言葉は通じるし外国に運ばれたってことはないと思うけど…
「大丈夫。どこも痛くないです。もう助からないと覚悟しまして、、、安心したら、つい...」
「きっと大変な事故に遭ったんですね。ここは教会ですから安心して休んでください。」
教会?宗教関連の病院なのか?よく見たら服もそんな感じだ。
「ありがとうございます。どのぐらい気を失ってました?まだ検査残ってます?色々と連絡したい先があるんですが、荷物はどこでしょう?」
「えっと昨日教会の前で見つけて、念のため治癒魔法をかけたの。ただ状態異常の検査はわたしは出来ないの。荷物は見つけた時には何も...」
(魔法?状態異常?)
「えっと、ここってどこの病院ですか?」
「ここはセレーナ王国、タカンの街の女神教会。わたしはシスターのリーナ。よろしくお願いね!」
.....起きたら知らない世界だった
ーーーーーーー
冗談かと思ったが、リーナさんは真剣だ。
盗人か何かに襲われ、ショックで混乱していると思ってるみたい。
窓の外は日本とは明らかに違う景色。
本当に異世界に来てしまったらしい。
リーナさんいわく、おれは教会の前で倒れていた。
お酒の匂いもせず、奴隷の首輪も無かったので、安全な獣人だと判断して教会で手当してくれたらしい。
獣人。
ゲームとかでよく見かける耳や尻尾の生えた人達。
なぜかおれは黒い毛並みに、ふさふさの耳や尻尾が生えた、獣人。それも少年になっていた。
「なんでだ!?」
「本当に大丈夫?」
「だ、大丈夫です…」
思い当たるのは事故の後に聴こえた女性の声ぐらい。
意識が朦朧としていたのに、クリアに聴こえていた。
あれは誰だったんだ?
まあ、とにかく今はここがどんな世界なのか知りたい。
「別の世界から転生したから何も分かりません」だと怪し過ぎるよなあ。
助けてくれた恩人に嘘はつきたくないが、このまま勘違いしていて貰おう。
「うんうん。きっと怖い目に合ったのね…炭鉱でも事故で一時的に記憶が飛ぶ人達がいるわ。ユウキ君も遠慮せず何でも聞いてね。」
リーナさんによると、
セレーナ王国は純粋な人間種が治めている国で、女神教は国教。
人間種の国だが、炭鉱の街タカンでは体力のある獣人は珍しくないらしい。
人間種の国だけど、この街なら獣人のおれが歩いてても浮かずに済みそう。
ただし、身元を証明できる物が無いと、警備隊にバレた時に捕まるらしい。
おれは何も持って無かったが、奴隷や犯罪者が付ける首輪がなく、お酒の匂いもしなかったので子供達と教会へ運んでくれたらしい。
奴隷制度があるのか…絶対に捕まりたくないぞ。
本当は多少のお布施を取るらしいが、手持ちが無いのは明らかなので今回は無料にしてくれるとのこと。
完全に命の恩人だな。この恩はちゃんと返そう。
ただその前に
「あの、持ち物を全て失くしてしまって…身分証明になる物は新しく作れますか?」
「獣人の子がいきなりとなるとあんまり選択肢はないかも…街の中には入れてるから、炭鉱奴隷として雇って貰うか、冒険者ギルドに登録して冒険者カードを作るのが良いんじゃないかしら?」
冒険者!
炭鉱奴隷以外の選択肢があって良かった!
「冒険者ギルドについて教えて貰えませんか?」
「簡単なことしか知らないけど…たしか登録は15歳から。依頼は採集、探索、狩猟の3つ分類されてて、登録の時に適正試験がある。ギルドに行ったら詳しく教えて貰えるはずよ」
15歳か…おれって何歳なんだ?
この世界に生まれて1日なんだけど。
「あの、年齢ってどうやって確認するんですか?」
「大きい街のギルドなら鑑定士がいるけど、だいたいは自己申告のはず。冒険者は年齢より実力主義だから。」
良かった。なんとかなりそうだ。
「ユウキ君、若いのにとっても礼儀正しいのね〜」
そう言って頭を撫でてくれる。
「せっかくだし冒険者ギルドに行く前に礼拝堂で祈って行かない?教会の前で倒れていたのも何かの縁。今ならパンも付けちゃうわ!」
はやく身分証が欲しいけど、お世話になったリーナさんの誘いは断れないな。パンも欲しいし。
獣人に転生しても、断れない日本人気質は変わってないみたいだ。
「わかりました。せっかくなので祈らせてください。」
「良かった!わたしもこれから朝のお祈りをする所だから着いてきて!」
喜ぶリーナさんの後に続いて、おれは前世も含めて初めて礼拝堂に行くことになった。
2話目です。拙い所が多々あると思います。
感想などいただけたら嬉しいです。
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