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九話

古龍との戦いを終え、楓華は疲れから寝込んでいた。

一方、楓華が飛ばされ燈威の率いる一行が不在の帝国アイラン・サイラルでは混乱や絶望が取り巻いていた。しかし異世界に転移させられていて神から受けたスキルを最大限活かし、少なくとも自分が生き残れればいいと考える人間が多くいた。

因みにルーナがさずけたスキルは大きくわけて4つに別けられる。

ひとつは攻撃型。

ひとつは防御型。

ひとつは支援・回復型。

ひとつは特殊型。

攻撃型にもパワー系やテクニック系、スピード系に別けられる。しかし大半がパワー系である。

防御型には大盾によって力ずくで攻撃を防ぐものや、小盾によって攻撃の軌道を変え、防ぐような者もいる。

支援・回復型は文字通りで回復魔法を使えるものや自ら調合できるもの。もしくは後方から魔法で支援出来るものなどが居る。

特殊型と一括りにしてあるがそれらは全然異なるもので、中には鍛治職や研究職、商売職が居る。

彼らはこの力の真の価値を知らないが、それを引き出そうと考えていた。

☦︎︎

場所は訓練所に移る。

帝国に残されたみんなで少しずつ自主練をしようと言うのだ。

「でも自主練って言ったって何する?」

「確かにな…」

「攻撃型はやっぱり素振りじゃない?剣の持ち方や振り方がわからなきゃ型なんて夢のまた夢だろ?」

「あ、じゃー私たちこっちで素振りしてるから男子どっか向こうで素振りしてなよ」

「…わかった。行こうぜー」

━━━━━━━━━━━━━━━

「防御ってどんな自主練すんの?」

「それな」

「攻撃系は素振りでもしてんだろうけどさ。」

と、防御型のグループは困りを見せていた。すると背後から思い足音ともに爽やかな青年と顎に髭を蓄えた寡黙な男性が声をかけてきた。

「おや、貴女方は救世主様であられますか?」

「あ、はい。」

「大盾、小盾の使い方でしたら私がお教えしましょう」

「え、良いんですか?ありがとうございます!」

「僕も忘れないでね、僕は小盾専門だから」

━━━━━━━━━━━━━━━

「回復、支援、訓練…うぅ、どうしたらいいの?」

「とりあえず使える魔法を確認してみない?」

「そうだね、でもどうやって使うの?」

「…。わからん」

と、方針は決まったが困惑している支援・回復型の元に1人の女性が現れた。

その女性は魔法使いだと言った。

しかし筋骨隆々で背中には2丁の大剣を背負っているその姿には回復のかの字も見えない。

「おや?お前ら異世界から召喚された救世主達か?どれどれ?低い背の女が3人、パッとしない男が2人か。どうやら魔法職だな?んで魔法の使い方がわからず困っていると。」

「な、なんでわかったんですか?」

「ん?そりゃー簡単さ。お前らの背格好。そして表情だよ。」

(見抜かれた…!この人一体?)

「お?そこのお前、私が何者かって思ってるな?さっきも言ったがあたしは回復・支援型の魔法職、サラだ。」

((((((なんかすごい人だな。))))))

━━━━━━━━━━━━━━━

「鍛冶職って何するんだ?なんか作るか?」

「んーいくらスキルとして持ってるからってなんも分からないからなぁ。」

「んじゃ街に出て鍛冶師に会いに行くか。」

「おう。」

━━━━━━━━━━━━━━━

「研究職…今更だけどいいスキルだよなぁー研究職というスキルのおかげで好きに研究出来る。ぐへへ…ン?おやおや、もしや帝国の城の上に見えるあの姿は…ほう。なるほど。いいですねぇこのスキル。対象に集中すれば勝手にズームしてくれる。あれはTetumaとRe2ね。一体何を?こっそり探りますかねぇ」彼の名は北村。好きな物には目がなく、骨の髄まで調べ尽くす変態だ。

━━━━━━━━━━━━━━━

「商売か…。んーとりあえず帝国の宰相さんに会いに行って…俺の予想があってればこういう異世界には必ず商業ギルドがあるはずだからそこへの紹介状を書いてもらおう。」

そうつぶやく彼の名は梅山。コードネームは「ファーストペンギン」である


と、そんな感じで各々訓練に当たっていた。

そしてその姿を城の上層から見る姿が2つあった。

「ふむ、私たちから声をかけるより先に動き出すとは。1人飛ばされ1部は遠征。さらに2人姿が見えずもう1人は神の気まぐれか気がつけば大陸の外。強大な戦力はこの国にあまりいない。しかし、彼らなら上手く切り抜けるだろうね。」

