お出かけのお供にお付きはいかがなさいますか?
「今日さ、出かけるから」
朝食の場で星奈様は何やらスマホで調べ物をしていた。
「かしこまりました。車が必要なのであればタクシーの手配をしますが、本日はどこまでお出かけになられますか?」
「タクシー?あー場所的に車だと不便だから電車で行こうかと思ってたんだけど」
「申し訳ございません。私まだ交通機関は把握できておりませんので、電車でとなりますとご案内出来かねます」
「え?それは自分で調べるから別にいいんだけど、付いてくるくるつもりだったの?」
「同行の有無についてはお嬢様に一任いたしますが、お世話させていただいてますから本日のご予定や経路は事前に把握させていただきたいと思います」
「友達と会うだけなんだけど」
その言葉を聞いてはっとした。もしかしたらボーイフレンドと会うのかもしれない、と。
ならばあまり踏み入るのも野暮かもしれない。
「でしたら、スマホのGPSの位置情報を私と共有していただいて、何かあればすぐに連絡してください。それでしたら構いません」
「うーん、まぁそれならいっか」
「それから本日の昼食と夕食はいかがなさいますか?」
「お昼は友達と食べるからいいや。帰りはそんなに遅くならないと思うから、夜はウチで食べる」
「かしこまりました。わかっていただけているとは思いますが、お嬢様の安全を私は何より優先させていただいておりますので有事の際は必ずご連絡ください」
お嬢様はカジュアルな服装に着替えて外出された。
と、なれば私のやることは決まっている。この仕事が決まった後に北小路の旦那様と電話した時の会話を思い出す。
『あの子はたまにやんちゃな所があるから側で見守ってやってほしい。私たちが思っている以上にどうやらアリサさんを慕っているようだから、君にしか話さないこともあるかもしれない。何かあれば相談に乗ってあげてほしいんだ』
お嬢様の恋路とあらば北小路の行く末にも関わってくる。
星奈様は三女とはいっても、上二人も女性だ。嫁入りされる可能性もあるし、最近は結婚という形をとらない人も増えている。
となれば北小路の本筋が星奈様のお相手となる可能性も無いわけではない。
これはお相手を知る機会でもあるし、星奈様に限ってありえないが、万が一悪い殿方に騙されているならば見過ごすわけにもいかない。
と、色々理由付けはしてみたものの、本音としてはお相手の方がどういう方なのかが気になっているだけだ。
星奈様が自分の部屋に戻り、私も普段着に着替える。
変装するのもありかと思ったけれど、出来そうなサングラスとか大きな帽子を持っていなかったので、結局いつもと変わらない服装になってしまった。
スマホを確認するとお嬢様は既に最寄りの駅に着いているようだ。
私もそろそろ向かうとしよう。




