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留置所の私は蒼華です

物語は急速に混迷を深めていた。


テンマ様の眠りを守るため、そして彼自身の力の弱体化を防ぐため、ミツルギは蒼華の体と現実改変能力を手に入れた。しかし、その力を使いこなすことは簡単ではなかった。蒼華が自然に行っていたように見えた現実改変は、ミツルギにとってはまるで複雑な呪文のように難解だった。


「テンマ様、どうか力をお貸しください…」ミツルギは手を広げ、蒼華の体で精一杯の集中を試みるが、彼の力はかつてほど安定していなかった。やがて、空間が歪み、まるで別の次元が現れるような奇妙な現象が周囲に広がり始めた。


「こんなことでは…!現実が崩れてしまう…」


ミツルギは焦燥感に駆られたが、その時、突然周囲の空間が激しく揺れた。そして、漆黒の闇が空間を切り裂くように出現し、その中心から圧倒的な気配が漂い始めた。


「アマツミカボシ…!」ミツルギはその存在を直感的に理解した。テンマ様が封印していた邪神、アマツミカボシが目覚めてしまったのだ。


アマツミカボシの姿は、人間の理解を超えた異形で、黒い霧の中に巨大な目がいくつも浮かび、無数の手が伸びるかのように感じられた。


「テンマを解放し、我が力を取り戻させよ!」アマツミカボシはその存在を誇示するかのように叫び、テンマ様の元に向かって突進していった。


「止めろ!」ミツルギは必死に力を振り絞り、テンマ様を守ろうとしたが、全く歯が立たなかった。アマツミカボシの圧倒的な力の前に、ミツルギは瞬く間に打ち負かされ、テンマ様はその異形の手によってさらわれてしまった。


「テンマ様…!」ミツルギは叫んだが、次の瞬間、その身体が凍りつくように固まった。アマツミカボシの力がミツルギを石に変えてしまったのだった。



SPP(超常現象調査機関)の留置所は、どこか重苦しい空気が漂っていた。鋼鉄の扉が冷たく閉ざされ、そこに閉じ込められているのは一人の女性。だが、その姿は明らかに異質で、目つきや立ち振る舞いには何かしらの威厳が感じられた。彼女の名はミツルギ。しかし、彼女の魂は他の誰かに入れ替わっている。


「どうしてこんなことに…私は妻良蒼華なのに…」


彼女は両手を見つめ、呟いた。その声には戸惑いと不安が混じっていた。もともと妻良蒼華という普通のアルバイトをしていた女性だが、今や見知らぬ姿の中に閉じ込められている。この異変は、数日前に起こった出来事から始まった。


レストランで友人の明美ちゃんとその彼氏・吉崎君と一緒に食事をしていたとき、突然現れた女性、ミツルギが彼女の名前を確認し、空間の歪みが現れた。その瞬間、蒼華とミツルギの魂は勾玉の力で入れ替わり、蒼華はミツルギの姿を持つまま、この留置所に捕らわれてしまったのだ。