「ええ、私もそう思います。陛下」

多くを語る彼は帝王「ガイザー」まだ齢こそ12と若いがこの世界では成人が14であるためそれほど若くはない。

そして同意した彼女はガイザーに使える戦闘メイド、「ライザ」

異空間から語る私も恐れる2人だ。

情報源は分からないが彼はなんでも知っている。



ここで、少し昔話を語らせてもらおう。


昔、アイラン村には家族と幸せに暮らすサイラルという男がいた。

サイラルはとても頭が優れておりその村はおろかその大陸、いやその世界の中でもひと握りの頭脳を有していた。

そんな彼は当然村一の人気を持っており、日々村の手助けをしていた。

そんなある日サイラルは村の老婆に頼まれ、村より少し離れた場所にある森の中に薬草を取りに来ていた。


「今日もいい天気だな、木々の空隙から差し込む光は程よく眩しくて、空気は澄んでいるし空には雲ひとつない。…しかしおかしいな、普段なら鳥のさえずりや動物の呼吸が聞こえない。それどころか動物や虫が見えないぞ?」

サイラルの言う通り、森全体が過剰な静寂に包まれている。

(なんだ?これは大災害の予兆か?…そういえば今朝私に依頼した老婆は今まで1度も私に関わろうとしなかった。何かおかしくないか?いっt)

と、その時村の方から神さえ顔を顰める程の轟音と共に濃い紫色の光が全てを飲み込んだ。

その圧倒的すぎる衝撃に思わずサイラルは膝をつき蹲る。

「ー!っなんだ?これは、村の方、か、ら?」

(何だこの音と光!村に!急がなくては!家族が!)


サイラルは劈く轟音と射るような光に意識を朦朧としながら村へ向けて走り出した。


サイラルが森で衝撃に耐えている頃、村では悪夢としか言い表せない光景が広がっていた。

森にいたサイラルには音と光だけが届いていたが、この禍の爆心地には物理的な衝撃が広がっていた。

それにより村の家屋は大半が崩れ去り、衝撃波をモロに受けた住民は血を撒き散らす肉塊へと成り果てた。


この凄惨な出来事が起きたのはサイラルの家族も例外では無い。

しかし村の他の家から小さめの山1個分ほど離れている上心配性なサイラルが以前モンスターが襲ってきた時以来張っていた結界のおかげで被害は小さい。

とはいえ家は半壊しているし2人の子供を庇ったサイラルの妻は左腕を肩口から失い、血を流している。

(なん、なの?いきなり閃光が走って直後に爆発が…、サイラルは?サイラルは無事かしら?)

「サイ…ラル…」

「お母さん!」

「ママ!」

幼い2人にはあまりにも衝撃的なその状況に当然ながら泣きじゃくる。


と、その時3人の耳に何者かの足音が聞こえた。


「大丈夫か!な、アンリー!その怪我は?もしかして2人を庇ってか?!その出血…まずい今すぐ処置しなくては!2人とも、ママの腕を元の位置につけろ!アンリー!かなり痛いだろうが少しの間我慢していてくれ!…

偉大なる大天使ローズベルク!万物を癒す天使の涙をもって癒せ!アルティメットヒール!」


サイラルが唱えた最上位回復魔法は即座にアンリーの怪我を癒し擦り傷をおっていた2人の傷すら回復させた。


「サ、サイラル?あれ、無くなったはずの腕がある?…ありがとう…。」

「グスンお父さん…」

「パパ!良かった、生きてたんだね!」

「よし、これで一安心だn」


何かの液体が飛び散る音ともにサイラルの視界が赤色に染まり同時に鉄の匂いが鼻を刺す。


「え?」


不思議に思ったサイラルが目元の液体を拭い目を開くとそこには口だけが残されそこから噴水のように血を吐き出しながら呻き声をあげる3つの血まみれの肉塊があった。


「は?」

「クハハハ、やはりとても美しい肉塊が出来たぞ!」

「え?は?」

「ム?貴様、この肉塊を見て素晴らしいと思わんのか?もっと目を凝らして見てみろ、この美しすぎる赤、噴水のように吹き出す血、触ってみればわかる臓物の暖かさ、更には永遠に聞こえるこの呻き声!最高だぞ!」

