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私の初恋は終わった…はずですが?  作者: あかさたなっちゃん


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2/12

2 友の存在

マリンが寮に戻ると、同じ部屋のサーヤ・ロジヤータ伯爵令嬢が心配そうに待っていた。


子爵と伯爵と身分は違えど、同じ寮室で3年間共に過ごした、唯一無二の親友。


「………会えた?」


フルフルと横に力なく首を振る。


凍えて上手く動かない手で、ぎこちなくコートを脱ぐと、暖かな室内の空気を全身に感じると、固まっていた身体が少し緩まるの感じた。


「そう……。夕飯は?」


サーヤが眉を下げ、心配そうに問いかけてきた。


私はもう1度首を横に振る。

まだ声を出す勇気がなかった。声に出すと、一緒に止まった涙がまた溢れてしまう気がして…。


「ちょっと待ってて!」


そう言うと、サーヤは寮室にある簡易冷蔵庫から、洋梨のコンポートを取り出してきた。


「今夜の夕飯のを、後で食べるってからって、持って帰ってきておいたの。良かったら食べて?」


「……ありがとう」

やっと声がでた。


サーヤの優しさで、マリンの固く強張っていた身体も心も解けていく。それと同時に、心配させまいと寮に入る前に、止めていた涙がまた溢れてきた。


「…っ、…、ぅ……」

ギリギリ我慢していた想いが、嗚咽となって漏れてしまう。


蹲って泣き崩れているマリンの背中を、そっとサーヤ嬢が撫でる。


「…サーヤ、……私、…、わ、わたし……」


「…ええ。マリノ、……貴女は何も悪くないわ」


「ぅぅゔ〜っ……、っうぅ……」


とめどなく涙が溢れ、自分でもどうやったら止まるのか分からなかった…。



――どれ程泣いていたのだろう…。


瞼が重だるく、きっと腫れている。


私の気持ちが落ち着くまで、サーヤが寄り添って隣にいてくれた。


ソファに隣同士に座り、何も言わずに、そっと背中に置かれたサーヤの手の温もりが有難かった。


静かな部屋のなかに、私のお腹からグーっと可愛らしい音が響く。


こんな時でも、身体は生きてく為に必要なものを欲しがるものなのね。


「…ははっ…おなか…は、正直ね」

俯いていた私は、ゆっくりと顔をあげる。


隣からクスっとした柔らかな微笑みと共に「温かいお茶を入れてくるわね」と声がかかり、やんわりとサーヤがマリンの背中を一撫でしてから、キッチンの方へと席を立った。


暫くすると、リラックス効果のあるカモミールのハーブティの香りが部屋に広がった。


温かいお茶と、コンポートをお腹に入れると、マリンの気持ちも思考も少しずつ、落ち着きを取り戻してきた。


温かいカップを両手でつつみ込み、私は顔を上げた。


「サーヤ、ありがとね。私………もう彼を想って傷付くのは、今日で終わりにするわ」


「マリン……」


「私ね…。ダンとなら2人で領地を盛りたてて行けると思って、学園生活を頑張ってきたけど…。お父様に相談して、子爵家の跡取りは弟に譲ることにする。今年10歳になるし、まだ領地経営の教育には間に合うもの」


「でも…マリン、領地の為にって論文も書いて、新事業も始めるって、…特許の申請もして…、あんなに頑張ってたのに、本当に……いいの?」


「……いいのよ。今から卒業まで残りの期間で、新しい婿探しなんて無謀だもの。それに新事業も、領地の為になれば、父でも弟でも、誰がやってもいいもの」


「そう……マリンはこれからどうするの?跡継ぎにならないなら……?」


「う〜ん……文官の申し込みは既に終わってしまってるし。働き口を探さないと…。家庭教師とか、侍女職とか…、何処かいいところがあればいあんだけど…」


とくに優秀な者は文官を目指す人が多いが、一般的には、婚約者もおらず、跡取りでもない令嬢は、大体が卒業後に、貴族家の幼子の家庭教師や、高貴な方の侍女に就職することが多い。


どっちにしても、基本的に紹介や伝手がないと難しいのだが、マリンは自分の領地を継ぐつもりでいたので、ある程度は貴族社会に顔が利くけれども…。


……良い条件の所はもう残ってないだろうなぁ。


それに、出来れば卒業後にそのまま、住み込みで働ける職があればいいんだけれども。

実家を弟が継ぐなら、目上の姉が出戻って実家に居るのでは、今後の弟の婚約者も決めづらいだろうしね。


「マリンなら文官も目指せたのに……。侍女か家庭教師かぁ……う〜ん……」


サーヤも私と一緒に、頭を悩ませていたが、暫くすると、サーヤがポンと手を打った。


「マリン!侍女でもいいなら、私から紹介出来ると思うの!お願い、マリン!!自分で動き出すのは、ちょっとだけ待ってて貰えないかしら?」


「え?サーヤ!!それは凄くありがたい話だけど、……いいの?」


伯爵令嬢のサーヤの伝手は、私の子爵家の伝手より頼もしいものがある。

ルームメイトとしての付き合いだけど、ここは藁にすがる思いで、サーヤの提案を受け入れた。


「勿論よ!!マリンは何も心配しないで待ってて。……そうだ!明日にでも、私の実家に遊びに来ない?」


ウフフっと、サーヤが何だか楽しそうにしている。私も何だか一緒にフフっと笑えてきた。


何一つ未来が分からないけど、今までダンの事でウジウジと悩んでた自分とは、今日で決別しよう。


もう恋に夢見る少女じゃいられない。


しっかり未来を見据えて、自分の人生を歩んでいかないと。


サーヤの伝手を借りる事になるなら、一度伯爵家にも挨拶しておいた方がいいだろう。


「明日?……突然の訪問でも大丈夫なの?」


「ええ。勿論大丈夫よ!ルートが喜ぶわ」


「明日はルート様もいらっしゃるの?……今は卒業式前で生徒会も凄く忙しいって聞いてるけど?」


「ええ。きっと明日は意地でも、戻って来るんじゃないかしら?」


「??そうなの??」


「ええ。大事な時だからね。フフフ」


サーヤには2つ下の弟がいて、今は同じ学園の1年生で、首席で入学して大変優秀な成績。

入学すぐに生徒会から勧誘されて、今は書記をしてたはずだ。


サーヤと知り合ってから何回か、ロジャータ伯爵家に遊びに行っているが、サーヤとルート様はとても仲が良くて、サーヤと2人でお茶会していると、必ず挨拶にくる。


お姉ちゃん子の可愛らしい弟君である。


「善は急げだわ!!」


パチンと手を打つと、サーヤは急げとばかりに実家に便箋を書き始めた。


私も父に至急に手紙を出さなきゃ。

ダンの事や、跡取りについて、新事業について、そして私の今後の事も……。


私もサーヤと一緒になって、便箋と向き合った。



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