十話
楓華が古龍との戦いを終えた一方、土砂降りで1寸先も見えぬ夜を明かした一行は目を覚ました。
空には雲ひとつなく、あるのはルーナの微笑みを思わせる暖かい太陽の光。
支度を済ませ続々と洞窟を出た一行は昨晩とは打って変わって清々しい朝に伸びをした。
遊田「ふぅ。空気が上手いな。馬だけに」
美帆「は?」
遊田が面白さの欠けらも無い言葉を口にしたのはわけがあった。
何と一行の目線の先には五頭のペガサスがいたのだ。
燈威「目が覚めたらペガサスがいるだと?」
中鳥「ペガサスか…」
アイリス「ペガサス?誰が呼び込んだのかしら。周りに見えるのは高い木々だけ。もしかして…そうよね。ねぇみんな、1人づつペガサス1頭と友達になって名をつけるのはどう?」
満帆「いいね。なら私はアマルテアにするわ。よろしくね、アマルテア。」
ペガサスは頭を下げ嘶いた。
遊田「じゃあ俺は、かっこいいしエピメテウスで。よろしくな」
ペガサスは少し不満げに嘶いた。
アイリス「じゃあ私はトリンキュローで。よろしくねペガサスさん」
ペガサスは喜んで嘶いた
中鳥「お前らみんな太陽系の衛星から選んどるんか。なら俺も。よろしくアルビオリックス」
ペガサスは勇ましげに嘶いた
燈威「最後は僕か。ならみんなの名付け元に倣ってディスノミアで。これからよろしくなディスノミア。」
ペガサスは辺りに響き渡る優美な声で嘶いた。
遊田「こういっちゃあなんだけど移動手段が手に入ったのは嬉しいな。さ、みんな、庭園を目指して進もう!」
「「「「おう!」」」」
こうして一行は徒歩ではなく空を飛ぶことで移動を再開した
†
遊田「涼しいなあ!すげえよエピメテウス!」
元気そうにエピメテウスは嘶く
満帆「本当ね!こんな景色初めて見るわ!」
一行の眼下には広大な森林と草原が広がり、遠く後方を見れば帝国アイラン・サイラルの城も微かに見える。
対して眼前には幻想的で雄大な姿を見せる浮島があった。
アイリス「確かルーナ様、5つある浮島のうち中央にある1番大きな島が庭園だって言ってたよね!」
燈威「そうやったな。よし、みんな!あの浮島へ急ぐぞ!」
そうして足早に(ペガサスが)浮島へと向かう一行。
スピードを上げて進んでいると突如とても可愛い声が聞こえた。
「ねぇみんな!この世界を救いに来た6人の救世主でしょ?ルーナ様が呼んでる!僕の案内に着いてきて!」
と言うと目の前にその姿を現した。
頭上に輪があり、顔は幼く、どちらかと言うと女の子に近い。
髪は黒色でぷくりと丸い鼻と白い歯が輝く口元がトレードマークだ。
身長は低いが細く触れるだけで折れてしまいそうなほど繊細な体つきである。
そして背中には純白の大きな羽が生えている。
典型的なキューピッドといった外見であるが、顔に反して男の子だ。
栗饅頭のような大きさの可愛いナニが着いている。
燈威「君は?名前はなんと言うのですか?」
「僕はイスラフィル!さ、着いてきて!」
流れされるようにイスラフィルの案内に着いていくとそこにはルーナが言っていた華やかで広大な美しい庭園があった。
ペガサスの背中から降り、その庭園の入口に一行はたっているのだが、目の前には石造りの巨大なアーチがある。まさに至高天と言ったところだ。あまりに現実離れしている上言葉に表しきれない景色に一行は自然の歓喜の声をあげる。
「「「「「「おぉ!!!」」」」」」
中鳥「ん?なんか今1人多かった気がするんだが?」
ルーナ「てへっ(ノ≧ڡ≦)☆バレちゃった。やっほー全次元神統括神 ルーナデーす!」
満帆「えぇ…。」
アイリス「ギャップ萌えェ!」
遊田「…。」
ルーナ「ありゃりゃ、前会った時と違って性格が違うから驚いちゃったかなー?」
