6 ダン~side~
これからは、投稿時間を朝7時に変更しようかと思います。
『優勝!!ダン・イオート!!!』
俺は優勝台の1番上に登り、高々と優勝旗を掲げると、割れんばかりの拍手喝采が会場中に響きわたった。
学園で最終学年となり、騎馬部の引退試合で俺は優勝したのだ。
次日に学園長から呼び出され、優勝者には王都騎士団への推薦状を出すこともできる、という話だった。
王都騎士団へ入団出来ることは名誉あることだし、優秀な成績を残せば騎士爵も得ることもできる。それに給料もよい為、人気の職業だ。
しかしその為、入団すること自体がなかなか難しいといわれている。
ここ数年は大会優勝者が、跡継ぎの長男が多く、卒業後は自領に帰ってしまうために、騎士団への推薦状は出してなかったらしい。道理で俺も部の連中も、推薦状が貰えるなんて知らなかった訳だ。
俺は子爵家の三男で、跡継ぎではない…がしかし、隣領地のマリンのディズル子爵家の婿として卒業後の進路は決まっている。
「すぐに返事はしなくていい。もし必要なら言ってきてくれ。まずは優勝おめでとう!」
「ありがとうございます!」
学園長室からクラスに戻ると、色んな令嬢達から話しかけられるようになった。
「ダンさま〜。優勝おめでとうございます〜」
「騎馬部の大会で優勝なんて凄いですわ!!」
「ダン様、こちら良かったら私からのお祝いです」
「ダンさま、優勝の秘訣って何ですの?」
「ありがとう。祝ってくれるのは嬉しいんだが、婚約者もいるから、そんなに近づかれると……」
「いやですわ〜。私達、同じクラスメイトじゃないですか」
「そうです!そうです!クラスメイトなんだから、お祝いぐらいさせてくださいな」
「お祝いしてるだけですもの。何もそんなに婚約者に気を使わなくっても」
「そ、そうか」
そう言われてしまうと、何度も無碍にするのも憚れた。
それに、今までずっと幼い頃からマリンと婚約していた為、他の令嬢達との交流も、それ程あった訳ではなく、周りの男子からの妬ましい視線を感じ、『女子に人気な俺…モテる男』として、優越感も感じ、悪い気はしなかった。
ある日、周りにいた令嬢と話していると
「噂で聞いたのですが!騎馬の優勝者は王都騎士団に就職できるって!!ダンさまも就職なさる予定ですの?」
「……ああ、それは…まだ保留にしていて」
「えっ!?保留ですの?王都騎士団ですのに?」
「だが……卒業後は、婚約者の婿養子になる予定になっているから」
「え〜!あの王都騎士団ですよ?勿体ない!!」
「そうですよ〜。優勝者のダンさまは、王都騎士団に行くべきですよ!」
ここまで騎馬部で頑張ってきたからこそ、俺にとっても王都騎士団はずっと憧れの存在だった。
推薦状と聞いて、舞い上がるほど嬉しかったし、本当は喉から手が出るくらい欲しいと思った!
だが、それはマリンの家を継がないとのいうことでもある。
マリンとは幼い頃に決められた婚約だ。あと半年後の卒業とともに領地に戻ることになっている。
王都騎士団に入りたいのに、婚約がある為に入れない。
「ダンさま〜、ダンさまってイオート子爵家の三男でしたわよ?お相手も隣領地だからと婚約したとか…」
「婚約は政略的なものですの?」
「…ああ。そうだ。それが何か?」
確かに、マリンとは隣領地で同じ年齢で仲も良かったから婚約者になっただけだから、政略的と言われれば…そうだな。決して始まりは恋愛ではない。
「もし王都騎士団になるのなら、うちの伯爵家なら王都で商売していますから、そのまま王都に残れますわよ!」
「あっ!ズルいですわ〜リリアン様!抜け駆けですわ〜」
「ダン様!それなら私も王都の隣に領地がありますし!同じ子爵家で気兼ねもないかと〜」
「あらあら!それなら私だって〜、ダンさまはどんな女性が好みかしら?」
「えっ…と!?」
「あら〜!同じ政略結婚なら、私は伯爵家の次女ですので、婿に入らずに王都騎士団に就けて、王都にいれば伯爵家からも融通が利きますわ」
「………し、しかし……」
「だって!ダンさまは優勝者ですのよ?王都騎士団なんて凄いじゃありませんか!それに反対するような人は、本当にダンさまのことを愛してらして?」
「ダン様のことを思うなら、快く王都騎士団に送り出すのが本当の愛ですわ。それが出来ないなんて…ダン様のことより、自分のことが好きなのよ」
「そうですわ。自分の領地のことが優先で、ダン様の幸せは考えれば……ねぇ?皆さんもそう思うでしょ?」
「そうですわ〜」
それからは、ますます令嬢に言い寄られることになった。
そのうちに俺もマリンとの婚約がなければ、こんなに悩まずに憧れの王都騎士団に行けるのに!と考えるようになった。
マリンの両親も弟も決して悪い人達ではないが、婿養子で気を使ってずっと生活をしていく事よりも、騎士団の方がいいのではないかと思えてくる。
リリアン伯爵令嬢の話だと、王都での生活の保障もあった上で、好きな王都騎士団にも入れる。
俺の人生…俺のことを考えれば、王都騎士団に入れるようにと、マリンからも話があるべきなのに!
マリンからは、「今後どうするつもりだ」とばかり連絡がくるだけだ。皆が言うように、マリンは俺の事を何一つ考えていないように思えてくる。
マリンの存在にイライラする。
会うことも辞め、手紙も読まずに捨てた。
――だから、知らなかったのだ…。カフェの日も、婚約解消されていることも。
お読み頂き、ありがとうございます。
良かったら、☆で評価して頂けると嬉しいです。
また別作品ですが、3月6日に『私達、裏庭だけの関係なのに』がコミカライズ発売予約になってます。




