日本国は手を抜けない ―IF― 日本国はスターゲイザーのパイを食うか?(3-ハレー彗星ルート6)
「彼らのこと?
ああ、よく知っているよ。
知ってるかい?
エース・パイロットは三つに分けられる。
「敵を撃ち墜とす者」
「敵に撃ち墜とされない者」
そして――「必ず彗星を撃ち墜とす者」。
この三つだ。
だが彼らは――、その全てを兼ね備えていた。……(GAU彗星本体邀撃戦に参加した某国パイロットへのインタビューより抜粋)」
「シーグルズ隊は、GAU彗星邀撃のため日本国自衛隊が養成した彗星邀撃任務専任飛行隊の内の一隊。現在の日本国海上自衛隊第三四三飛行隊(343SQ)のコールサインでもあるが、通常、単に「シーグルズ隊」と記述した場合は結成当初の四機小隊の戦闘機部隊及びその支援部隊からなる一隊を指す。
本隊は「邀撃対象と同時に突入してくる大小様々な破片の驟雨を掻い潜って邀撃対象に邀撃ミサイルを叩き込む」ことだけを念頭に、自衛隊を東軍と西軍に分けて互いに航空撃滅戦を仕掛けさせる「異常な」演習により見出された、「回避能力(≒生存能力)が突出した戦闘機パイロット」のみを集成して編成された。
要員の選出基準も異常なら、編成後の訓練内容も異常であり、日本国自衛隊及び満洲国空軍の全軍を相手に、当時最新鋭機であったF-14J2(の特別仕様機)でそれらの邀撃を掻い潜り、模擬標的である弾道ミサイルに邀撃ミサイルを打ち当て、尚且つ指定された基地に帰投する、という事を何度も繰り返し、その中から一定基準に満たなかった者は別隊に配置転換され、最終的に四機小隊分の精鋭パイロットだけが残された(ちなみに各国の彗星邀撃隊も、大体は同様の訓練を繰り返して篩に掛けられた)。
この四機小隊の中でも突出して任務達成率が高かったのは、本隊結成時からGAU彗星本体邀撃戦までの間、不動の二番機を務めた、後の本隊二代隊長である成海・大河である。
彼女の自衛隊への入隊からGAU彗星本体邀撃戦時までの六年間にも及ぶキャリアの中での、被撃墜記録ゼロ・被弾記録ゼロ・任務達成率三〇〇パーセント(途中妨害標的の内、進路を啓開する為射撃を行った場合の撃墜率一〇〇パーセント+模擬標的撃墜率一〇〇パーセント+帰投率一〇〇パーセントの意)という空前絶後の大記録(※二〇〇〇機単位の妨害機(世界各国が用意した精鋭部隊を含む)を用意して米国で十二回行われたGAU彗星邀撃大演習「メテオ・フラッグ」でさえ、彼女の駆る機体に傷を負わせることは出来なかった)は、今もなお破られていない。
本隊はGAU彗星本体邀撃戦に於いて、友軍機が切り拓いた血路に突入し、見事GAU彗星本体の邀撃と破砕を成功させ、尚且つ全機小破の損害で切り抜けて帰還を果たすという偉業を成し遂げた。その後もGAU彗星の破片が墜落してくる度に火消し役として度々難易度の高い邀撃戦に臨んで邀撃を成功させており、「シーグルズ(小隊)だけで通常の彗星邀撃隊一個飛行団(※数量表現に直すと凡そ四〇機程度)に相当する」とまで評価されている。
ちなみに成海・大河は、実際のGAU彗星邀撃時にはあり得ない方向からの妨害(背後から追跡してレーダーロックだとか、ステルス機による不意討ちだとか)も含めて全て躱し切って任務を達成しており、畏怖を込めて「異能生存体」の称号が贈られている。……(インターネット百科事典「シーグルズ隊(彗星邀撃隊)」の項目より抜粋)」
「「遥か高みへ 〜TAKE ME HIGHER〜」はGAU彗星邀撃に挑んだ人々の姿を、主人公である自衛官、成海・大河(※実在の人物)の視点から描いた連続テレビ・ドラマ。平均視聴率八.八パーセント、最高視聴率十九.九パーセント。……(インターネット百科事典「遥か高みへ」の項目より抜粋)」