「はぁ。またですかルーナ様。いくら自分の庭園にいて好き放題できるからって気を抜きすぎです!もっと気を張ってください!ほら、5人も混乱してますよ!、はじめまして救世主様方。私はフェリス、ルーナ様の秘書です。よろしくお願いします。」
遊田「ど、どうもよろしく…。」
燈威「よろしくお願いします。」
満帆「よろしくお願いします…ところでルーナ様の扱い凄いですね…尊敬します。」
中鳥「あ、よろしくっす。」
ルーナ「んんん。さ、気を取り直しまして。前にも伝えたかと思いますが、私のk…いや、皆さんと一緒にこの世界に来た西園寺・ローズベルク・楓華さんが、あなた達の相対した邪龍によってwood Islandへと飛ばされてから早いものですが1ヶ月ほどたっています。不思議なことにあの島には私ですら鑑賞することができていません。もしかしたら私に使える天使の内1人に適性があるかも、という話までは出ていますが分かりません。そこで、こちらからあなた達にはお願いがあるのです。どうかあの子が戻ってくるまでは自分たちの訓練に勤しんでは頂けませんか?彼女の損失は大きく皆がショックを受けているのは分かります。しかしあなた達残された5人が力を合わせることが出来ればあの子の力の数倍の力を出せる。だから時間の無い今はひたすら訓練に集中して欲しいの。もちろん特別に訓練に集中できる空間も用意しました。どうでしょうか?」
燈威「僕はいいけどみんなはどう?」
満帆「私はまぁ、ええよ」
アイリス「楓華ちゃんのことすっごく心配だけどおーるおっけー」
中鳥「あいつなら大丈夫やろ」
遊田「楓華なぁ…こっち来てからはあれだけやってるけど元の世界では頼りなかったんだよなぁ。俺は少し心残りだけどまぁいいや。」
燈威「そっか。ちなみにルーナ様、その訓練に集中できる空間というのはどこに?」
ルーナ「ここです。この浮島群こそその空間なのです。」
中鳥「さっき時間無いです言うてたけどそこはどうなん?あとどうやってここ来るんよ。」
ルーナ「そこはご安心ください。私が空間魔法によりこの浮島にいる限り、元の時間の
1秒=1年の空間を生み出しました。それとここへの移動手段ですが、あなた達に授けた神器に空間魔法を表す渦を巻いたシンボルがあるでしょう?その部分に手をかざしてください。」
「そしてΣτο πλωτό νησί. と唱えるのです。するとここへいつでも来ることができます。加えてそれらの神器は無くしてもすぐあなたたちの手元に戻るようになっています。だから心配はいりませんよ。」
満帆「へー。あ、てかさ、空間魔法のおかげで1秒=1年の空間を生み出したのはすごいんだけどその中での私たちって老化はあるの?老化って言うより成長の方が正しいか。」
ルーナ「そちらの方も心配はいりません。ただあなたたちのスキルだったり身体能力が上がるだけで体そのものが時間が立ち過ぎて老化しないために不老を付与してあります。」
満帆「なら安心だわ。」
「では、問題ないということで。よろしくお願いします。ひとまずはあなた達の元に送ったペガサス諸共帝国に送ります。またお会いしましょう。」
そして一行は返事をする間もなく帝国の城内にある馬小屋の前に移動していた。
遊田「Wow…」
満帆「何その反応。おもろすぎ笑」
†
場所はまたしてもwood Islandに移る。
楓華はなんともまあ大胆であった。
恥じらいもせず、拠点より少し高い位置にある崖の先端に寝転び月を見つめていた。
忘れてないだろうが、この世界において楓華はかなりレア度の高い服以外着ることはできない。
