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最初のお仕事

「ちゃんとした書類は明日用意するから、とりあえず今日は部屋の片付けをお願いね。あ、私の個室は絶対に入らないで」

「かしこまりました。それでは本日は星奈様の個室以外の清掃を担当させていただきます。ご夕食はいかがなさいますか?」

「お昼はもう食べたけど、夕飯はよろしく。あと貴女の個室は1階下の701号室を用意してあるから使って。鍵はコレね」

 星奈様は散らばったテーブルの上からカードキーを取り出す。

「ありがとうございます。私物はこちらに住むことになったら空輸で送る手筈になっていますので後でカンタベリーの屋敷の方へ連絡させていただきます」

 そういえば一人暮らしは初めてだ。まぁすぐ上に主人が住んでいるので体感はあまりお屋敷での生活と代らなそうではあるけれども。

「じゃあ私は自分の部屋に戻るから、何か用があったら呼んで。あとこれ、色々必要になるだろうから好きなだけ使っていいから。デビットカード、わかるよね?確か2000万円くらい入ってる。生活費とかそこから使って。現金が必要ならその時に言って。使った際に領収書は貰ってね。えっと後は・・・」

 星奈様が必要事項を指を折りながら確認する

「あとは聞いておきたいことはある?」

「では、本日のご夕食の希望はありますか?」

 星奈様は一瞬きょとんとした顔をした後小さく笑った。

「任せるわ。じゃあ今日からよろしくね。あ、それから・・・。貴女が来てくれて嬉しいわ」

 星奈様は小さく笑うと自室へと戻っていった。



「さてどこから片づけましょう」

 私は荒れ果てた部屋を一周して片づけの優先順位を思索する。

 時間は13時、夕食は19時くらいだとして6時間か。

 まずはと冷蔵庫を確認すると、驚くことに飲み物と冷凍食品しか入っていなかった。

 星奈様は半年前からお一人で暮らしているとは聞いていたけれど、キッチンの様子からして自炊はほとんどしてなさそうだ。キッチン用品は一通り揃っているが使っている形跡がほぼ無い。

 これは夕食を作って差し上げるのが楽しみになってきた。

 まずは部屋中に散らばってる洗濯物を回収して、洗濯機に入れる。

 洗濯機のボタンが日本語で一瞬戸惑ったけれど、なんとか理解できた。いざとなると意外と読めないものだなぁ。会話はだいぶ上達したと思うんだけど、読み書きはまだまだかもしれない。

 洗濯機が動いている間に部屋のゴミをパパっと回収し、大量に積まれた段ボールを畳む。

 最後に星奈様と会ってから4年、15歳になった星奈様は当時の面影は残しつつ、とても美人に成長されていた。これはきっと学園でも話題になるだろうし、異性からもさぞ人気になるだろう。

 3か月後に控えた入学式が今から楽しみだ。私は経験できなかった青春というワードにうら寂しい気持ちを抱きつつも、その分星奈様には満喫してほしいという気持ちもある。

 まぁ勝手にこんな思いを押し付けられても迷惑だろうし、この思いは秘めておこう。

 


 部屋の掃除と洗濯を終え、私は買い物へと訪れていた。

「文字が読めない・・・」

 近くのスーパーをスマホで調べて訪れてみたのだが、自分で思っているより文字が読めなくてショックを受けた。

 しっかり勉強したつもりだったのだが、3~4割読めない漢字がある。

 もちろん見た目で判別できる物はいいのだけれど、如何せん調味料系だったり見た目がそっくりな物の判別が難しい。

「『醤油』これはソースか?いやでもアブラという文字が入ってるからオイル・・・?」

 これはもう聞いた方が早いと思い、近くのスーパー店員さんに声をかける。

「あのーこれって何て読むんですか?」

「えっ!?あ、これはしょうゆですね。ソイソースでわかりますか?」

「あーこれしょうゆなんですか。ありがとうございます。ちなみにこっちは?」

「こっちはサンショウです。コショウではないので気を付けてください。こっちがコショウですね」

「なるほど、助かりました。ありがとう」

「いえいえ、ちょっとビックリしました。日本語が上手だったから」

「ありがとうございます。まだまだ日本語難しいです」

 噂には聞いていたけど、日本だと外人が少ないから目立つらしく、先ほどから視線を感じる。

 金髪というだけでもかなり目立ってそうで、少し恥ずかしい。

 とりあえず必要な物を買い、ささっとマンションへ戻った。


 

 

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