最終話
最終話です。
フリーターの鈴木が総理大臣加藤に対して行った『コール』
宣言した『運命の数』は『4』
しかしその宣言は間違っていたようで鈴木の首輪が作動。
言葉にならない声をあげながらのたうち回る鈴木に対して、保育士の佐藤はただただ見守ることしか出来ず。
やがてその声も収まり――鈴木は絶命した。
「全く、揃いも揃って愚かな姉弟ですね」
「鈴木さん……」
加藤が嘲りの言葉は、その場にへたりこんでいた佐藤の耳をすり抜けていく。
佐藤は呆然としていた。
鈴木さん……この恐ろしい事態に巻き込まれた私を元気付けてくれた人。
ずっと警戒されていたのは悲しかったけど、どうやらそれも誤解だったみたいで。
このゲームもあと少しで終わりで……元の生活に戻ったとき鈴木さんの罪がどうなるかは分かんないけど、少しでもいいから支えたい、力になりたいと思っていたのに。
目の前で死んでしまった。
「………………」
首輪が絞まり苦しんでいた鈴木は正直見ていられなかった。
目を逸らしたいほどの惨状だった。
でも私は目を逸らすことが出来ず見守るしかなかった中…………どこかから『さようなら』と聞こえてきた気がした。
鈴木さんはもう言葉を紡ぐことも出来ない状況だったのに……一体どこから……。
気になることはそれだけじゃない。
鈴木さんは『コール』を行う前に私に一言残した。
『佐藤さん。残った『運命の数』は何ですか?』
『……え?』
何を言いたいのか分からないままそのまま『コール』が行われ事態が進んだけど……あの言葉は一体何だったんだろうか?
『運命の数』
このデスゲームの根幹を成すシステム。
人の運命を奪った数だけその身に刻まれ。
その数を使って殺し合って――残るプレイヤーは2人。
そして残る『運命の数』は…………鈴木さんからゲームの流れを聞いていた私には分かる。
『0』は私。
『1』は鈴木さん。
『2』は鈴木さんが『コール』で殺した警察官の高橋さん。
『3』はアタックで死んだプログラマーの田中さん。
『4』は鈴木さんが『コール』して間違いだった。おそらく餓死したという作家の伊藤さんだろう。
『5』は暴力によるペナルティで死んだキャバ嬢の渡辺さん。
『6』は鈴木さんが『コール』で殺した格闘家の山本さん。
『7』は鈴木さんが『コール』で殺した女教師の中村さん。
『8』は加藤さんが『コール』で殺したらしいヤクザの小林さん。
『運命の数』は被りの無い連続した数である。
つまり――。
「残った『運命の数』は……『9』?」
漏れ出た佐藤の呟きに対して。
「……なっ!?」
愕然としたのは総理大臣の加藤だった。
「そ、そんな……当てずっぽうで…………いや、残った? っ! まさか私以外の『運命の数』から逆算して……!」
自身の『運命の数』を当てられたことによる動揺。
しかしそれも仕方ないことだろう。
『運命の数』を知られるということは命を握られたも同然なのだから。
「なるほど先ほどの『コール』は2分の1。……『4』が間違いだったことで私のナンバーを絞りきったと。
鈴木さんは自分の命を使って私を追い込んだのですか……そしてあなたは私を脅してるんですねぇっ!!」
「……へ?」
豹変して叫ぶ加藤に対して、何か話しかけられているらしいと反応をした佐藤だが、現状を飲み込めているわけではない。
「ですがぁ!! その程度で屈していては総理大臣は務まりませんっっ!! あなたの『運命の数』は知りませんが……善良そうな小娘ごときが10人も殺しているはず無い!!」
「え……え? な、何言ってるんですか!? 私は何もしませんよ! あと少しでゲームも終わるんですから……!」
「はっはっは……中々の演技だ。ですがそうやって不意を突くつもりでしょう!? 政治家としてやっていく素質は何か!? それは……やられる前にやることなんですよぉぉぉっっっ!!!!」
半狂乱になりながら加藤は端末を操作して『アタック』を実行する。
『『アタック』が宣言されたみたいだな』
その場にGMの『ハート』が現れた。
『残りプレイヤーは2人。最後のアクションだ。機械なんかの判定じゃつまらんだろう。オレ様が直々に判定を下してやる』
