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GAME21 五日目深夜


 『FATAL NUMBER GAME』五日目の深夜。


「流石に限界だな……」


 フリーターの鈴木は極限状態に陥っていた。




 キャバ嬢の渡辺とプログラマーの田中が死んで、鈴木の嘘がバレたのが三日目の昼のことだ。

 プレイヤーたちの前から去った鈴木はそれからの二日間、遊園地内を転々として潜んでいた。


 威勢良くプレイヤー全員を殺すと宣言して、その意志も変わってはいないが、具体的にどうすればいいのか分からないでいた。

 鈴木の『運命の数フェイタルナンバー』は『1』。数字の大小を比べる『アタック』が通用するわけなく、相手の数字を直接宣言する『コール』を狙うしか無い。

 しかし自身が既に二人も殺した殺人鬼だとバレてどう考えても警戒されている。




「いや警戒されてるだけならまだしも……殺される前に殺そうと考える人がいてもおかしくないな」


 だから鈴木はプレイヤーの誰にも会わないように息を潜めていた。『アタック』も『コール』も対面しなければ行うことは出来ない。このゲーム究極的には誰とも会わなければ殺される心配は無いのだ。


 プレイヤーたちが協力して大捜索を実施されたら見つかったかもしれないが、それに対して鈴木は一つ釘を刺していた。

 それが去る前に行った悪人ノートに書かれている悪事の暴露である。お互いが悪人だと分かれば協力するのも難しいんじゃないかと咄嗟に考えて行った策だったが、その効果があったかは分からないが鈴木は誰にも見つからずに二日間を過ごすことが出来た。




 しかしこの潜伏作戦には一つだけ穴があった。

 それが食料問題だ。


 ゲーム会場である遊園地で飲食出来るのは食堂だけ。売店なども存在しない。

 そのため食堂に行かなければ飢えて死ぬわけだが、そこまで分かっている他のプレイヤーが待ち構えている可能性がある。

 そのため食堂に近寄るわけには行かなかった。


 保育士の佐藤と遊びに出る前に持っておいたおにぎりとペットボトルの水で二日間を何とか凌いでいたが、それも尽きて限界を迎えた……というのが今の状況だった。




「ゲームが終わるまであと1日半……流石に飲まず食わずじゃ無理か。こんな夜なら誰もいないと思うが……」


 時刻は深夜。みんなもう寝静まっているだろうと考えてこっそりと食堂付近までやってきた鈴木は。


「鈴木さん……! すごい、本当に来た!」

「っ……!」


 食堂の前で仁王立ちしていた佐藤に見つかった。


 あれからもう二日経ったんだぞ? いつ来るか分からない僕を待ってずっとここにいたっていうのか……?


 鈴木は反射的に逃げ出したいところだったが飲まず食わずで疲弊した身体がその命令を受け付けてくれなかった。

 とにもかくにも腹を満たさないと……。

 鈴木は佐藤を無視して食堂に入る。そして深夜にも関わらず働いているロボットに注文を行って。


「もう無視しないでください! 色々聞きたいことがあるんです!」


 佐藤が鈴木の手を掴んで懇願しようとしてきたので。




「それは止めといた方がいいですよ」

「……え?」

「『暴力禁止』に該当する可能性がありますから」


 鈴木は忠告する。煩わしい佐藤を止めるために言ったのだが。


「やっぱり鈴木さんは優しいですよね」

「……?」

「だってそうでしょう。鈴木さんはプレイヤーの全員を……私も殺そうとしているんですよね? だったら注意なんてしないで、私が違反するように誘導すればいいのに……でもそうしなかった」

「それは……ああ、その方法があったか……」

「やっぱり悪いことに慣れてないですよね。鈴木さんの本質は善人で……でも私たちを殺さないといけないから悪ぶっている」

「………………」

「その理由は……この前去るときに言ってましたね。姉の無念を晴らすため……それって一体何があったんですか?」


 鈴木の心に寄り添ってくる佐藤。


 こいつは……一体何を考えている……? 今の僕をわざわざ騙す必要があるとは思えない。だとしたら本当に、心の底から僕のことを心配しているっていうのか……?






「時間稼ぎご苦労様ね」


 そのとき食堂に第三者が割り込んできた。

 声のした方を振り向くとそこにいたのは女教師の中村。


「あ、中村さん! 本当に鈴木さん来ましたよ!」


 佐藤が中村に手を振っている。

 ……そうか。一人でずっと食堂を見張るのは大変だ。しかし二人いれば負担を分担することが出来る。佐藤と中村は組んでいたのか。




「ええ。本当にのこのこと現れたわね」

「………………」


 中村が発するのは僕に対する敵意。佐藤とは違ってこっちは何を考えているのか分かりやすかった。


「まさかあなたがあのちょこちょこと嗅ぎ回っていて煩わしかった探偵の弟だったなんてね。死んで清々してたのにまさか情報が渡っているなんて」

「……それで僕をどうするつもりですか?」

「もちろん殺すわ。これでも私は有能教師って立場なのよ。イジメに加担していた、なんて言いふらされたらたまらないわ」


 中村は既に端末をその手に握っている。




「……な、何言ってるんですか、中村さん? 中村さんはイジメになんか加担したことなくて……何か誤解しているはずだから鈴木さんと会って話し合おうって……」

「あら、そんな嘘を信じていたの? ……やっぱり雰囲気から察してたけど、あなた違うわね。本当にペットの連続不審死事件なんて起こせる玉には見えないけれど……」

「それは……」

「まあ何でも良いわ。あなたも一緒に殺すつもりだったもの。少し待っておきなさい、この男の後に殺してあげるから」


 そうして中村は端末を操作する。

 行うのは『アタック』。

 中村は鈴木の『運命の数フェイタルナンバー』を全く分かっていない。だがその数字は大きくないだろうと予想していた。

 もし大きければ悪事がバレた後、ヤケクソで『アタック』を行っても良かったはず。それなのに何もせず逃げたのは数字の大きさに自信が無かったから。


 それならば『アタック』で殺せる。

 そうして私の世界の平穏は保たれる。




 そうしてその場に電子音が流れ始めた。




『コールが実行されました。対象のプレイヤーの『運命の数フェイタルナンバー』を宣言してください』




「そう……その選択を取ったのね」

「みすみす殺されるつもりはないからな」


 『アタック』を行うつもりだったのに実行されたのは『コール』。

 中村が押し間違えたわけではない。

 つまり、この事態は――中村が『アタック』を実行するその直前に、鈴木が割り込んで『コール』を実行したことによるものだった。




「まあそれもいいわ。『アタック』と違って全く情報を流さなくて済むもの。

 私は誓って自身の『運命の数フェイタルナンバー』がバレるような行動をした覚えはない。生死を賭けた大博打……さて当たるかしらね?」




 中村の態度は余裕たっぷりだった。

 実際その通りで、追い詰められたのは鈴木だ。




(あのまま『アタック』を行われていたら『1』の僕は死んでいただろう。だから『コール』で割り込むしかなかった。

 ……でもそれだって無謀だ。中村が言っているように僕には中村の『運命の数フェイタルナンバー』が何なのか全く情報が無い)


 命がけの数字当て……成功しなければ死ぬ。

 本当に正気の沙汰じゃないな…………どこか俯瞰している自分がそのように冷笑した。


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