表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の初恋は終わった…はずですが?  作者: あかさたなっちゃん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/16

3 伯爵家訪問

「お久しぶりです、マリン嬢。姉さん、おかえり」


キラキラの笑顔でルート様が、玄関でお出迎えをしてくれていた。


ルート・ロジヤータ伯爵令息。


サーヤにとても似ていて、サラサラな金髪と爽やかなブルーの瞳を持っいる。


出会った頃は私より少し低かった身長が、年々どんどん背を抜かされ、今ではスラッとした長身となっている。

一見クールそうな見た目とは裏腹に、弟独特の人好きそうな雰囲気がある。


「お久しぶりです、ルート様。」


挨拶とともに、スッと手を出されたので、そっと手を軽く乗せると、ルート様に流れるようにエスコートされながら、伯爵家の中へと案内される。


「ちょっと!私は放置??」


チラっとだけルート様がサーヤを振り返るが、真顔で、


「姉上も相変わらずお元気そうで何よりです」


そう言うと、すぐに私にニコニコと目線が戻り、「さぁ、どうぞ」と、気にもせずにエスコートを続けた。


相変わらず仲良しな姉弟のジャレあいに、私もクスっと笑いが溢れる。すると、


「マリン嬢の笑顔は、今日も可愛らしい」


トロっとした微笑みで、ルート様が私をみてくる。


「あら、お世辞でも嬉しいわ。歳上の私でも可愛いって思って貰えるなんて」


「本心ですよ。」


人懐っこい笑みを浮かべて微笑むルート様は、相変わらず人たらしである。学園でもファンクラブがあるって噂で聞いたけど、確かにって心の中で頷く。


案内された所は、いつもの談話室ではなく、応接間だった。中には、ロジヤータ伯爵夫妻が待っていた。


まさか伯爵夫妻がいるとは思わず、一瞬ドキっとしたが、マリンは子爵家令嬢として、マナーに沿って挨拶を述べた。


「ディズル子爵家長女、マリンが挨拶申し上げます。本日は伯爵家にお邪魔させて頂いております」


「あぁ、ディズル子爵嬢。まずは座ってくれ。いつもサーヤとルートから君の話しを聞いてる。それに、今回の事もサーヤから事情は聞いたよ」


「大変だったわね…」


優しく労りの言葉と共に、伯爵夫妻から正面のソファに座るように促される。


夫妻とは以前夜会でサーヤの紹介で挨拶をしたことはあっても、こうして伯爵家で改まって会うのは初めてなので、緊張する。


「マリン嬢、こちらに」


ルート様がソファまでしっかりエスコートしてくれる。「緊張しなくて大丈夫です」って小声で囁かれ、目線でも大丈夫だと、優しく微笑んでくれた。


そして私の隣の空いたスペースに、流れるような仕草で、そのままルート様が座ろうとした瞬間に、


「貴方はあっちよ!」


サーヤがルート様をシッシッと手で追い払うようにしてルート様を退かし、改めてサーヤが私の横にササっと座った。


ルート様は渋々とした様子を見せながら、斜め前の1人掛けの椅子に座った。


そんな姉弟のやりとりを、穏やかな微笑みで夫妻が眺めていたので、ルート様がサーヤ様にちょっかいを出す様子は、いつもの仲良し姉弟のじゃれ合いだと、私も微笑ましく感じる。


見た目は大人びてきたけど、いくつになってもルート様はお姉ちゃん子だなぁ。


「サーヤからの手紙だと、ディズル子爵嬢は婚約解消して、跡継ぎを弟に譲るという話だったが…本当かね?」


「……はい。お恥ずかしい話ですが。昨夜父へ手紙を書いたので、まだ正式にとは言い難いですが、そのつもりでいます」


「…そうか。卒業後に住み込みで働ける場所を探しているとのことだが………うちはどうかね?」


「えっ!?」


思わず声が出てしまった。


伯爵夫妻、ルート様もニコニコと微笑みを浮かべている。隣を見ればサーヤも笑顔のまま、そっと私の手を握ってきた。眉尻を下げながら


「卒業後は、私も婚約者のカルビン様の所に行ってしまうから、私が居なくなると、うちには父とルートだけになってしまうでしょ?だから母の話し相手として、マリンに母の侍女はどうかしらと思ったの。それに、卒業後も私の家なら、私もマリンにちょこちょこ会えるのは嬉しいわ」


「サーヤ…」


「そうなのよ〜。娘が居なくなると、うちには男ばっかりでしょ?もし貴女が良かったら、私の侍女として来てくれると、とても嬉しいわ」


コテっと首を傾げ、頬に手を置きながら、困ったわ〜という仕草をする伯爵夫人。


「そーだよ!マリン嬢!是非ともうちに来て!そしたら俺も嬉しい!!」


椅子から身を乗り出し、サーヤとは反対側の手を取られ強く握りしめられた。


――ど、どうしましょぅ……。


突然の予期せぬ提案に、考えがまとまらない。


伯爵家の侍女として、仕事が決まるのは喜ばしいことだけど。それでも……私一人の判断では難しい。


「ありがとう御座います。…お返事は子爵家の父の意向を聞いてからでもよいでしょうか?」


そう言って私は頭をさげた。


この時に、伯爵家の皆が獲物を狙った微笑みをしていたことを、私は全然気づかなかった。


「ええ、ええ。勿論よ。お父様と相談してみてからで大丈夫よ。いい返事を待っているわ」


「ゆっくりしていってくれ」


そう言って伯爵夫妻は笑顔のまま、応接間から退出していった。


ほぅ……思わず、一息ついた。


サーヤの両親とはいえ、伯爵家の目上の方に、失礼がないよう、思っていたよりも緊張していたみたいだ。


呼吸とともに身体から強張りが消えるのがわかる。


「マリン。私達も裏庭の温室ガーデンに移動しない?」


緑をみながら気分転換しようと提案されたので、承諾の意味を込めて頷くと、サッと目の前に手を差し出された。


どうやらルート様のエスコートはまだ続くみたいだ。流石、伯爵令息。スマートにジェントルマンだ。


「ありがとう。ルート様」


ルート様の手を取り立ち上がると、サーヤは苦笑いしながら、「ルートはブレないわね」と、ルート様を見ていた。


伯爵家の温室は冬でも、素晴らしく管理されており、ポカポカと温かく、緑を眺めながらお茶を頂き、姉弟との楽しい会話から笑みが溢れる。


とても穏やかな時間に、昨日までの事が嘘のように、悩みや不安が溶けていった。

お読み頂き、ありがとうございます。

良かったら☆で評価して頂けると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