8話 冒険者試験③
今日は最後の適正試験。
おー、朝のギルドは賑やかだ。色んな冒険者が依頼を受けてる。
その半分ぐらいは獣人だ。
街でもよく見かける狼獣人や、鱗が生えてる人、鹿角が生えてる人、手足が長めの猿っぽい人なんかもいる。
探し人はデカくてすぐ見つかった。
「今日もお願いします!」
引き続き狩猟試験の試験官もアーサーさん。
「元気そうだな。試験は森でやる。受付で初心者用の狩猟セットを借りたらすぐ出発しよう。飯は用意してあるから森の前で食べよう。」
ついに街の外!やった!魔獣とか狩るんだろうな〜♪
試験だけどかなり楽しみだ。
受付でメルさんから初心者セットを借りる。
「いーい?森には魔獣が出るわ。絶対にアーサーから離れちゃダメ!…それから森で何か拾っても口に入れちゃダメよ?それじゃ頑張って!」
「はい…」
やばい。
採取の試験を見られていたせいで、何でも口に入れちゃう子だと思われてる。
犬耳が周りのヒソヒソ声を拾う。
「(あいつが悪食のユウキだ)」
「(毒草を食べるらしい…)」
「(アーサーさんの腕も食べようとしたらしい…)」
「「「(嘘だろ?!)」」」
おれの評判がおかしい。
よし、はやくギルドから出よう!
先にギルド前で待っていたアーサーさんと一緒に、冒険者や炭鉱労働者の流れに合わせて歩く。
「森に行くには東門から出る。」
門番はいたが街から出る分には自由なようで、おれたちはあっさり街から出たのだった。
街の外は草原になっていた。
「異世界だ…」
深呼吸。
遠くに山々が見える。山の端の森が今回の目的地だ。
「ははは。街の外に出たぐらいで大袈裟だなー」
乗り合い馬車が来た。
冒険者や炭鉱労働者が次々と乗り込む。
ちょっと狭そうだな…
「何見てんだ?おれたちは走るんだぞ?」
「えっ?」
「これも試験に入る。1時間ぐらいで着くからお前の体力なら問題ないはずさ。」
まじか?!
ランニングなんて体育の授業でしかやった事ない。
1時間なんて走ったことないぞ!
しかし有無を言わさず走り始めるアーサーさん。
ハッ、ハッ、ハッ…
〜〜10分後〜〜
あれ?けっこう余裕だな。
馬車の中から挨拶してくる冒険者に手を振る余裕がある。
そういえばおれの体力はBだった。
ステータス万歳!!
あっ!あの人首が長い!キリン獣人かな〜。
1時間後、おれは余裕をもって森まで到着した。
ーーーーー
タカンはセレーナ王国 東の端にある炭鉱の街。
そこから東に馬車なら20分、走って1時間で炭鉱のあるブラン山脈の裾野に着く。
ーーーーー
アーサーさんから渡された干し肉とパンを食べながら、森での注意事項を受ける。
依頼以外の生き物を無闇に狩らない。
火魔法や火をつけるマジックアイテムは気をつける。
狩った獲物は速やかにアイテム袋に入れる。
血抜きは他の魔物が寄ってくるので安全な場所で行う。
などなど
「さ、これから森に入る。おれから離れるなよ。」
「はい!」
初心者セットの短剣を腰に差し、アーサーさんに続く。
気持ちは探検隊だ。
しばらくするとアーサーさんが立ち止まった。
「見ろ。これが角ウサギの足跡だ。」
おー。今回の獲物の手がかり。
足跡を追うのかな?
「さ、臭いを嗅いでみろ。」
「え?」
「どうした?はやくしろ」
地面に顔を近づけて嗅いでる。
「あー、なんか獣っぽい臭いが…」
「よし臭いは分かるな。それじゃあその臭いを辿って進んでみろ。ここからはおれが後から着いて行く。」
これ人間は参考に出来ないやつだ。
獣人の鼻が必須。
地面や空気中をクンクンしながら進むと、10分ぐらいでおれがギリギリ入れそうな穴に辿り着いた。
「角ウサギの巣穴で間違いない。一度も見失わずに済むとはいい鼻を持ってる。」
「そうなんですか?」
「あぁ、肉食系獣人の名に恥じない嗅覚だぞ。」
褒められた。
獣人にとってはかなりの褒め言葉な気がする。
だいぶ嬉しい!
次はエサをしかけて待つ。
巣穴から少し離れた所にアイテム袋から取り出したウサギ用のエサを放つ。
刃渡り50cmほどの短剣を構えて、様子を見ていると、少しして穴から角が見えた。
続いて頭が出てくる。
地球のウサギよりデカい。1mぐらいある。
周りをキョロキョロ見たデカ角ウサギは、ゆっくりエサに近づく。
もう少し引けつけて…
おれと巣穴の距離は約15m。
獣人の瞬発力なら1秒で到達する。
もう少しか?
今!
全力で飛び出す。
おれに気付いたデカ角ウサギは体を翻したが、すでに剣の間合いだ。
ザシュッ!
「ギゅぅー」
通り過ぎざまに振り抜いた短剣で斬りつける。
まだ動いてる!
慌てて引き返して剣を首元に突き立てた。
終わった…
哺乳類を殺すのは初めの経験だったが、獣人の本能のおかげかあまり忌避感はない。
やったのか…
「ほらほら、アイテム袋にしまうまでが狩りだぞ!」
あっ、そうだった。
達成感に浸ってしまった。
慌てて角ウサギをアイテム袋にしまったところで声が聞こえた。
《告。主のレベルが上がりました。》
キターーー!
昨日ぶりのヘルプさん!
始めてのレベルアップ!
どれどれ…《自己鑑定》!
ーーーーー
名前 ユウキ・イトウ
年齢 16
種族 犬獣人
レベル 1→3
状態 健康
体力 B
攻撃 D
魔力 E→D
防御 B
精神 B
素早 D
【スキル】
《頑丈》《万能血》《言語理解》《自己鑑定》
【称号】
《転生者》《天界に到達せし者》
ーーーーー
レベル3になった!
けど、ステータスは1つしか上がってない?
《否。ランクの変更はありませんが、ステータスは上昇しています。》
あ、そうなのね!
じゃあ、このままレベルを上げていけば他のランクも上がる?
《是。》
よし!なら問題なし。焦らず頑張ろう!
「どうした?始めての狩りで気分でも悪くなったか?」
アーサーさんが心配して声をかけてくれた。
「気分は大丈夫です。レベルが上がったみたいでして。」
「ほぅ自分のレベルが確認できるのか。自動防御といい便利なスキルを持ってるな。それで何レベルになったんだ?」
「1から3になりました。」
「……は?? 待て、お前レベル1だったのか?」
「そうですけど…」
「あれだけの能力があって!? 16才だろ?全くレベルを上げずにどうやって生きて来たんだ?…いや、そうか犬獣人だもんな…戦う必要なんて無いか…」
だいぶ驚かれてる。
「レベル1にしては強いですか?」
「破格だろうな。てっきり20は超えてると思っていた。冒険者を目指す16才だと、だいたいそれぐらいなんだが…」
どうやらおれのステータスは初期にしては破格の数値だったらしい。
その後、同じ要領でさらに5匹の角ウサギを狩って、タカンの街まで帰った。
さらにレベルが上がったおかげか、来る時よりももっと楽に帰れた。
反応いただけたら幸いです。
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