「は?」

サイラルは混乱の顔を浮かべ泣きながらその場に膝をつく。

眼前には禍々しくて直視すれば吐きそうなほどの殺気を放つ強大な黒龍が居る。

「おい、なんとか言ったらどうなんだ?こんなにも美しい作品ができたんだぞ?まさか貴様も我が作る最高の作品のひとつになりたいというのか?ならばー」

「おい、お前…なにを、した?」

「雑種の分際で質問に質問で返すとはなんと愚かな。だが、いいだろう。この寛大すぎる我が特別に答えてやろう。簡単だ、闇魔術「███|《解読不可》」を行使したあと、蘇生魔法「███|《解読不可》」で命だけをつなぎ錬金術「███|《解読不可》」を用いてとても美しい肉塊を生み出したのだ!」

「お前…許してなるものか!糞蜥蜴!」

「あ゛?糞蜥蜴だと?ゴミカスの雑種の分際でこの我に歯向かうなど言語道断、無知蒙昧にも程がある!貴様、我が肉塊コレクションに入れる価値もないわ!死ね!」


サイラルが反応するより早く黒龍じゃりゅうの手から放たれた槍がサイラルの心臓を貫きそのまま背後の壁に突き刺さり、サイラルは死んだ。


と、思いきや今度はサイラルの視界が白色に染まる。



「今度はなんだ!ここはどこだ?!おい!」

「落ち着きなさい、ここは天界、ここではあなたがいた次元と異なる次元のために、時間が進まないのです。慌てる必要はどこにもありません、落ち着きなさい。」

「賢なるものサイラル、あなたは理不尽にもこの世界、ラルジュにおいて最も凶悪で残忍な邪龍、〈ギン〉に出会い殺されてしまいました。」

「…どういうことだ?つまり、私は今死んでいる?のか?」

「そうです。ですが、個人的な怨み、そしてあなたを死なせる訳には行かないのです。」

「は、はぁ。ちなみにあなたの名前は?」

「私は全次元神統括神 ルーナ。ルーナと呼びなさい。」

「ということはあなたは偉大なる神の力で私をここに呼び寄せた。ということですね?」

「ええ、理解に時間がかかるかもしれませんが、その通りです。そして今からさらに混乱させてしまうかもしれませんが、あなたを救うため、あなたに私から力を与えます。それらはとても強大でこの世界、いやあらゆる次元のことわりから外れた力です。」

