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こんにちは日本!よろしくお願いしますお嬢様。

 ついに来た!憧れていた日本!右を見ても日本!左を見ても日本!

 あぁ私は今とても感動している。この気持ちを抑えきれない。

「すみません、ここは日本ですよね!?」

「え、あはいそうですけど」

「素晴らしい!」

 喜びを近くの人と分かち合おうと思ったのだがささっとどこかへ消えてしまった。

 日本人が奥ゆかしいというのは本当だったようだ。

「イギリスとはまるで違うわね」

 イギリスは都市部のロンドンですら歴史を感じる建物が多く、クラシックな雰囲気だが、日本のこのハネダという場所はモダンな雰囲気で溢れており、日本らしい物はあまり感じられない。

 電光掲示板や看板には日本語だけでなく中国語、韓国語、英語も書かれており、この場所が国際的な場所なのだから仕方ないかと思わせられた。

 もう少し都市部から離れれば神社仏閣が見れるかもしれない。

 本音を言うと今すぐ見に行きたい。時計を確認すると10時41分。

 この後すぐに北小路家に向かわなければならないので残念ながら今日は見れそうにない。

 まぁ今日の面接で不合格になってしまうとイギリスへとんぼ返りしなければならないのだが。

 私は空港を出てタクシーへ乗ると目的の住所を告げる。

「お嬢ちゃん日本語上手だね、帰国子女か何かかい?」

「いえ、独学なんです。日本へは仕事で来ました」 

 タクシーのおじ様は親切な方で、目的地へ着くまでの30分の間、私の日本へ来れた事への感動を聞いてくれた。

「えーっと、世田谷の・・・住所だとこの辺だけど、いいのかい?住宅街から少し離れてるけど」

 スマホの地図と照らし合わせてみる。

「ここから歩いて2分くらいみたいなのでここで大丈夫です」

「はいよ、じゃあ仕事頑張んなよ、応援してっから」

「ありがとうございました」

 お金をクレジットカードで支払いタクシーを降りた。

「この道をこっちで・・・あ、あれっぽい」

 住宅地が並ぶ場所で一際大きなマンションが建っていた。

 住所と外観を確認する。どうやらここで間違いなさそうだ。



 エントランスへ入るとコンシェルジュの男性が立ち上がってお辞儀をする。

「いらっしゃいませ」

「アリサ・ラングトンと申します。本日、北小路様と面会のご予約をさせていただいてるのですが」

「はい、伺っております。ではそちらのエレベーターにて8階へと行かれて下さい。8階のフロアは全て北小路様のお部屋になっておりますので、エレベーターを降りましたら左手のインターフォンを押していただければ北小路様へと繋がりますので」

「ありがとうございます」

 私は指示に従ってエレベーターを使って8階まで向かう。

 扉が開くとエントランスとはまた違った高級感のある内廊下へと出た。

 コンシェルジュの言ってた通り、左手側にインターフォンがある。

 私は大きく深呼吸を1つ。

 意を決して押すと、ザッという一瞬のノイズの後、女性の声が聞こえた。

「はい、どちら様?」

「ビスマルク家よりご紹介に預かりましたアリサ・ラングトンと申します」

「あぁ、そういえば今日だっけ、ちょっと待ってて」

 1分もしないうちにガチャリと音がして、ドアが開いた。

 中から現れたのは紺色の寝間着に黒のヘアバンドで髪を上げた、いかにもさっきまで寝てましたオーラを漂わせている星奈様だった。

 お会いしたのは1度だけだったが、幼い頃の面影が残っているのですぐに分かった。

「お休みのところ失礼しました、出直した方がよろしいでしょうか」

 とても人が訪ねてくる時の恰好ではなかったし、先ほどの言葉からももしかしたら私が今日来る事を失念してしまっていたのかもしれないと思ったけれど、彼女は特に気にする様子も無かった。

「え、いいよ、着替えるのも面倒だし、あなたも出直すの面倒でしょ?上がって」

 本人が言うのであれば私は従うしかない。

「失礼します」

 部屋に入ると真っ先に荒れ果てたリビングが目に入った。

 飲みかけのペットボトルや畳まれていない洗濯物、食べ終わったお菓子のゴミ、様々な物が乱雑に散らばっていた。

「悪いね、散らかってて。あなたが来るの忘れてたから清掃業者呼んでなかった」

「いえ、私は大丈夫ですので」

 まぁ嘘だ。気にならない訳がない。

 メイドの血というのだろうか、あまりに散らかっている部屋の惨状を見て軽く眩暈を覚えた。

「まぁ、とりあえずその辺に座って」

「はい、ありがとうございます」

 星奈様が指さしたのは脱いだシャツが散乱してるソファー。

 とりあえず1枚シャツを畳んで自分が座れる場所を確保してそこに座った。

「んで、私のお付きをやってくれるって話だよね?」

「はい、ビスマルク家の旦那様からはそのように伺っております」

「んじゃ合格」

 彼女は対面のソファーに座ってペットボトルのお茶を飲む。

「ん?え?」

「だから、合格、お付きの面接をやれってパパが言ったんだよね。あなたでいい。オッケー?」

「え、えぇ私としては嬉しい限りですが、よろしいのですか?」

「ぶっちゃけ家事ができれば誰でもいいんだよね、何人も面接すんのも面倒だからあなたでいい。あなたが家事できるのは知ってるし、ビスマルク家から紹介されて来たんだから変な事もしないだろうし」

 旦那様は何人も不合格になっていて人が見つからないから私に声が掛かったと仰っていたけれど・・・。

「ありがとうございます。それではたった今より星奈お嬢様を主人として、精一杯お仕えさせていただきます」

 なんかあっさりと決まってしまったが、本当にこれでよかったのだろうか

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