GAME15 死体発見
「こいつはまた……」
「ど、どうして山本さんが……!」
「ふむ……」
フリーター鈴木の呼びかけにより現存するプレイヤー8名がお化け屋敷に集合する。
皆の注目を集めるのは当然のことながら女格闘家、山本紬の死体。
警察官、高橋に続きゲームにおいて二人目の死者だが、高橋の死体がまだ見つかっていないことから、鈴木以外のプレイヤーにとって初めて見る死体となっている。
「それで何があったのかしら?」
死体に対してのどよめきが一段落したところで、女教師の中村が代表して問いかける。
質問相手はもちろんこの場にみんなを呼んだ鈴木だ。
皆が来てもずっと黙ったままだった鈴木は質問にもしばし沈黙した後に話し始める。
「……順を追って話しますね。僕は山本さんにこの場所に呼び出されたんです。何のつもりなんだろうと思いながらも応じてこの場所に来たところで、山本さんは僕に暴力を振るいました。
どうやら僕が高橋さんを殺したんだと思い込んでたみたいで。力ずくで認めさせようとして。僕が否定しても全く聞く耳を持ちませんでした。
反撃も暴力とみなされるかもしれない、いやそもそも格闘家である山本さんの攻撃は苛烈で耐えるしかなかったところに……いきなり山本さんが苦しみだして……たぶん首輪が作動したんだと思います。ルールの『暴力禁止』に違反していたから。
それでそのまま山本さんは死んだんです」
鈴木の語った経緯はもちろん嘘である。
実際はルール違反は警告で済まされたので、その後改めて『コール』で殺したのだから。
(でもルール違反で死んだのか、『コール』で殺されたのか他のプレイヤーには分からないはず。これで誤魔化しにかかる)
「……その話本当かしら? あれだけはっきりルールに『暴力禁止』って書いてたし、何度も話題にもしたじゃない。それにも構わず暴力を振るう? そんなことあり得るの?」
女教師中村の疑問。
正直そこに関しては嘘を吐いていないので『全くもってその通りでございます』と平伏したくなる。
「で、でも見た感じ鈴木さんがところどころ怪我しているのは本当ですよ!!」
保育士の佐藤が鈴木を庇う。実際鈴木はあざなどが出来ている。
「……それもそうね。となるとあの女格闘家さんは全くルールを把握しておらず、人の話も聞いていないお馬鹿さんだった……って考えるのが自然そうね」
中村もどうにか納得してくれる。
「ルール違反による死亡……ですか。まあルールにも【禁止事項に違反した場合そのプレイヤーは死亡する】と明記されていますが……」
「何か気になるんですか?」
「いえ……一発アウトでは無く警告くらいしてくれれば良いのにと思っただけです」
総理大臣、加藤がドキッとしたことを呟く。
ただ鈴木を問い詰めるためというような意図は無さそうで、思ったことが口に出ただけといった様子だ。鈴木も返しようが無くスルーしていると話題が移る。
「それにしてもこの死体はそのままにするしかないんですか? こんなところに放置するのはかわいそうです」
保育士の佐藤が山本の死を悼む。少々反発気味の二人だったと思うがそんな雰囲気は微塵も感じ取れない。
(保育士の佐藤……前から思っていたけど、悪人ノートに名前が書かれている割には結構常識的な考えを持っているんだよな……)
とはいえその実態はペットの連続不審死の容疑者だ。よく擬態していると感心する。
「私も弔いたいところですが道具も方法も無いためどうしようもないでしょう。ただ死体が放置されるというわけでは無いようです。
高橋君の捜索をしている途中でGMに聞きました。どうやら死体が発生した場合は一日後に清掃されるようです。丁重に扱ってくれるのかは分かりませんが」
「……そうですか。まあこんなところに置かれたまま腐るよりはマシですかね」
「ええ。せめて黙祷を捧げておきましょうか」
加藤の提案に乗ってみんなで黙祷を捧げる。
その場で立ったまま手を合わせ目をつぶる中、鈴木は薄目を開けて視線だけを動かしてみんなの様子を観察する。
(律儀に黙祷しているのは総理大臣の加藤、保育士の佐藤、女教師の中村……そしてヤクザの小林。プレイヤーの中でも常識人寄りな振る舞いをしている3人はともかくヤクザの小林は意外だな。
そして合わせた手がズレていたり立つ姿に力が入ってなかったりでやる気が無さそうなのが女作家の伊藤、キャバ嬢の渡辺。
最後に論外なのが…………みんなが目を閉じているのをいいことに、山本の死体に対して親指を下に向ける『地獄に落ちろ』のポーズを取っているのがプログラマーの田中……もう一方の手を口に当てて笑いを堪えるのに必死なようだ)
僕もみんなの観察をしている時点で行儀は良くないけど……それにしたって田中の行動は驚きだ。
(まあ悪人ノートに書かれている人物らしいとは言えるが……しかし本当に始まってしまったな)
元々一癖も二癖もある人物たちが仮初めとはいえ平穏を保てていた今までが奇跡だったのだ。
山本の死体、非日常を目の当たりにして歯車がぶっ飛び始める人物がいたとしておかしくはない。
(これだから死体はなるべく見せたくなかったんだけど…………まあいい、僕のやるべきことは変わらない。プレイヤーを全員殺す……そうして姉さんの未練を晴らすんだ)
「……これ以上ここにいても仕方ありません。とりあえずコテージの方に戻りましょうか」
そうして僕らは死体発見現場のお化け屋敷を去るのだった。




