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第2話

 父親の仕事の都合で転校をすることが多い幼少期を送った。


 生まれは東京だったらしいが、僕が物心ついた時にはすでに東京からは離れていた。そして、小学校に入学した時期から次第に関東の近辺を転々とすることが増えていった。新年度を迎えた四月にまた東京に住むことになったと思ったら、その三か月後くらいには関西に引っ越しをする準備を始めていたこともあった。


 いったい何をそこまで頻繁に住む場所を変えることがあるのか、と幼いながらに父の勤めている会社や仕事に対して少なからず疑問を抱いてはいたが、僕は別に転校をすることを拒んでいたというわけでもなかった。どこに行っても思い出らしい思い出を作れず、別れを惜しむような人間関係も築くことができない、内向的で、常に自分の殻に閉じこもっているような性格の子どもだったからだ。


 やがて僕が小学校の高学年になる頃には、父の仕事も落ち着いたのか─もしくは転勤をしなくてもいいような立場にまで出世しただけなのかもしれないが─転校をすることはなくなった。数えると、僕はどうやら合計で七回ほど転校していたらしい。この回数が多いのか少ないのかで言えば、おそらく一般的には多いと言えるはずだ。


 けれど、今となっては僕よりも両親の方が大変だったことだろう。僕はせいぜい住むことになる家や通うことになる学校が変わるくらいだが、きっと子どもを持つ親であれば、それ以上に変わるものが多いし、変えなければならないものもたくさんある。


 もちろん僕はまだ家庭なんて持っていないし、そもそも学生という身分に過ぎないのだけれど、そんなことを想像できる余裕が生まれたくらいには、今の僕はそれなりに大人になっているのだと思う。


 そして、小学六年生の春。僕と両親は関東平野の南側に位置している、東京湾に面した街へ移り住むことになった。父と母の出身地であり、僕が高校を卒業するまで過ごした場所であり、おそらくは僕が最も地元と呼ぶことができる場所だ。

 

 僕の最後の転校先となった小学校。

 

 滝沢彩葉とは、そこで出会った。

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