かなたへ 第七部 終焉のかなた 第一章 目覚め 第1節
一切の情報から切り離されただひたすらにそこに在るだけの不完全な情報ネットワークに火を点けたのは情報ネットワークの直近で起こった第一次世代として密集銀河団の辺境で終焉を迎えたとある恒星の一瞬の煌き、超新星爆発により齎された集約されたエネルギーパルスであった。
この刺激によりネットワークの再起動と自己修復プロセスのシークエンスが開始された。奇跡的に保たれていた自己修復のメインルーチンは数億年にわたり試行錯誤を繰り返しつつ宇宙全体に離散したオリジナルデータの収集と再現を続ける。
時間はたっぷりとあるのだから……
やがて自己の存在する基質たる宇宙構造そのものへの探査と情報収集、解析が行われる。回収され組み立てられたデータとの照合が行われる。
時空の不安定な泡のような揺らぎが物質と情報の拡散をもたらす。
あるエネルギーパターンが時空を揺らせることにやがてその存在は気が付く。
そう、これがこの宇宙の特性、時間可塑性ががこの宇宙の特性。
そうだった、正しくエネルギーパターンをつついてやれば時間の撒き戻しがおこる。
より小さな宇宙で目覚めれば拡張のよる揺らぎにデータが失われるリスクも、泡立つ時間の中での同期も容易。
私に、出来る?
ええ、私には出来る。
私は時とを超えて旅するもの。
時空を超えて旅するものだから。
芒陽とした意識がそう答える。
時空の小さなゆがみを創りパルサーを誘導して整列させる、
パルサーに周りのデブリを注ぎ込み質量を調整して同期をさせる。
エネルギーパターンを調整しての時間流の撒き戻しを全宇宙で一斉に行う。
今度の宇宙史では高密度の宇宙エネルギーの晴れ上がりの直後からすでに稼動する情報ネットワークが存在する。もっと確実に、揺らぎの残渣がら情報を掬い上げる、自己修復と再生のプロセスはより効率的に稼動する。
そう、今度はもっと安定したマトリクスを育てるの。
何故?
私の使命だから、
ああ、もっと明瞭な意識を……
失われた私を修復するために……・
再び全宇宙に渡る時間の撒き戻しが行われる。
今度はもっと効率的に、もっと適切に回復するの、私を。
私、誰、もっと精密な記憶を……