最初に来ていた服も帝国に置いてきた上、ルーナから受けとったゴスロリドレスはついこの間の戦闘の際に失っている。
まぁつまりはだな、今楓華は一糸まとわぬ体を晒して崖の上の草むらに横たわっている。
衣服という布を通さず直に触れる夜風、雑草、花。そして眼前には幻想的な白い月が見える。
この時点でわかるのは、白い月が見える方向に帝国アイラン・サイラルがあるのは間違いないということだ。
あまり詳しくないが占星術を少し齧ったこともあり、多少は自分の位置も割り出すことが出来ている。
しかし、それをさておいてもそんな姿でいるのはもはや現代芸術に等しい。
ふと楓華はその場に立ち上がり背中から大天使を思わせるほど純白で大きな大きな羽を生やした。
月の光に照らされて美しい。
そしてその羽を広げ崖から飛び立った。そして降り立った先は先日の古龍との戦いにて破壊の限りを尽くされた場所である。
「うわぁーボロボロ。ん?なにあれ」
ふと古龍が死に絶えた場所に何か長い棒状のものが刺さっていることに気づきスタスタと歩き出す。
「うんしょ!フッ!これは…槍?それも少し黒いオーラが出てる上なっがいよこれ。なになに、名前は…〈亡国の槍〉?うわーこれちょっとなんかかっこいいぞぉ?もらっちゃおー。」
楓華は全長3mはあろうかという長槍を片手で軽々と振り回す。
「軽いねーこれ、何でできてるんだろ。にしても亡国の槍なんてすっごい物騒な名前だねぇ。まぁよし。かっこいいこれ〜えへへっ」
そして時も忘れてひたすら長槍を振り回し、使い方のコツを覚え始めた頃遠くから声が聞こえる。
「楓華さんそんなところで何してるの?」
「あ、にゃいくん!」
楓華は再び羽を広げ崖から声をかけるにゃいの元へ飛び立つ。
「羽でか!てかその姿//」
「あ、ごめんごめん。服着れなくてさー今隠すよ。」
そう言って楓華は自らの羽で全身を覆った。
「でさ、コレ見てよ。あの古龍倒したところにすんごい長い槍が刺さっててさ、かっこいいから頂いたの〜」
言いながら楓華は亡国の槍を片手で回してみせる。
まだ拾ってから1時間も経っていないというのに、無我夢中で振り回し続けたことにより得たその繊細な動かし方や逆に大胆な使い方。それ等を自重もせず次々に見せつける。
3mを超えるその長槍の切っ先は音速を超え軌道上にある空気すら切り裂き常に風切り音が鳴る。
にゃい「ふわぁー!すごいにゃ!」
楓華「エヘン」
と、そこにもう1人
「おーい、さっきからものすごい風切り音が聞こえてるけど大丈夫かい?って楓華さん何その長い槍、てか服ないの?」
にゃい「あ、兄ちゃん!見てこれ!楓華さんがすごい長い槍片手で振り回してたの!」
仁「どれどれ、見にくいな…〈照らせ〉ほぉ…これは…うん、すごいね。なんというか禍々しいし、それどこで手に入れたのよぉ」
楓華「これはね、古龍が伏したところに刺さってたんだよ!名前は〈亡国の槍〉って言うそうな。」
仁「かっこいいねぇ…その、天使姿には少し似合わないけど、地球で見た某アニメのワンシーンを思い出すよ、ヱ何とかってやつの」
にゃい「それだともう一本あるといいよね」
3人が話し合っていると突如空が白く輝く。
「「何?!」」「ま、眩しい!」
その明るさ、さながら超新星爆発の如し。
一瞬にして昼間のように明るくなった空ににゃいと仁は直視を出来ず目を伏せて跪いている。
しかし楓華はその場に立ち、その光を見つめている。
直後、楓華の背中から生える純白の羽根がその光と共鳴するかのように光り出す。
「な、なんで楓華さん無事なの?!」
「やっぱり人間と天使のハーフだからって事?」