「はははっ……死ねえっ!! 小娘が!!」
「『アタック』ってことは数字の大小を比べて小さい方が死ぬ? それだと私…………いや、でもあのルールが……!!」
そして審判が下る。
『総理大臣加藤。その『運命の数』は『9』
そして保育士の佐藤。その『運命の数』は――――『0』だ』
「………………………………『0』?」
加藤の表情からあらゆる感情が抜け落ちる。
「な、何を言って『運命の数』は1から10で…………なのに『0』?」
加藤は『運命の数』の仕組みこそ見抜いていたが、『ハート』の仕掛けたルールの罠に気付いてはいなかった。
「も、もしかして……1から10じゃなくて……0から9……?」
『さて普通なら小さい方の数字が死ぬ『アタック』だが……補則のルールがあったな。
【『アタック』において例外として最大の数は最小の数に負ける】
というわけで……執行されるのは加藤の方だ』
「そ、そんな……あり得ない! 私が死ぬなんて! そ、そうだプレイヤーが一人になればクリア……先にそこの小娘を殺せば……!!」
『全く見苦しい。悪人同士はいくら殺し合ってもいいが……善人に手を出したら駄目だろうが』
「ぐぁぁぁぁっ!!!?」
佐藤に駆け寄ろうとした加藤の首輪が作動してその場で崩れ落ちる。
「か、加藤さん!!」
佐藤はついさっきまで殺意を向けられていたということも構わず加藤の身を案じるが何も出来ることは無く。
加藤は絶命した。
『さて。ただいまをもって『FATAL NUMBER GAME』は終了だ。クリアしたプレイヤーは1人。
佐藤陽葵。コングラチュレーションだ』
遊園地中のスピーカーからゲームの勝者を讃えるファンファーレが鳴り響く。
「お、終わったの……?」
目まぐるしく変わる状況についていくのが精一杯で実感の乏しい佐藤。
『クリアしたプレイヤーは元の生活に戻ることが出来る。……ああ、そうだ。ちゃんと元の生活に戻れるよう、悪夢に悩まなくて済むようにきちんとこのゲームの記憶は消しておく。安心しな』
「記憶……って、そんなことしたら……!」
『それじゃあエンディングだ。GMではなく個人として、おまえみたいな善人がもうこんなクソったれな事態に巻き込まれないことを祈っているぜ』
「わ、私はこの」
佐藤が何かを言おうとして――次の瞬間その姿が消える。
後に残ったのは無人の遊園地。
こうして『FATAL NUMBER GAME』は幕を閉じたのだった。
『FATAL NUMBER GAME』 完
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『さて、と後片付けに入るか』
「……ようやく書き終わったわ」
ゲームを終えた遊園地に響く2つの声。
『原稿終わったのか。出来はどうだ?』
1つはGMだった『ハート』。
「本当に最高よ!!」
もう一つは――餓死したはずの女性作家、伊藤凛だった。
『全く原稿にのめり込みすぎて餓死したってときはどうするか頭を抱えたぞ』
「ごめんごめんって。一度集中すると本当食事も呼吸もどうでも良くなってねえ。まあどうせ死んでもこうやって生き返るんだからいいでしょ?」
『ゲームの処理が面倒だと言っている。勝手に脱落して……ゲーム最終盤に絡まなくて良かったのか?』
「いいわよ、いいわよ。私なんかが絡むよりもっと良いものが見れたわ」
『……まあそれは同感だな。全くどうやってここまでの舞台と狂った登場人物たちを揃えたものやら』
「ふふふどうよ完璧でしょ」
『ただおまえ自身の設定は甘かったな。編集者を殺した作家……ってどういうことだ?』
「うるさいうるさい。そんな些末なことは関係ないわよ。新刊の『FATAL NUMBER GAME』は爆売れ間違い無しだわ!」
『ハート』と伊藤はいつものように言い合って。
『おっとそうだ、オレ様は片付けに戻る』
「ええ、頼んだわ。さて、私は次のゲームを考えましょうかしら」
『FATAL NUMBER GAME』 完
ここまで読んでいただきありがとうございました。