「戻りたい…私の体に戻りたい…」


蒼華は心の中で何度もその願いを繰り返したが、現実は冷酷だった。彼女の主張は誰にも信じてもらえず、この異様な姿のまま、疑いの目で見られ続けている。


その時、留置所の扉がゆっくりと開いた。足音が響き、蒼華(ミツルギの姿)の元へ二人の人物が現れた。彼らは如月地所の梅田と轟だった。


「蒼華ちゃん…なのか?」


梅田が慎重に問いかけた。その視線には疑念が混じっていた。蒼華は彼らに自分の状況を説明しようとしたが、声を発するたびにミツルギの声が出てしまい、言葉に詰まった。


「私は…蒼華です。信じてください…でも、今のこの姿はミツルギという女性のものです…」


困惑しながら答える蒼華に、轟は少し戸惑いながらも彼女に霊鏡を差し出した。霊鏡は魂の本質を映し出す特別な道具だ。


「確認のために、これを見ていただけますか?」


蒼華(ミツルギの姿)は鏡を覗き込んだ。そこにはミツルギの姿が映っているが、霊鏡に映った魂は確かに蒼華自身のものであった。


「やっぱり…君は本当に妻良蒼華なんだね…」

轟の声には信じられないという驚きが混じっていた。梅田もようやく事態を理解し始め、深く息をついた。


「ごめんね、蒼華ちゃん。すぐに君の言葉を信じてあげられなくて。」


「いえ、仕方ないです…こんな姿じゃ、誰だって信じられないですよね。」


蒼華は悲しげに微笑んだが、その笑顔には少しだけ安堵が感じられた。彼女は自分の存在を確認してもらえたことに救われた思いだった。


「それにしても…どうしてこんなことになったの?」

梅田は困惑しながら問いかけた。


「レストランで突然、ミツルギという女性が現れて、勾玉を使って私を…私を誘拐したんです。その瞬間、何が起きたのかわからなかったけど、気が付いたらこの姿になっていて…」


蒼華の説明に、梅田と轟は顔を見合わせ、事態の深刻さを認識した。


「つまり、そのミツルギという人物が何かを企てた結果、こうなってしまったということか…」


轟がそう確認すると、蒼華は頷いた。しかし彼女自身も、何が本当の原因なのかは分からず、ただ不安が増していくだけだった。


「どうにかして…元の体に戻らなければ…」

蒼華はそう呟いたが、彼女の言葉には力がなかった。


「大丈夫よ、蒼華ちゃん。私たちが何とかするから。」

梅田は彼女に優しく声をかけた。


「まずは、SPPに協力を仰ぎましょう。彼らなら、この事態を解決する手がかりを持っているかもしれない。」


轟もその提案に賛成し、霊鏡を再び丁寧に収納した。


「どうか、私のことを信じてください…早く元に戻りたいんです。」


蒼華の切なる願いが込められた言葉に、梅田は力強く頷いた。


「もちろんよ、蒼華ちゃん。私たちが君を元に戻すために全力を尽くすわ。」

梅田のその言葉に、蒼華は少しだけ勇気を取り戻した。彼女はまだ戸惑いと不安の中にいたが、それでも友人たちの支えがあることで、希望の光が見えてきたのだ。


彼らはこれから、さらに困難な道のりに挑まなければならない。蒼華の魂を元の体に戻すため、そしてこの異変の真相を解き明かすために、再び動き出すことになるのだった。



後日世界中で、次々と怪奇現象が発生していた。空に突然現れる裂け目、不気味に笑う月、そして見知らぬ場所から現れる幻影のような生物たち。これらの現象に対処するため、APP(超常現象調査機関)はフル稼働していたが、原因も分からず対処は後手に回っていた。


APPの本部では、捜査官たちが不安と焦りを隠せずにいた。最先端の科学技術や魔法を駆使しても、状況を改善することはできない。どの捜査官も、今回の事件はかつてない規模と難易度だと感じていた。


「一体、何が起きてるんだ?」

「これまでの経験が全く役に立たない…」

捜査官たちの声が飛び交う中、梅田と轟もまた、状況に苛立っていた。二人は如月地所の案件でこれまでの成功に自信を持っていたが、今回ばかりは手も足も出ない。


「轟君、何か手掛かりは見つかったの?」

梅田は苛立ちながら尋ねる。


「申し訳ありません、梅田さん。しかし、これだけの規模の怪奇現象が同時多発的に起きるのは前代未聞です…」

轟は敬語で冷静に答えるが、その表情には焦りがにじんでいる。


「まったく、どうしたものかしら…」

梅田は腕を組み、溜息をついた。


そんな中、如月地所のオフィスに一報が入った。「タカマガハラの使者が現れ、APP本部に妻良蒼華の引渡しを要求している」とのことだった。これにより、事態はさらに緊迫したものとなる。それだけに、今回の事件が異常であることを如実に示していた。


