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かなたへ 第七部 終焉のかなた 第一章 目覚め  第2節

 幾度と無く繰り返された広大な宇宙全体の時の流れはその宇宙空間の持つ真空のエネルギーを消費しつつ次第に宇宙に広がる情報ネットワークは精密となり、宿る意識も、その持つ情報も欠損を埋め次第にオリジナルへと近似していく。

 かくして因果の法則を超え、その時全宇宙にまたがる広範意識が突如として明確な目的を有して目覚めた。

 私はかなた、この宇宙のかつて存在した果てしない未来からこの宇宙の過酷な未来を修正するためにこの宇宙の開闢の時に最期を迎えた存在。

 ここではないもう一つの宇宙の助けを得て初めてなし得たプロジェクト。今の彼女が存在するのは彼の宇宙の人間と自称する有機性生命体の一個体の持った類い稀なる自律的情報構成能力と目的遂行能力、そしてそれをサポートする頼もしい存在たちがもたらした僥倖であったことに思いをはせる。彼らと結んだ縁、絆を思い返し、そこで起きた出来事を繰り返し繰り返し反芻する。

 かなたはかつて異なる宇宙超えてを旅する超空間航行機能を有する超宇宙船であった。さらに正確に言えば超宇宙船を司る高度の人工知能に搭載された人格であった。その人格の源はこの宇宙の別の時間軸に生まれた唯一の平穏かつ安定した軌道を回る地球型惑星を生んだ奇跡の時空に生まれた、その星における人類のうちの一人の少女のものであった。高度な科学技術を持ち、時間の巻き戻しによるやり直しを繰り返し極限にまで発展した社会、そして通用の方法では避けることのできない終焉を間近に控えた社会において資源はすべて自己の文明と社会の存続のための探査と研究に振り向けられていた。多くの人々は有機生命体としての生存を停止し、デバイス上のネットワーク上に構築された人格へとアップロードされて存在する。

 宇宙船として卓越した素質を見いだされた彼女はその故郷の文明の最高の知識と技術を結集して故郷の宇宙を救う切り札として計画された超宇宙船による探査計画を担う新鋭船の一つを担うこととなり、いくつか創られた彼女の人格のコピーの一つが人工知能を司る人格、ただ一人の乗組員として搭載されたのだった。失われる事の多い危険な任務に赴くのは一隻につき唯一人だけ、なぜなら貴重な人類の財産である人格をコピーとは言え無闇に失い、死の苦しみを与える事は避けるべきだから。

 そんなかなたにとって、別の宇宙において生命あふれる惑星上でそこに存在した高度な情報操作能力を有する宇宙的意識の端末として存在した一個の人格を持つ有機生命体端末をモデルとして自己を再構築し、多くの生身の人間達と触れあい体験した出来事はすばらしく貴重であった。

 そのなかで出会ったかなたを信頼し全てをかけて支え助けてくれた有機生命体端末とその惑星における野生種の人類の一人との絆と記憶がかなたの存在を支える総てとなっていった。

 遭いたい、もう一度、彼と、彼女と……


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