「…どんな力を私にくださるのでしょうか?」

「ひとつは不死鳥の力。100度まで死んでしまっても再び生き返ることができます。そしてその度にあなたは記憶を保ったまま人生を1からやり直すことになります。」

「ひとつは超回復。あなたの体力や怪我、細胞や精液、あらゆるものの回復の効率をあげます。」

「ひとつは記憶保持。不死鳥の力で生き返ることができるとはいえ老化は起きます。その際に大事な記憶を失ってしまわないようにこの力を授けます。」

「ひとつは統制王。村の再建、又は国を作る際有用です」

「ひとつは転生。これは1度しか使うことが出来ない。しかし1度使えば別の次元の別の世界の人間に転生し生きることが出来る。しかもあなたの世界と繋がりを保ったまま。」

「これらをあなたに授けます。」

「なるほど、ルーナ…の言う通り理から思いっきり外れている。」

「どう使うかはあなた次第。でも、どうか力に溺れて闇に堕ちたりしないで。」

「あぁ。」

「それでは、あなたを元の次元へ戻します。」

「そうか、ではまたいつか」

「ええ。」


サイラルの視界が再び赤色に染まる。

その赤色はギンが放った槍がサイラルの心臓を穿いたためだ。

しかし当の本人は痛みも感じずギンを見据えている。


「な、貴様、我の滅殺の槍を受けて起きながら生きているだと?どうやらただのゴミカスではないようだな。」

「何喜んでんだ糞蜥蜴。蜥蜴は蜥蜴らしく地面を這いつくばってろゴミ。」

と、罵詈雑言を垂れ流しながら驚くほど速い手刀でギンの羽を両断するサイラル。


「GYAAAAAAAAA!な、貴様その怪我で何をしやがった!」

「うるせぇ!」

そう言い放ちながらサイラルは槍の持ち手へと向けて歩き出す。


「な、何をする気だ!何故お前は胸に刺さった槍をものともせずこちらへと向かえる!キモイぞ!」


ギンが驚く程の光景。それは正気の沙汰とは思えないほどの奇行。

胸に刺さった槍を引き抜くのではなく、歯を食いしばって持ち手の方へと歩き出したのだ。

そして数秒後、サイラルは槍から開放される。


「貴様に冥土の土産だ。神よ、厄災を穿ち地上に平和を齎せ。〈θεία κρίση〉」


「n」


サイラルが放った魔法によりギンの身体は瞬きより速く消滅した。


ルーナにより与えられた力と生まれつき持っていた頭で冷静に動き邪龍を討ったサイラルは肉塊に姿を変えられたはずの家族、そして村人達と再会を果たした。


サイラルは今後、同じような緊急事態に陥っても大丈夫なように全力で対策を練った。

ちなみにサイラルは今回の事件の後村全体の意見により村長へとなった。

サイラルはこの立場を全力で活用し家族を守るため、村を守るために村を再建し、村自体の拡張を提案した。

特別この意見に反対するものは居らず、即決で再建が始まった。


サイラルは効率増加のためにこれまで統制などしたことがなかったが、ルーナの与えたスキル「統制王」により、とてもスムーズにことが動いた。


再建完了までの時、まさに一夜城の如し。


驚くべきスピードで破壊された建造物を修復し、村を守るための高さ10メートルにも及ぶ壁をシュクルという頑丈な鉱石で作り上げた。そこにサイラルが結界魔法を重ね、じゃな気持ちを持つ者の手を弾き決して内には入れぬ頑強な巨壁が誕生した。


再建が終わり仕事終わりに新しくできた大衆酒場にて村人達が酒を飲んでいる頃、

サイラルは村長宅に増設された地下室にて今後の方針を練っていた。

左手には1本の万年筆、手元には1枚の羊皮紙。

「これで少しは防御も固くなったかな。…しかしこれではまだ足りないな。あぁそう言えば窮地を救ったあの女神ルーナは建国を想定して私に統制王をさずけた。うん、これを利用しよう。まずは…そうだな、富国強兵の強兵から始めよう。富国も並列で行うとしよう」

サイラルは手に持つ万年筆で考えた内容を書き綴り、纏めた紙を持ち席を立ち上がった。


目的は大衆酒場。先程練り上げた方針を村人たちに伝えるのだ。


途中出会った村人達から感謝と共に1輪の蒲公英や手縫いのぬいぐるみ等を受け取りながらサイラルはゆっくりと大衆酒場へと向かう。


「着いた。完成図は私が書いたが完成系を見るとなんかこう、感激だな。しかし…光は灯されているのに静かなのは何故だ?まぁいいか入るとしよう」


ギィ…


サイラルが酒場入り口の巨大な両開き扉を開けると待っていたのは村人たちからの熱い視線。そして真ん中には妻のアンリー。その手には荘厳なワイングラスに注がれた葡萄酒がある。


「災厄の撃退、そして新たな村人に乾杯!」


「「「「「乾杯!!!!」」」」」


拍手喝采に包まれサイラルは喜びと安堵の涙を流した。


「村のみんな…ありがとう。今日は、みんなのためにとある方針を練ったんだが聴いてくれるか?」


「あぁもちろんだ村長」「当たり前だろう?」「もちろんさ!」「くぅぅあやつ、立派になりおって」


「では…」

徐ろにサイラルは両手を広げ水魔法でミストを生み出した。

そこにはサイラルの練った方針が色つきの絵としてミストのスクリーンに投影されている


「「「「おぉ!」」」」


「みんな、私は今回の災厄の襲来を全く予期していなかった。もし私に勇気がなければかの邪龍を討ち滅ぼしみんなを救うことが出来なかっただろう。しかし勝つことが出来た理由は勇気だけではない。実は私も邪龍との戦いで1度命を落としたんだ。私もとても驚いたことなんだが、命を落とした直後視界が赤ではなく白に染まり、目の前にルーナと名乗る全次元神統括神が現れたのです。その際にルーナ様から色々な能力ちからを授かり今こうして修復を終えてみんなの前に五体満足で立っている」

「今回のような災厄から村を守るため、知りうる限りの最強の鉱石で壁を築いたがこれで足りるとは1ミリも思ってはいない。そう思い策をねっていた時ルーナ様の声が聞こえたんだ。」

「どうやら私が討ち滅ぼし塵と消えた邪龍、【ギン】は5000年後にまた訪れるのだという。」

「5000年後に私が生きているかは分からない。更にはこの村が存在し続けるかも分からない。しかし、私は全次元神統括神 ルーナより100回までの復活を可能とする不死鳥の力を授かった。この命尽きるまで私はこの村を守り続けたい!そこで考えたのがこれだ!この村を強化する!目指すは大国!その中心はこの村!この村は永遠に成長を続ける!私はそれを望む!みんな!どうだろうか!!!」


