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GAME10 二日目、朝

 『FATAL NUMBER GAME』二日目の朝。


 プレイヤーたちは朝食を取るため自然と食堂に足を運んでいた。それぞれ起きる時間はバラバラだったものの、食べ終わった後もその場に残って全員が揃うそのときを待っていた。

 しかし時間が過ぎ去っていき、時間は昼前。早くに朝食を取った者はまたお腹が空いてきた時刻になってもプレイヤーは9人しか集まらなかった。




「遅えな、アイツ」


 女格闘家の山本が呟く。

 アイツ、とは姿を見せない警察官の高橋のことだった。


「連絡してみたけど出ないね」


 保育士の佐藤も心配になって先ほど端末から連絡をしたが応答は無かった。




(まあ、死人が動けるはずないんですけどね)


 その高橋を殺した犯人。一人だけ状況が分かっているフリーターの鈴木もその食堂の輪の端にいた。


(さてここからどうなるか。このままずっと待ちぼうけになるか、それとも……)






「どうやら警察官さんは殺されたって考える方が良さそうね」


 女教師の中村が突然ぶっ込んだ。


「はぁ!? 何言ってんだ、テメェ!?」


 女格闘家の山本がその発言に反発するが、中村は眉を一つも動かさずに。


「だってそうでしょう? 食事も取らず連絡にも出ない理由が他に考えられるかしら」

「まだ寝てるだけかもしれねーだろ!」

「突然デスゲームに巻き込まれたってのに、こんな時間まで寝ていられるなんてのんきなことね」

「…………チッ」


 舌打ちして黙り込む山本。




「で、でもだからって殺されたなんて物騒なこと……」

「別にそんな大層なことじゃないわよ。何せ私たちが今置かれている状況はデスゲーム……命を弄ぶための遊戯なんだから」


 中村は状況を冷静に把握している。


「ははっ、あのうるせえ正義面したやつがいなくなったんなら清々するぜ」

「まああんなに目立ってるのを見て初回犠牲者枠なんじゃね、とは思っていましたが……しかしそうなると一体誰が彼を殺したのでしょうかねえ」


 ヤクザの小林が軽く笑い飛ばし、プログラマーの田中がぶつぶつと呟きながら考察していると。




「警察官さんを誰が殺したか……そんなの分かりきっているじゃない」

「なぬっ!?」


 その呟きに答える形で中村はプレイヤーの内の一人を指さしながら宣言した。




「フリーターさん、あなたが殺したんでしょう?」


「僕が……ですか?」




 突然槍玉に挙げられたフリーターの鈴木。『いきなりのことで何を言われているのか分からない』という演技をしながら、内心で感心する。


(早速犯人の僕を突き止めてくるか。女教師、中村。聡明そうな雰囲気はどうやら伊達じゃないみたいだ)




「鈴木さんが犯人!? どうしてそうなるんですか!?」


 保育士の佐藤が声を上げる。


「警察官さんを殺した方法から推測した単純な消去法よ。

 このデスゲームにおいて他者への暴力は禁止されている。だから人を殺す方法は運営に用意された二つだけ。『運命の数フェイタルナンバー』の大きさを比べて小さい方が死ぬ『アタック』と相手の数字をピタリと当てて殺す『コール』。