「うーん、そうかも。2人にとって直視できないこの光が私には眩しくない。それどころからまるで真冬にお布団にくるまっているかのような暖かさすら感じるよ。すごく、すごく気持ちいい//」
「やっと見つけました!あなたがルーナ様の言っていた救世主の1人、西園寺・ローズベルク・楓華様ね!私はルーナ様に使える下級天使のアンジェラでございます。ルーナ様の名により、今日この瞬間から貴方様の奴隷、ペットとして仕えます。よろしくお願いします!楓華様!」
そう言いながら1人の天使が現れた。身長は160cm程と楓華と同じぐらい。服は来ておらず、遠方で5人を案内した天使と同じような見た目である。しかしこちらにナニは着いておらず完全に女の子だ。ちなみに金色に輝く髪はとても長く、先端は足首に届きそうだ。
楓華「え?ペット?奴隷?ルーナの配下?えー!どういうこと、ちょっとついていけないよ!」
アンジェラ「大変失礼致しました!お詫びにこのムチで私を叩いてください!さぁ!」
楓華「待って待って!もっと追いつけなくなったよ!お願いだから落ち着いてぇ!…そもそも私攻める側じゃなくて責められたいし。」
アンジェラ「失礼いたしました!ではこの奴隷の首輪を私目の首につけてください。そして『契約』と唱えれば完了です。さぁ!」
「えぇ…じゃあ失礼して。『契約』これでいいの?」
「えぇ、大丈夫ですとも。ちなみにこの首輪、はめれば一生取れることはありません。よろしくお願いします、ご主人様!」
「ちょっと爆弾発言!」
「エヘヘェ」
「と、忘れていました!楓華様!こちらへ来てください!」
「ん、いいよ。」
アンジェラの声掛けに応えると、突如2人の目の前に空へと続く階段がある。
†
3人がその階段を登るとそこには中心にぼんやりと光を出す長く白い槍が浮かぶ円形舞台とそれを囲む幾千の花があった。
「アンジェラ、あの槍は?」
「あれは天使族に代々伝わる長槍です。名は〈エンジェルスピア〉です。伝説によると、かつてのこの槍を持っていた天使族の王が軽く突きを繰り出すだけで6つの山を穿いたとされています。」
「そんなん私が持ってていいの?」
「もちろんですとも!貴方様にはその資質があります!さぁ、手に取ってください。」
楓華は覚悟を決めその槍の持ち手に触れる。
直後、2人の全身に心地よい快感が走る。
「んあああああ//!な、何この感覚!何もしてないのにイッちゃうよぉ!」「ふにゃぁぁ!私もイっちゃいますぅ!」
その突然で強烈な快感に2人はその場で果てた。
そして楓華の体液を浴びた〈エンジェルスピア〉は再び快感をもたらす。
2度目にしてさらに強い快感に再び果てながらこぼす。
「んんん/////そ、そうでした!この長槍、所有者の濃厚な体液を浴びる度に所有者と近くにいる天使族に強制的にマスターベーションをもたらし、同時に進化するやりでした!ァン」
「そ、そんなぁ!んッ//と、止めてぇ!助けてぇ!しんじゃうからぁ!ああああああああぁぁぁ!!」
そして果てては体液を出し槍が強化され強制的にマスターベーションを繰り返し、2時間がたった頃。
ドライになり何も出なくなった楓華はその場に倒れ伏していた。辺りは〈エンジェルスピア〉の明るさに加え、楓華の体液でびちゃびちゃに濡れている。
数分立ち、楓華がゆっくりと周りを見渡すと自分と同じようにぴくぴくと痙攣しながら横たえるアンジェラに加え、円形舞台に来た時には2人以外いなかったはずなのに自分と同じように横たわる天使が20人程いた。
(えぇ…とりあえず終わったけど、なんかめっちゃおるやん。100回目のマスターベーション超えてから数えてないけどめちゃくちゃ気持ちよかったな、すごく。てかアンジェラは大丈夫かな?)
