異世界人
クセラは少し変わった外見をしていた。何しろ、見るたびに印象が変わる。印象どころか、性別も、年齢も、人種も変わる。
大体は銀髪ボブカットの男の子。でもこの前は若い女性だったし、細身で背の高い中年男性のこともある。それでもなぜかわかるんだ。クセラはクセラだって。
「そんなこと言うけど、聖人だって見た目がころころ変わるからね」
そんなことを言われてびっくり。
「聖人も僕も、異世界人だろ? だから、存在が安定してないんだ」
魂だけここにいて、生まれ変わった今までの姿が揺らいでるんだろうって。
「それなら、僕らのことを見たいままでの村人とかは、どう思ってたんだろう?」
雲海を揺蕩いながらクセラに問う。彼は何でも知っている。きっと元の世界への戻り方も。でも、それはなぜか怖くて聞けない。
「この世界の人間からは、この世界の人間らしく見えてることだろうね。人は見たいものをみたいようにみるから」
それなら、僕が今見ているのはなんなんだろう。そして、クセラに見えているものも、なんなのだろう。
でも、考えても仕方がない。雲のいびきを聞きながら、しばらく雲海のベッドで昼寝をする僕らだった。