 この内警察官さんを殺すのに使われたのは後者の『コール』なのよ」


「え、なんでそんなの分かるわけ?」


 キャバ嬢の渡辺が疑問を示す。




「ルールの補則には――


【『アタック』による勝負結果、負けたプレイヤーの『運命の数フェイタルナンバー』は全体に公表される】

【『コール』による結果は公表されない】


 とあります。もし『アタック』が実行されていたらその結果が公表されて、高橋君のナンバーが公表されてないといけません。

 しかし現状GMゲームマスターからは特に知らせもありません。ですから結果の公表がされない『コール』で殺されたというわけです」


 総理大臣の加藤が横から説明を挟む。




「つまり警察官さんの『運命の数フェイタルナンバー』がピタリと当てられたわけだけど……犯人はどうやって実際警察官さんのナンバーを当てられたのかしらね」


「そ、そんなのあいつが自分から言ってたじゃない。自分のナンバーは『2』だってことを。だから誰でも…………いえ………」


 女作家の伊藤は自分で言いながらその方法の問題点に気付いた。




「そう。警察官さんは自分のナンバーが『2』だと言った。でもそこのフリーターさんも自分のナンバーを『2』だと言った。

 ナンバーの被りが無い以上どちらかが嘘を吐いているはず。でも他のプレイヤーからはどちらが嘘を吐いているか分からない。

 警察官さんが本当に『2』なのか分からない。『コール』に失敗すれば自分が死ぬ、確証も無しにそんなこと出来るわけ無いわ。

 でも警察官さん以外にどっちが本当のことを言っているのか分かっている人がいる。それが被った相手であるフリーターさんよ。

 だからあなたが犯人なの。分かったかしら?」


 中村による完璧な推理証明。




(ぐうの音も出ないほどの正論だね)


 中村の推理は完璧だった。警察官の高橋を待つこれまでの間に考えていたのだろう。

 反論の余地も無い。

 追い詰められたフリーターの鈴木だが――――この状況は想定の範囲内であった。




「その、中村さんの言い分は分かりましたけど…………でも僕は殺してなんていません!」


 鈴木は中村と論を交わすつもりはない。


「あなたねえ、話は聞いていたのかしら? どう考えてもあなたが――」

「その証拠はあるんですか?」

「っ…………」


 中村の理論は合っている。だが理論だけであり、それを確立する証拠は存在しない。


「あ、すいません。ちょっと嫌な感じな言い方になりましたね。でも本当に僕は犯人なんかじゃないんです」


 なので感情の方面で戦う。何も分からない状況でいきなり因縁を付けられたかわいそうな人を演技する。




「…………そうね。証拠は無いわ。昨夜、あなたと警察官さんが会っている姿でも見ていれば良かったのだけど」

「僕はコテージに帰ってずっと寝ていました」

「その証拠も無いと思うのだけど…………まあいいわ。これ以上は水掛け論ね。引き下がるけれど……」

「けれど……?」

「今後は妙なマネをしないことね」


 悔しさ、苛立ち、怒り、様々な感情を混ぜて睨んでくる中村。




 完全に目を付けられたようだが別に問題無い。


(僕の目的がデスゲームの生存だったなら因縁を付けられたり、騒動に巻き込まれるのはマイナスだ。

 でも僕の目的はプレイヤーの抹殺。因縁だろうが騒動だろうがあっちから絡んでくるならチャンスだ)


 ゲームの期間は残り6日、殺さないと行けないプレイヤーは8人

 1日1殺でも間に合わない。ここからドンドン加速させていかないと。




(僕がどれだけ怪しくても確証は無い。暴力禁止のこのゲームでは疑わしきで罰することは出来ない。他者を害するためには『アタック』と『コール』、自身の命も賭ける二つの方法しか無い。

 先ほどの理論に当てはめれば僕のナンバー『2』が嘘なのはバレている。でも僕の本当のナンバーは『1』であることは分かりようが無い。

 『5』でも『8』でも『10』でもあるかもしれないんだ。迂闊に『アタック』も『コール』も仕掛けられないだろう)


 つまりは当面の自身の安全は確保されている。

 その間に他のプレイヤー達のナンバーを探っていく方法を考えて――――。






「さっきからクッセエんだよな」


 女格闘家、山本。

 中村に言い負かされてしばらく黙っていた彼女はのっそりと立ち上がった。


「人を騙してほくそ笑んでるやつの臭いだ」


 一時的に静かになっていた食堂をのそりのそりと歩く山本にプレイヤー達の視線が集まる中。


「『君の分まで俺が戦うから……だから大人しくしていてくれ』だったか。いなくなったんならアタイも大人しくしてる意味ねーよな……」


 ぶつぶつと呟きながら山本は鈴木の前に立って。




 バチン!!

 その頬をビンタした。




「いたっ……!?」


 突然の暴力に目を丸くしながらぶたれた頬を抑える鈴木。




「なあ。どうしておまえはアイツを殺したんだ? ああん?」


 その鈴木の胸ぐらを掴み上げて山本は問いかける。

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