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GAME14 後始末


「死んだな」


 女格闘家、山本の死体を見下ろしながらフリーターの鈴木は今回の策を振り返る。




 使ったのはシンプルな『コール』のフリだった。


 まずはルールを覚えていない山本に対して必要なルールだけを説明。

 『コール』に失敗したら死ぬとちゃんと周知してから、適当な理由で『コール』のフリを行い、苦しんでみせる。

 自滅したと思い込み気が緩んだ山本が本当の『運命の数フェイタルナンバー』を言ったところで端末から本当の『コール』を行い殺す。


 懸念点があるとしたら最初の『コール』のフリで正しいナンバーを言ってしまう事故があったが……まあ10分の1だからそう当てられないと思ったし、仮に当たってたとしたら山本の反応もおかしくなっておそらく察せただろう。




 この『コール』のフリには欠かせない協力者がいた。


『……そろそろ喋ってもいいか?』


 GMゲームマスターの『ハート』が焦れたように声を出す。


「いいよ。黙っていてくれて助かったよ」


 律儀に約束を守ってくれた『ハート』。

 最初の『コール』のフリはGMゲームマスターの『ハート』に対して行ったかのように見せた。ゲーム的には何の意味もない行為なのだが、山本はきちんと勘違いしてくれた。




『中々に刺激的で良い見世物だったじゃねえか。しかし……一つ気になることがある』

「何でもどうぞ」

『『コール』に失敗して首輪が絞まったフリ……あれを山本紬が見破れなかったのはどうしてだ?』

「ああ、それなら二つの理由があるよ。一つは昨夜の見本があったこと――」


 警察官、高橋。彼の死に様、首が絞まった人間がどのような反応をするのかは目に焼き付いていた。


「そしてもう一つは首輪と顔を間に手を差し込んで、セルフで首を絞めていたからだね」


 地面をのたうち回りながら首元に手をやっていた理由は緩めようとしていたのでは無くその逆。自分の手で自分の首を絞めていた。

 そのおかげで勘の鋭い山本を騙すことに成功した。




(力を入れないと臨場感が出ないけど、入れすぎても良くない。力加減が難しいところだったけど……まあ慣れてたし簡単だったかな)


 鈴木は昔を振り返る。


(あの頃はセルフ首締めで自分を追い込んでたなあ。死にたくて死にたくて……でも死ねなくて)


 自罰を繰り返していた過去。

 きっかけは姉が死んだことで………………。


(どんなことだろうと経験ってのは活きるもんだね)






『……まあいい。愉快なショーは終わりなようだし、オレ様はここらで……』

「ああ、ちょっと待ってよ」


 その場を去ろうとした『ハート』を呼び止める。


『何だ?』

「治療してくれないのかい? 君が遅れてやってきたから僕の身体ボロボロなんだけど」


 鈴木の身体はルールを無視した山本から暴力を受けており、ところどころ打ち身やアザが出来ている。この姿を他のプレイヤーに見られたら何らかの騒動があったことは明白だろう。


『そのことなら話は済んだだろう?』

「え?」

『ルール違反の指摘が遅くなったのはオレ様の瑕疵だ。だからその代わりにさっきの出来事を黙って見ていた。これで話はチャラだ』

「えー……そこで交換条件成立していたの? 絶対楽しんで見てた癖に……」

『オレ様はGMゲームマスター。あまり特定のプレイヤーに肩入れするわけには行かないからな…………ってこんなことの後だと説得力が無いか』


 『やれやれ……ハートボイルドじゃねえぜ』と呟きながら『ハート』はその姿を消した。




 後に残されたのは鈴木と山本の死体。


「うーん…………」


 この現場、お化け屋敷は僕たちが居住するコテージからはかなり遠い位置にある。とはいえプレイヤーで大捜索を仕掛けられたら見つかってしまうだろう。

 僕がこの傷付いた姿を見せれば山本の捜索が始まる。かといって僕が姿を見せなくても、僕の捜索が始まってしまう。

 死体の清掃は一日後。それまでに見つかるかどうかは……分の悪い賭けだろう。


 かといってどこかに隠すのも難しい。

 人の死体というのはかなりの体積がある。経験も道具も無い素人が隠したところで見つかるのがオチだろう。ちょうどいい隠し場所も無いし。




「だったら……こうするしか無いか」


 僕はその場で端末を操作して連絡を取る。

 相手はプレイヤー達のまとめ役的な立ち位置となっている総理大臣、加藤。


『もしもし。どうされましたか、鈴木君』


 3コールもしない内に応答に出る加藤。反応が早い。


「………………」


 それに対して僕は連絡を取っておきながらしばし無言で待つ。




『ん? どうされましたか、鈴木君? 故障でしょうか……?』

「……ああいえ、すいません。聞こえています」

『ああ、良かったです。それで用件は何でしょうか?』


 加藤の質問に対して鈴木は演技をする。

 困惑しきった、という様子で。


「ええと、その…………何て言えばいいのか……。ちょっと説明が難しいので、プレイヤーの皆さんを連れてお化け屋敷まで来てくれませんでしょうか?」


 死体のあるこの現場まで皆を招く。


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