「あ、アンジェラ、大丈夫?」
「んえぇぇお手手に暖かい感触がぁ。!ふえ?!楓華様!わ、私は大丈夫ですよ!って何してるんですか」
アンジェラが驚くのも当然である。
度重なる強制的マスターベーションによる快感で恍惚とした顔を浮かべ、羽根含め全身が自らの体液とアンジェラの体液によって濡れており、さらに快感を求めようとしてアンジェラの華奢な手を自身のクリの中手首まで入れて掻き回している。
もはや自分でも気づかずになんでもいいから快感を、と求めるその姿はエロスでしかない。
他になんと形容できようか。
「アンジェラ、主人として命令よ、私にもっと快感をもたらしなさい!」
「ふぁ、ふぁい!では失礼します。」
アンジェラはそういうと、楓華の中に入れられていた手を匠に動かし性感帯を優しく刺激し始めた。
それと同時にもう片方の手でアナ〇の方を攻め始める。
さらに楓華の乳首を下で舐め回す。
「んッ//」「アッ//」「出、出る!」
と楓華が喘ぐと楓華の中に入っていた手を引き抜き、先程まで乳首を舐めていた口を楓華の下の口へと移しその体液を浴びた。
「!ガボボボボ!おえぇ!お、多すぎます!」
しかしアンジェラがそう嘆いても勢いは止まらない。
そしてやがてその噴水は止まり、2人ともその場に再び倒れ伏す。
翌日、楓華は最初に寝転んでいた崖の上で目を覚ました。
(あれ?私昨日崖の上にいたはずなのになんで拠点に居るのかな?てかなんだろうこの槍、ふむふむ、〈亡国の槍〉と〈エンジェルスピア〉?まさか双槍使いになったってことかな?まぁいいや、なんか記憶が曖昧で何も思い出せないけど、なんかすっごく体が重いからもう1回寝よっと。)
そして過激な夜を過ごした楓華は再び眠りにつくのであった。
♰
陽の光が大地に降り注ぐ。
その光はめぐみとなりあらゆる生命を産む。
地には草が生え、やがて森となる。
空には雲があり、やがて雨となって大地に降り注ぐ。雨はやがて川となり海へと流れていく。
その海の底が揺れると新たに山ができる。
そういったサイクルの中であらゆる生命が生まれ、人族だったりエルフ族だったりといった地上で生きる種族から、人魚族や天使族など、陸に限らず空、海あらゆる場所にあらゆる種族が誕生した。
そしてこの世界を支える1番の存在は神である。
あらゆる属性や場所に神が宿っており、時にその姿を生命体の前に顕現する。
どんな神がいるか紹介をするとあまりに話が長くなる故、また今度お話しよう。
今回はとある神にまつわる物語である。
†
大地は、あらゆるものの基盤となる。
大地があるから水の外で生きられる。
大地があるからそこに種族が広がる。
大地があるから植物が生える。
大地があるからもたらされるものがある。
もたらすのは恵。そしてそこにも神がいる
大地の神、名は「ダンゴムシ」
彼も時折下界に降りては奇跡で救う神の1人
彼は少しほかとは違う神でもある。
それは特に人族が好きなのだ。
人族の子が森で遊んでいるところや、寝ているところ、人族の大人が仲間を守るために戦うところ等、色んな場面を見守っている。
そして見守りながら子供たちを守ったり陰ながら頑張っているのだ。
時は1万4998年 帝国アイラン・サイラル。
明くる日に来る大災害から世界を救う救世主として別次元にある地球という星から数十名がやってくる。
そして彼ら救世主が訓練し、成長し戦う姿もまた見守っていた。
自らに存在感を薄める魔術を使っているため
、そばで見守っていても基本気づかれることは無い。
しかしある1人の救世主は違ったのだ。
†
ある日のこと、帝国アイラン・サイラル領より北にある森の中にて、救世主のひとりが地龍と戦っていた。
一振叩きつければ大地がひび割れる力をもつ地龍は、その変わりに動きが鈍重であるため、軽々と攻撃を回避した彼女はその直後、地龍の頭の中へと強烈な音波を叩き込む。
更にその直後、音波により脳を揺さぶられた地龍はその場で動きを止める。
そしてできた大きな隙に、ここぞと言わんばかりにトドメを刺さんとする彼女の魔法が炸裂する。
「私の勝ち、ね。♪」
