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反響

 春道は玄関から一歩も外に出られずにいた。

 インターホンが鳴るたび、心臓が跳ねる。

 宅配か、管理人か、それとも……考える前に身体が強張った。

 モダンテイストを基調とした部屋は、今やゴミが散乱していて見る影もない。

 床に置いたカップ麺の容器に、一匹のハエが止まる。

 叩き潰そうとするも、いとも簡単にかわされた。

 カップ麺の匂いに、空腹よりも安堵を覚えていることに気付く。

 腐ってはいない。まだ食べられる。

 なぜ、そんなことを考えたのか分からなかった。


 ──二宮さんも、こんな感じだったのだろうか。


 脳裏をよぎった光景をかき消そうと、かぶりを振る。

 耳元で、ブゥンと湿った羽音が鳴った。



 SNSでは配信終了直後から議論が白熱し、春道の小説の出版社にまで問い合わせが及んだりと関係各所を巻き込む騒ぎとなった。

 事態を重く見たジンは、春道と一ノ瀬が出演している動画のアーカイブを削除したが、それが火に油を注ぐ結果となったのは言うまでもない。


 春道が炎上騒ぎを知ったのは、配信終了から三時間が経過した頃だった。

 沈静化するには謝罪よりも沈黙が効果的だと知っていた。

 しかし二宮の死を題材に執筆した短編小説『fly away』が発見され、それを削除したことでさらなる反感を買った。

 削除される前に保存していた有志によって、『fly away』はネット上に晒された。

 一次選考で落ちた駄作が、日の目を浴びたのだからいいだろと揶揄する声もあり、精神的に追い詰められていく。


 我慢の限界を迎えた春道は、沈黙を破ってSNSに『金はすでに返した。常夜怪談帳で喋ったことは全て自分のエピソードで事実である』と投稿。

 擁護の声は皆無だった。


『でも冷静に考えると、どっちが真実かは分からないよな』

『春道ダウトで確定でしょ』

『一ノ瀬もヤバい。遺体搬出されるまでずっとドアスコープ覗いてたんだぞ』

『そういえば迷惑系が凸ってたな。無名すぎて全く話題になってないけど』

『部屋の前で死亡認定して騒いでたな。警察呼ばれて春道生きてるの確定したけど』

『ビビッて外に出られなくなってるじゃん。このまま部屋をゴミ屋敷にして二宮ルートに入るんじゃね?』

『自業自得。エピソードパクった挙句、人の死利用してキモイ小説書いてるんだし』

『恋愛小説の賞に出すの、冷静に考えて狂ってる』

『誰か貼って』

『グロい描写あるから読むなら自己責任でな』


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