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かなたへ 第七部 終焉のかなた 第四章 旅立ち 第3節

 やがてかなたの妹の船達と武蔵とその兄弟船が完成し宇宙での探査に就いた事の連絡が入る。SR世界で失われた生物種の復元プロジェクトも幾分進行しているらしい。かなたが持ち帰った別宇宙の文化は一時の流行で終わることなくむしろメジャーな文化様式、生活様式として定着しているらしい。おかげでかなたが離れてからもその資産はとてつもなく増え続けているとの事。運用についてはかなたのマスターコピーである妹と涼子に全面的に任せると連絡しておく。


 数十年にわたる探査がやがて実を結び始めた。オリジナルのかなたが伝説の船、オリジナルの武蔵と共に行った試みが成功した証が次第に集積されてきたのだ。漸く開いた過去への高次元マイクロチューブの探査の結果は生まれ変わった宇宙が広大で安定した存在である事が証明されたのだ。その結果を受けかなたの妹の船の一隻が過去への跳躍を行い、驚くべき情報を携えて戻った。過去において未登録でしかもより洗練されたかなたの姉妹を名乗る非常に高齢な超宇宙船と遭遇したというのだ。そしてその宇宙船が管理しているというとある銀河に生存の適した惑星が存在し、なおかつ其処に生命圏が誕生していると言うのだ。そのかなたの姉妹の船は由来についての説明は拒んだという、いずれ明らかになるとだけ言い、その銀河のマップと生存可能な第二の故郷の候補となる惑星についての資料を引き継ぐと何処かへと文字通り消失してしまったという。

 持ち帰った資料は極めて精緻であり信憑性が高い物と判断され、大規模な調査が行われることとなった。出会ったかなたの姉妹については様々な推測が為されたがおそらく再生した宇宙のはるか未来から過去のメンテナンスのために使わされた超宇宙船であろうという事で結論づけられた。すなわち再生された新たな宇宙の新たな未来と遭遇したものと判断されたのだった。

 探査部はにわかに忙しくなった。無人探査機が実際に惑星の地上に降り立ち、そこが実際に移住可能な惑星、多くの植物と動物にあふれ、酸素も海も陸地も有る豊かな惑星であることが明らかになると、その事実はかなたの故郷の世界に大ニュースとして伝えられることとなった。そこの生物の生命の基本様式、構成するアミノ酸などの組成、遺伝情報の形式などが驚くべき事にかなたの故郷の物と一致したのだ。この事実がこの惑星が移民のために設計され用意されたものであるという仮説がさらに信憑性が増したものとなった。ただ、直ちにこの世界に移民することは出来ない。確かにこの世界に食料を調達する事は可能だろう、だが同時にこの世界の野生の物にとっても人類が格好の餌になり、細菌の感染の場となり得る事を意味するからだ。このため移住に備えたスペースコロニーを建造しそこで移住のための準備を行う事となった。幾多の微生物と共存できる人類を再び生み出すための壮大な事業がスタートするのだ。そのためにはこの惑星の生命圏の研究だけではなく、かなたの故郷の生命がどのような存在であったのか、そしてかなたが訪れた異世界の生命の様式、自然と共存している野生の人類についての研究が大きな意味を成すことだと期待された。

 安定会した過去への高次マイクロチューブを旅してかなた自身もその惑星を訪れる。スペースコロニーの設計、建造にも関与するなど大忙しの年月を過ごすこととなったのだ。


 先輩の居る異世界から断続的に情報が入る。向こうの世界の私が消滅した後、どうやら姉さまはもう一人の私を構成し、宇宙船の建造を続けているらしい。でも、姉さまが構成した私は偽物、ダメ、先輩を取らないで。

 再開通したタイミングを狙ってメッセージを送る。

『もう少し待ってください、あと、そこの私とは仲良くならないで』


 過去とかなたの居た未来を繋ぐ高次元マイクロチューブが安定化した頃、かなたが分かれてきた異世界とのマイクロチューブもかなり安定化してきた。

 あ、先輩が有希姉さまとお話をしている。

 ペンダントを通じて先輩の時計へ連絡を送る。

『キョン先輩、有希姉さま、かなたです

 漸く暫定マイクロチューブの敷設が可能になりました。

 でも、まだ不安定です』

『聞こえるか? 無事なのか?』

 ああ、懐かしい声。

『無事といえば無事ですが、ちょっと複雑です

 まだマイクロチューブが不安定、僅かな情報チャンネルしか開通できないんです

 そちらの私にも、ペンダント買ってくださいね』

 漸く長い時間の通話が可能となった、もう少し……・


 かなたの主観時間で百年が経過した頃、待ちに待った連絡が来た。漸く神の視座が武蔵により再発見されたのだ。


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