それは炸裂の直後空中にてさらに弾け、生命の起源を思わせるような壮大なクラシックミュージックへと姿を変えて奏でる。
彼女が実に優雅で見事な宙返りを決め着地をすると、その背後で地龍は音を立てて倒れ伏す。
彼女の名は誤
物好きなルーナが新たに地球から呼んだ救世主、楓華の友人である。
おもむろに誤は目線の先にある1本の木へと視線を向けた。
「ねえ、そこで見てるの誰?」
「…」
「その木の後ろに隠れてこっちを見てたのわかってるんだよ?」
「ぼ、僕の姿が見えるの?」
「見えるも何もバレバレ。僕の目は黙せないよ。何せ私の使う魔法の副作用出その姿ははっきりと見えてるから」
「はぁ、そこまで言うなら自己紹介するよ、僕の名前は〈ダンゴムシ〉この世界の
大地神、〈ダンゴムシ〉だ。よろしく。完璧な偽装をしてたと思ったのに、こんなふうに隠れてる僕を見抜いたのは君が初めてだ。」
「そ、私は誤。ついさっきこの世界にやってきたメシアだよ。」
と、ここで先に誤のステータスを公開しておこう。
名前 誤
性別 女
身長 150cmくらい
職業 魔法職〈BEAT Prince〉
Lv. 77
スキル 音楽魔法 空間魔法 料理魔法LvMAX
最高の子守唄
武器 Magic Wand of Music
サブ武器 ムチ
服は白シャツに、Vivid pinkのネクタイ、上には地面に引きずるほど裾の長い深い紺のブレザー、
その下にはVivid pinkのミニスカートと薄手の黒タイツ、とスニーカーを履いている。
指先にはあらゆるものを具現化して使うことが出来る〈具現化の指輪〉をはめている。
更に特徴的なVivid pinkの瞳は、5秒と見つめるのも困難なほど美しい。
「メ、メシア!?てことはまさか…」
「そのまさかだよ。ルーナと名乗る神様が僕をこの世界に召喚したんだ。明らか座標ミスってる気がするけど。」
「ルーナ様…また勝手に問題を…。」
「どうかしたの?」
「実は、ルーナ様は僕の上司なんだ。そして僕の生みの親でもある。この見た目もルーナ様が作ったんだ。」
そう言われ、誤はダンゴムシの姿をまじまじと見つめる。
身長は130cm程で、その身はダンゴムシを思わせるような黒い腰装備に加え、手が見えない程袖の長い服を身にまとっている。
下には短パンと厚底ブーツを身につけている。
目の色は黒く、森のように深みがかった緑色の髪が特徴だ。そして正面から見ればわかるが、髪型はパッツンであり、非常にどストライクゾーンである。もしこれが野球で私が審判ならダンゴムシ側のチームに対して100点を差し上げたいものだ。
そして彼の肩には2匹のダンゴムシが乗っている。
彼いわく、大地神の使い。つまり部下らしい。
見た目は、総括してショタである。
口調やその顔つきから見るにパッと見男の子であるが、声の高さや驚いた時に見える仕草からして男装している女の子であると、既に誤は見抜いているが、それにダンゴムシは気づいていない。
「その…大変な上司を持ったね。ま、頑張って。そういえば、私が召喚される前にもう1人そばに召喚される人がいたから、こっちに来たらまたあっておいてね。名前は確か、
豪汰って言ったかな。忘れたけど。」
「豪汰?てかもう1人?もう、ルーナ様勝手にも程があるよ。あぁ、秘書のフェリスさんに怒られてるといいな。」
「ま、雑談はこんなものにしてと。私さ、この世界に木d…間違えた楓華も来てるって聞いたんだけど、どこにいるん?」
「んぇ、楓華ちゃんのこと?それならとある邪悪な古龍にwood Islandって島に飛ばされたよ。どうしても会いたいってんなら僕が連れてくよ。ルーナ様は干渉できないらしいけど、なんせ僕はダンゴムシ、この世界の
大地神だからね。」
えっへんと言わんばかりに背伸びをして胸を叩くその姿はやはり可愛い。
「へー、ほんとだね?違ったら大地神だろうとなんだろうと容赦しないよ。」
「絶対だよ!」
「じゃあお願いするね。よろしく、
大地神様。」
そして2人はその場から姿を消し、大陸ユーシリウスを出てwood Islandへと飛ぶのであった。




