ありきたりな物語
初めて会った時から彼女は憧れの人だった。
噂には聞いていたが、成績優秀、スタイルもよく、バスケ部のエースだった。
人と話すことに怯える自分とは全く違う世界の人で、憧れてはいたが関わることはないだろうと思っていた。
高校に上がり、同じクラスになった幸運を噛みしめていると彼女は僕にも話しかけてくれた。
「よろしくね」
そう言って手を差し出してくれた時は夢じゃないかと思ったものだ。
それからは彼女と少しでも話せるように、また彼女に話しかけてもらえるように必死に頑張った。
最初は彼女の周りにいる友人達におびえていたけれど、少しづつ話せるようにもなってきた。彼女が関わってくれるからこそ関われる人であるとは思っていたが、次第に彼女達のように明るい性格になりたいと思うようになった。
明るく振る舞っていればきっと彼女の近くにいられるようになるはずだと信じていたのだ。
彼女の友人達とも話せるようになり、彼女のことを知っていった。
彼女はクラスメイトと分け隔てなく接しているように思えたが、それでも自分は特別だと思っていた。
いつの間にか憧れは恋心へと変わっていったのだと思う。
周りから見れば誰が見てもわかるような道化に見えたと思う。
関係性が変わってしまうことが怖くて、ずるずると時間だけが過ぎていく。
しかし、ある日転機が訪れた。
それは本当に些細な出来事で、今まで気にしていなかったらきっと気づかなかったであろう小さなこと。
でも僕はその日を境に変わった。
彼女に告白することを決めたのだ。
そして今、僕は彼女に想いを告げることができた。
ずっと伝えようと思っていて伝えられなかった言葉をようやく伝えることができたのだ。
この気持ちを伝えることが僕の初恋の終わりであり、新たな始まりでもあるのだ。
「君のことは好きだけど、家の都合上そういうわけにはいかなくてね。婚約者がいるんだ。」
彼女はそういって僕の手を取る。
「それでも君が僕のことを好きだといってくれたことは忘れないよ。こんな僕を好きだと言ってくれるとはね」
「そんなこと言わないでください。僕はあなたのことが本当に好きなんです。僕にとってあなたは憧れであり、生き方を教えてくれた人なんですから」
僕は泣きそうになるのを必死でこらえて言う。
「ありがとう。でも、もう遅いんだ……ごめんね」
彼女は少し困ったように笑って言った。その笑顔はとてもきれいだったけど、どこか悲しそうな顔にも見えた。
「僕こそすみません……」
僕はそれ以上何も言えなかった。彼女はただ微笑むだけだった。
それから僕らは何も話さなかった。何を言っても無駄だと思ったからだ。
しばらく沈黙が続いた後、彼女はゆっくりと口を開いた。
「最後に一つだけお願いがあるんだけどいいかな?」
「なんですか?なんでもします!」
「私にキスしてくれないかい?」
彼女は優しく微笑みながら言った。
「えっ!?」
予想外の言葉だったので思わず声が出てしまった。
「ダメかい?」
彼女は上目遣いで見つめてきた。
正直迷ったが、僕は彼女の頬に手を当てた。そしてそのまま唇を重ねた。ほんの数秒のことだったと思う。しかし、とても長く感じられた。僕は彼女に自分の気持ちを伝えたかったのだ。
「ありがとう」
唇を離すと彼女はお礼の言葉を口にした。
すると、彼女は僕の胸に顔をうずめてきた。
突然の出来事に動揺したが、何とか平静を装って彼女の頭を撫でた。
「君は優しいね。それに温かい。このまま時間が止まればいいのに……」
彼女が何か言っているが聞き取れなかった。
しかし、そんなこともどうでもよかった。
こうして彼女を抱きしめていられることが何よりも嬉しかった。
やがて彼女は僕の胸から離れていった。
「そろそろ帰らないと。今日は楽しかったよ。また学校で会おう」
そう言って去って行った彼女の背中を見送ると僕はその場に崩れ落ちた。
さっきまであんなに近くにいたのに今は遠い存在になってしまった。
まるで夢のような時間だったがこれは現実なのだ。
あの時、彼女ともっと一緒にいたいと願えば叶ったかもしれない。だが、彼女に迷惑をかけることになるとわかっていたので諦めるしかなかったのだ。
それでも僕は彼女と過ごした時間を一生忘れないだろう。
そして、この思い出があればこれからも生きていける気がするのだ。
僕は彼女に恋をして良かったと思っている。
AIノベリストを使用してみたいと思ったため書いてみた物語