暫しの沈黙が大衆酒場を包み込む。

やがて村人のひとりが口を開いた


「いいじゃないか、それ!いい案じゃないか!僕は賛成だ!」

「わしも賛成じゃ。わしを育ててくれたこの村を、愛するこの村を思う気持ちがある」

「私も賛成よ。この村を国に、それも大国にしたいと言うのが面白いわ。随分と大見得を切ったようだけれど、私は全力で支える」


先程までの沈黙が嘘だったかのように次々と賛成の言葉が響き渡る。


最終的にサイラルは胴上げされ、酒に弱いサイラルも気分が上がり樽ひとつ分のウィスキーを飲み干した。


数時間後。目が覚めたサイラルは少しふらつきながら大衆酒場2階のテラスへと向かった。

辿り着いた先にはどこまでも広がる闇の中に輝く3つの星があった。子供の頃よく聞いた昔話によると3つの星それぞれに異なる神がおり、星を統括しているらしい。

その話を思い出しながらサイラルはまた涙を零した。


「私は、この力を手に入れたばかり。まだ使い慣れぬ力に慌てることもあるが私は皆にこの村を大国にしたいと言ったのだ。それは願望であり夢。この村がどんな時代になっても残り続け記憶から決して消えないようにするのだ。疲れた時はまたここへ来よう。。

しかし……景色を見るだけではつまらぬ。1人で酒を飲めるようにここは私専用の席としよう。壁を作り完全個室にな!ハッハッハ!楽しくなってきたじゃないか。さ、まだまだ先は長い。明日に向けて体を休めるとするか。」

するとサイラルはどこから取り出したのか天蓋付きの荘厳なベッドを取り出し、横たわった


時はサイラルが建国を始め、数千年がたった頃。


かつてアイラン村があったこの大陸

「ユーシリウス」には今や高度な発展遂げた国、「帝国アイラン・サイラル」がある。


この国を統治する王の名は「サイラル」

建国者であり帝王でもある彼は長い時間を生まれ変わってはやり直しながらこの国を支えてきた。この秘密を知るものは数える程もいない。帝国の最上層に立つ3人だけだ。

彼らはサイラルに忠誠を捧げ、ルーナの祝福により仮初の不老不死の力を手に入れ、今日も3柱として生きている。


この帝国に住むものは皆、伝説によりサイラルの功績を知っている。中には彼に、この帝国にクーデターを起こそうとするものもおり、実際に過去には何度もクーデターが起きていた。しかしサイラルはその度に自らの力で自らに刃を向ける者に理解をもたらし平和をもたらしてきた。


帝国の中心部、平民が住む地域の広場にはサイラルの像が建てられている。


しかしそんな彼は最近悩みがあった。

このまま何千年後もこの国には平和があり続けるのか。

あの日ルーナから授かった力は今や転生の力のみを残して存在している。

それに、いつかに倒したあの古龍、〈ギン〉とてまた襲い来るのだ。

しかも次回は数え切れぬほどの古龍を連れて現れる。

その時、私だけで対処できるのか?

無理である。

「彼らに、伝えよう。私は転生を行う。とな。」


サイラルは以前古い文献を読んでおり、そこで転生と似た行動を知っていた。本の1文には、「彼女の体が光り輝き、抜け殻となったソレはその場に倒れ伏した。そして輝きが収まったあとソレの上には魂があり少しづつ空へと上がって行った。直後、魂のさらに上に反時計回りに針を動かす巨大な時計と妖しい紫の裂け目が現れ吸い込まれるように消えていった 彼女の名はローズベルク。」


「話はここで終わってる。転生…か。この国を作り出したサイラルはかのアレクサンドロス大王のように勇敢で輝く存在だったのかな。過去に精神が保てなくなるほどのトラウマと、そして死を味わい、誰よりも平和を願って村を守った漢。会ってみたかったな。

……と、気がついたらめちゃくちゃ時間経ってない?えーと、ん?朝?ちょっと司書さんに聞いてみっか。」

創世記を読みこの国の知識を得た代わりにとてつもなく長い時間を過ごしていた彼女。

聴くところによるとどうやら1ヶ月がたっていたようだ。


「やばーっ!…お腹空いてきた。料理長さんにご飯作ってもらおっかな。にしても…」

彼女の頭には心残りな名があった。

〈ローズベルク〉

何度復唱してもそれは、突如現れた邪龍に遠い大陸へと飛ばされたクラスメイトの名である。

「やはりなにか関係が?あるよね。うん、あるに違いない。とはいえ、本人に聞けないしなあぁ。また文献読み漁ってローズベルクさんが誰なのか調べるか。」


(これ以上はまたご飯食べて寝て、明日考えよう。時間は有限、されど私の体力も有限。夢は夢幻だが無限ではない。なんだこれ。)






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