「蒼華ちゃんを引き渡せですって!?そんなこと、許せるわけがないわ!」

梅田は怒りを露わにし、轟を連れてAPP本部に向かう決意を固めた。


APP本部に到着した二人は、すぐさまタカマガハラの使者がいるという部屋へと向かった。扉を開けると、そこに待ち受けていたのは…。


「タモちゃん!?」

梅田は驚きの声を上げた。そこにいたのは、見慣れた小柄な少女、タモちゃんだった。彼女は尻尾をふりふりしながら、少し恥ずかしそうに立っていた。


「えっと、タモちゃんが…タカマガハラの使者?」

轟も驚きを隠せず、目をぱちくりさせている。


「うん、実はね…」

タモちゃんは恥ずかしげに笑いながら、説明を始めた。彼女はタカマガハラの霊獣であり、今回の事態を解決するために、タカマガハラの命を受けて妻良蒼華、梅田、轟をタカマガハラに連れて行くというのだ。


「…まさか、タモちゃんがこんなに重要な存在だったなんて。」

梅田は半信半疑ながらも、事態の重大さを理解し、ため息をついた。


「さあ、準備はできた?」

タモちゃんが二人を見上げて尋ねる。


「え、もう行くの?」

梅田は少し戸惑いを見せたが、タモちゃんの目には決意の色が宿っていた。


「うん。今すぐ行かなきゃ、間に合わないことになるかもしれないから…」


「分かったわ。行くしかないわね、轟君!」


「了解しました。」


こうして、三人はタモちゃんに導かれ、タカマガハラへと向かうことになった。


タカマガハラに到着すると、そこには見たこともない美しい景色が広がっていた。澄んだ空、輝く草花、そして壮麗な神殿。しかし、その神秘的な雰囲気とは裏腹に、どこか不穏な空気も感じられる。


「ここがテンシ様の神殿だよ。」

タモちゃんはそう言って、三人を神殿の中へと案内した。


神殿の中には、神々しい光を纏ったテンシ様が玉座に座っていた。その隣には、オオババ様と呼ばれる老婆が立っており、そしてもう一人、石化が解かれたミツルギの姿もあった。


「蒼華ちゃん…」

梅田は思わず駆け寄りそうになったが、ミツルギの姿を見て言葉を失った。


ミツルギは神妙な面持ちで、頭を下げて言葉を発した。「私の過ちが、全ての原因です…」


彼女は続けて、テンマ様の力の弱体化を解決するために行動したこと、しかしその結果としてアマツミカボシが現れ、テンマ様をさらったこと、そして自分が石にされていたことを説明した。


「だからって…こんなことに…」

梅田は怒りと悲しみが交錯した表情で、ミツルギを見つめた。


「今、唯一の解決策は…」

オオババ様が口を開き、勾玉を握りしめた。「この勾玉の力で、魂を元に戻すこと。」


オオババ様は呪文を唱え始めた。その声が響くと、神殿の中の空気が変わり始めた。蒼華(ミツルギの姿)とミツルギ(蒼華の姿)にそれぞれ光が包み込み、その光が次第に二人を包み込んでいく。


次の瞬間、光が収まると、二人の魂は元の体に戻っていた。蒼華は自分の手を見て、思わず涙を浮かべた。「戻った…戻れたんだ…」


「これで、全て元通りね。」

梅田はホッとしたように微笑んだ。


「でも、まだ全てが解決したわけじゃない。」

テンシ様が厳しい表情で告げた。「アマツミカボシの復活による混乱はまだ続いている。これからが本当の試練だ。」


蒼華たちは再び緊張感を取り戻し、これからの戦いに備えることを決意した。そして、再び訪れるかもしれない危機に備え、力を合わせる覚悟を固めるのだった。

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