8 ご褒美に
新学期が始まった。
昨年は夏以降色々あったけど、冬休みにリフレッシュして、マリンは気分上々、いい出だしだった。
卒業試験では8位と、上位10位以内に入ることが出来て、廊下に張り出された。
「マリン!凄いじゃない!!」
「サーヤだって5位で流石だわ!相変わらず凄いよね!」
「まぁねぇ〜。そうだっ!!今日お祝いに放課後にカフェに行かない?」
「いいわね!賛成〜〜!!」
サーヤは万年上位をキープしている優等生。流石は伯爵令嬢である。私はいつもギリギリ10位に届かず、今回初めて上位に入ることが出来た。
伯爵家の侍女になる為にと、冬休み明けから時間をみて、伯爵家での勉強会が始まったのが、今回の結果に繋がっている。
今までは自領への研究に力を注いでいたが、今度は伯爵家に恥じないように知識を広げて学んでいる。
伯爵家が専用の教師も手配してくれて、感謝しきれない程である。
最初は申し訳なく感じていたが、侍女となって伯爵夫人と一緒に行動していく際に、知識不足で仕事に支障がでてはいけないと言われ、一生懸命学ばせて貰っている。
もともと勉強は嫌いではないので、新しい知識はとても楽しい。子爵家以上に伯爵家としての知識やマナーをマスターする為に、今は努力している最中。
伯爵夫妻もサーヤもルート様も優しくて、とても良くしてくれる。
働き出したら恩返しと思って、精一杯勤め上げようと思う。
一生懸命に打ち込むことがあると、ダンの事が気にならなくなった。
視界の端にたまに映り込むこともあるが、ダンは相変わらず、リリアン伯爵令嬢と一緒に過ごしているみたい。
それを見ても、胸が疼くことはなかった。
思っていたより、自分が大丈夫になっていて、逆にビックリする。
――笑って過ごすことが出来て、本当に良かった。
当時は苦しくて押しつぶされそうな想いだったけど、今では嘘のように心が軽い。
何より持つべきものは親友だわ!
学園生活での何よりの宝物はサーヤだと言える!
一生大切にしていこうと思う。
「マリン、行きたいお店とかある?」
「うーん…それじゃ〜【ミランジョ】がいい!!」
「えっ…!!…マリン。それって、あのお店?」
「そう!あのお店!」
「私は良いけど、……大丈夫なの?」
「ええ!サーヤとの大切な思い出に塗り替えたいの!!だって素敵なお店なのに、嫌な思い出の場所にしたくないの。…サーヤ付き合ってくれる?」
「っっ! そういうことなら!もちろんよっ!!」
サーヤがガバっと抱きついてきた。
私も抱き返した後に、一緒にうふふと笑い合った。
☆☆☆☆☆
サーヤが朝の時点でお店に席は確保するように手配してくれていた。
放課後サーヤとお店に着くと、店の前に、何故かルート様がニコニコしながら手を振っている。
「やぁ!マリン嬢!お祝いって聞いたから、ご一緒してもいいかな?」
「…………地獄耳め」
サーヤが隣で何か呟いたが、上手く聞き取れなかった。
「えっ?」
「ううん。何でもないわ。さっ!行くわよっ!」
サーヤが私の腕をとり、腕組みをしてお店の中に入っていく。後ろからルート様が、ヤレヤレといったポーズを取りながら、ニコニコと着いてくる。
席に着いてメニューを見ながらワイワイするのも楽しかった。
サーヤはガトーショコラとアールグレイを、ルート様はチーズケーキと珈琲、私は悩んだ挙句、1番最初に来店した時に食べた思い出の品を頼んだ。
「ん〜〜っ!!おいしぃぃ〜~!!」
お店名物のアップルシナモンパイを、口にいれるとパリっとしたパイの食感と、ねっとりとした食感のアップルの酸味とキャラメルの甘味、シナモンの風味が絶妙なハーモニーを奏でている。
思わず頬に手をあてて、ほぅ……と溜息が漏れる。
――やっぱり美味しい…また食べれて良かった。
マリンがウットリと美味しそうに食べる姿を、ロジヤータ姉弟はニコニコと眺めている。
「ルート様も年度末試験で1年首位だったそうですね。おめでとう!!みんなでお祝い出来て嬉しいわね!」
「マリン嬢!ありがとうございます。マリン嬢もおめでとうございます。みんなでご褒美ですね」
「うふふ。私しあわせ者だわ。ここに、サーヤとルート様と一緒に来られて、本当に良かった……」
――美味しいご褒美と大切な人達
素敵な時間を過ごして、またこのカフェが好きになれた。
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